【不動産登記申請の基本|申請義務・所要時間・登録免許税】
1 不動産登記は当事者が法務局に申請して行う
2 不動産登記は『本人申請』も法律上は可能
3 不動産登記は申請してから1週間程度で法務局の作業が完了する
4 不動産登記|権利の登記は『申請義務』はない
5 不動産登記|表示の登記|物理的状況・『申請義務』あり
6 不動産・商業登記|申請義務・期限のまとめ
7 『相続』に関しては登記をしなくても直ちには影響がないが,トラブル発生リスクがある
8 不動産登記申請における登録免許税
9 不動産登記申請を司法書士に依頼する場合の手続の流れ
1 不動産登記は当事者が法務局に申請して行う
売買や相続で所有権が移転した時に通常は登記を行います。
抵当権の設定や抹消という担保権も登記しておくことが行なわれます。
このような不動産登記は,当事者が申請をすることにより,法務局で記録(登記)がなされます。
具体的には,申請書を作成し,所定の書類を添え,必要な印紙を貼付して管轄の法務局に提出します。
細かいルールがあり,少しでもミスがあると,登記されないことになります。
正確には,補正や却下と言います。
一般的に,不動産の権利は経済的な価値,規模が大きいです。
例えば,不動産の売買で,大きなお金が動いた後に却下ということになると深刻なトラブルに発展します。
2 不動産登記は『本人申請』も法律上は可能
不動産登記の申請は,当事者が行うこととされています。
一般的には,司法書士が代理人として行うことが多いです。
しかし,代理人なしで本人が直接申請することも可能です。
実際に,抵当権抹消などは,綿密な準備などは要らないので,本人申請ということも行なわれています。
逆に,融資を伴う売買では,司法書士が事実上必須でしょう。
複数の登記と融資実行を確実+同時に行う必要があるからです。
3 不動産登記は申請してから1週間程度で法務局の作業が完了する
(1)登記申請までに,書類収集に一定の時間を要することがある
登記申請に必要な書類を揃えるために,一定の時間を要します。
不動産売買など,確実に1回で終わらせる必要がある登記については,事前に余裕を持って書類を整えます。
(2)登記申請をした後1週間程度で法務局の作業が完了する
登記申請をしたあと,法務局では,申請書類のチェック→実際に登記記録する作業を行います。
平均的には,申請後1週間程度で作業が完了します。
もちろん,法務局の混み具合によって変わります。
ただし,『登記の日付』は申請日です。
『翌日以降にずれ込む』ということはありません。
4 不動産登記|権利の登記は『申請義務』はない
不動産登記は,法律上,申請義務はありません。
相続,売買などの際,『登記申請しないまま』だとしても罰則もありません。
実際に,数代の相続について登記がなされていない,という状態を散見します。
売買の場合は,代金と交換で登記をすぐに行うのが事実上必須となっています。
金融機関が『抵当権設定登記』と融資実行の同時交換を当然の必須条件としているのです。
5 不動産登記|表示の登記|物理的状況・『申請義務』あり
不動産の登記は,所有権・抵当権などの『権利』以外のセクションもあります。
『表示の登記』『表題部登記』と呼ばれるものです。
これは土地の面積・建物の構造・床面積などの『物理的な状況』です。
『権利の登記』のような『対抗力』を持つものではありません。
また,一定の状況で『登記申請義務』があります。
6 不動産・商業登記|申請義務・期限のまとめ
登記の種類による登記申請の義務についてまとめます。
参考として商業登記も表に入れておきます。
<不動産登記|法的義務の有無>
登記の種類 | 申請義務 | 期限 | 不動産登記法 |
権利の登記 | なし | (なし) | (規定なし) |
表示の登記 | あり | 1週間 | 47条,57条 |
商業登記(参考) | あり | 原則2週間 | 会社法915条1項など |
7 『相続』に関しては登記をしなくても直ちには影響がないが,トラブル発生リスクがある
相続については,売買と異なり,登記申請について一刻を争う,ということはありません。
しかし,長期間放置していると,相続の内容が分からなくなるということがあります。
特にさらに相続によって代が変わったという場合です。
相互に自分の権利を主張する状態になることがあります。
