【売買契約の説明不備・誤解→契約解消・損害賠償|まとめ】
1 売買契約のトラブル→契約解消・損害賠償|詐欺・錯誤・損害賠償
2 民法の詐欺・錯誤→契約解消|判断事情・目安
3 消費者契約法の『不実告知』→契約取消|詐欺取消より消費者が保護される
4 消費者契約法の『消費者』の定義|非事業者個人
5 特定商取引法|一定の取引態様→行政・民事的ルール
6 不動産売買×調査・説明義務|違反→損害賠償請求
7 宅建業法・禁止事項=不正セールス手法|民事とは別の責任
1 売買契約のトラブル→契約解消・損害賠償|詐欺・錯誤・損害賠償
不動産その他の『売買契約』では『説明不足・誤解』が生じることがあります。
特にセールスの過熱により『多少のオーバーな説明』が原因となることが多いです。
法的な扱いとしては契約の解消と損害賠償という2つの制度があります。
<売買のセールスの不正→購入後の解決方法>
あ 契約解消
方法 | 根拠 |
詐欺取消 | 民法96条 |
錯誤無効 | 民法95条 |
消費者契約法による取消 | 消費者契約法4条2項 |
特定商取引法による取消など | 特定商取引法9条など |
瑕疵担保責任→解除 | 民法570条 |
い 損害賠償
説明義務違反・不法行為・瑕疵担保責任
→損害賠償請求
※民法415条,570条,709条
実際には『不正なセールス・説明内容』の立証が1つのハードルになります。
不正なセールスの典型例や判例による法的判断は別記事で説明しています。
詳しくはこちら|投資用不動産の不正セールス|収入・コスト・利回り・事業用ローン・売却見込
詳しくはこちら|セールストーク×法的責任|利益保証タイプ|全体
詳しくはこちら|セールストーク×法的責任|環境保証タイプ|眺望・日照・通風・騒音
また,上記のうち『瑕疵担保責任』についてはちょっとマイナーな判断です。
詳しくはこちら|セールストーク×法的責任|利益保証タイプ|値上がり約束・値下げしない約束
2 民法の詐欺・錯誤→契約解消|判断事情・目安
契約を解消する規定としては民法上の詐欺・錯誤がよく使われます。
詐欺・錯誤として契約を無効/取消とする場合の判断の目安をまとめます。
<民法の詐欺・錯誤→契約解消|判断事情・目安>
あ 無効を主張する側の認識
ア 認識の程度=誤認の程度イ その理由
い 無効を主張される側の認識
ア 『誤認』を認識していた程度イ 『誤認』に関与した程度
法律的な要件がありますが,かなり抽象的です。
現実的な判断の目安としてはこのように整理できます。
3 消費者契約法の『不実告知』→契約取消|詐欺取消より消費者が保護される
売買契約を解消する制度の1つとして『消費者契約法』の制度があります(前述)。
『不実告知』を理由とした『取消』についてまとめます。
<消費者契約法による『不実告知』→取消>
あ 事業者の不正告知
重要事実について次のいずれにも該当する
ア 消費者に有利となる旨を告知イ 消費者に不利益となる事実を故意に告げなかった
い 消費者の誤認
『あ』により消費者が誤認した
→契約成立した
う 取消
『あ・い』に該当する場合
→消費者は契約の『取消』ができる
※消費者契約法4条2項
え 民法の規定(詐欺・錯誤)との違い
主張・立証の対象が『緩和』されている
=消費者に有利
契約の一方が『消費者』である場合,一定の優遇扱いとなるのです。
一般的な民法上の『詐欺取消』では,主張・立証のハードルが高いです。
この点,消費者契約法の取消では大幅に緩和されているのです。
4 消費者契約法の『消費者』の定義|非事業者個人
消費者契約法が使える場合『契約解消』をすることが有利になります。
買主が『消費者』に該当する場合に,消費者契約法が適用されるのです。
ここで,『消費者』の定義についてまとめておきます。
<『消費者』の定義>
あ 消費者の定義
事業者ではない個人
『事業として・事業のために』行う契約の当事者は除外される
い 事業者の定義
次のいずれかに該当する者
ア 法人その他の団体イ 『事業として・事業のために』行う契約の当事者(個人)
※消費者契約法2条1項,2項
実際には『事業のため』の解釈が問題となることがよくあります。
この解釈論については特定商取引法の判例が参考となります。
詳しくはこちら|特定商取引法|基本|適用対象・行政規制・民事的規定
5 特定商取引法|一定の取引態様→行政・民事的ルール
不動産の売買について特定商取引法が適用されることもあります。
一定の販売手法・態様だけが対象となります。
該当される場合,行政的・民事的なルールが適用されます。
これについては別記事で説明しています。
詳しくはこちら|特定商取引法|基本|適用対象・行政規制・民事的規定
6 不動産売買×調査・説明義務|違反→損害賠償請求
不動産売買の『調査・説明義務』の違反が問題となることもあります(前記)。
この場合,通常は『損害賠償請求』が認められることになります。
『説明義務』の分類をまとめておきます。
それぞれの内容は別記事で説明しています。
<不動産売買×説明義務>
あ 一般的な調査・説明義務
売主・仲介業者が負う義務
詳しくはこちら|不動産売買|売主の調査・説明義務|公的機関の検査まで・周辺環境
い 宅建業法上の重要事項説明義務
宅建業者が宅建業法上義務付けられている義務
詳しくはこちら|宅建業者・重要事項説明義務|基本|内容・説明する場面・方法
7 宅建業法・禁止事項=不正セールス手法|民事とは別の責任
不動産仲介業者については一定の禁止事項が定められています。
ありがちな『不正セールスの手法』がまとめられています。
違反があった場合は行政・刑事責任が課せられることにつながります。
民事的な契約解消・損害賠償請求の手続と並行して進めることも多いです。
これについては別記事で説明しています。
詳しくはこちら|宅建業法×禁止事項・重要事項説明義務|不正セールス手法・行政/刑事責任