一旦トラブルになると解決が困難になったり,時間・費用・エネルギーを要することがあります。
遺言や遺産分割により,承継方法が確定したら,早めに登記申請を済ませておくと良いです。
なお,商業登記は登記が義務付けられています。
一定期間内に登記申請をしない場合の罰則も規定されています。
8 不動産登記申請における登録免許税
(1)土地の所有権の移転登記
内容 | 課税標準 | 税率 | 軽減税率(措法72) |
---|---|---|---|
売買 | 不動産の価額 | 1,000分の20 | 平成25年4月1日から平成27年3月31日まで1,000分の15 |
相続,法人の合併,共有物分割 | 不動産の価額 | 1,000分の4 | - |
その他 (贈与・交換・収用・競売等) |
不動産の価額 | 1,000分の20 | - |
(2)建物の登記
内容 | 課税標準 | 税率 | 軽減税率(措法72の2~措法75) |
---|---|---|---|
所有権の保存 | 不動産の価額 | 1,000分の4 | 個人が住宅用家屋を新築又は取得し自己の居住の用に供した場合は特例あり『後記(3)』 |
売買又は競売による所有権の移転 | 不動産の価額 | 1,000分の20 | 同上 |
相続又は法人の合併による所有権の移転 | 不動産の価額 | 1,000分の4 | - |
その他の所有権の移転(贈与・交換・収用等) | 不動産の価額 | 1,000分の20 | - |
(3)住宅用家屋の軽減税率
項目 | 内容 | 軽減税率 | 備考 |
---|---|---|---|
住宅用家屋の所有権の保存登記(措法72の2) | 『※1』 | 1,000分の1.5 | 『※2』 |
住宅用家屋の所有権の移転登記(措法73) | 個人が,平成27年3月31日までの間に住宅用家屋の取得(売買及び競落に限ります。)をし,自己の居住の用に供した場合の移転登記 | 1,000分の3 | 同上 |
特定認定長期優良住宅の所有権の保存登記等(措法74) |
個人が,平成26年3月31日までの間に特定認定長期優良住宅で住宅用家屋に該当するものを新築又は建築後使用されたことのない特定認定長期優良住宅で住宅用家屋に該当するものの取得をし,自己の居住の用に供した場合の保存又は移転登記 (一戸建ての特定認定長期優良住宅の移転登記にあっては、1,000分の2となります。) |
1,000分の1 | 同上 |
認定低炭素住宅の所有権の保存登記等(措法74の2) | 個人が,平成26年3月31日までの間に,低炭素建築物で住宅用家屋に該当するものを新築又は建築後使用されたことのない低炭素建築物で住宅用家屋に該当するものの取得をし,当該個人の居住の用に供した場合の保存又は移転登記 | 1,000分の1 | 同上 |
住宅取得資金の貸付け等に係る抵当権の設定登記(措法75) | 個人が,平成27年3月31日までの間に住宅用家屋の新築(増築を含む。)又は住宅用家屋の取得をし,自己の居住の用に供した場合において,これらの住宅用家屋の新築若しくは取得をするための資金の貸付け等に係る抵当権の設定登記 | 1,000分の1 | 同上 |
※1 軽減措置
<住宅用家屋の所有権の保存登記の要件;いずれも>
・取得者が個人
・平成27年3月31日までの間に住宅用家屋を新築または建築後使用されたことのない住宅用家屋の取得をした
・自己の居住の用に供した
・保存登記
※2 登記申請に当たって,その住宅の所在する市町村等の証明書を添付する必要があります。
※上記の軽減税率の適用を受けるには,床面積が50平方メートル以上であることや,新築又は取得後1年以内の登記であること等一定の要件を満たす必要があります。
※平成25年4月1日現在法令等
9 不動産登記申請を司法書士に依頼する場合の手続の流れ
不動産登記を司法書士に依頼した場合の,手続全体の流れをまとめておきます。
<不動産登記申請を司法書士に依頼した場合の手続の流れ>
土地や建物の現状確認
↓
申請が必要な登記の検討
↓
お客様との打ち合わせ
↓
必要書類の作成および収集
↓
決済の立ち合い
※売買など,資金の同時決済が必要な場合です。
↓
登記申請
↓
法務局で登記に記録する作業
↓
登記完了
↓
登記識別情報,登記事項証明書のお渡し(納品)