【信頼関係破壊理論による解除の判例(賃料滞納・損壊・無断改築・用途外使用)】
1 賃料の長期不払と賃貸借の否定による信頼関係破壊
2 目的不動産の損壊による信頼関係破壊
3 対象建物の無断改造による信頼関係破壊
4 賃貸人の拒絶を無視した改築による信頼関係破壊
5 建物の用途外使用による信頼関係破壊
信頼関係破壊理論や背信行為論について判断した判例のうち『賃借権譲渡・転貸』以外のケースについてまとめます。
1 賃料の長期不払と賃貸借の否定による信頼関係破壊
賃料の長期不払いが信頼関係を破壊すると認められた事例です。
<賃料の長期不払と賃貸借の否定による信頼関係破壊>
あ 事案
土地の賃貸借
滞納期間=9年10か月
賃借人が,対象不動産を自己所有であると主張し続けた
い 裁判所の判断
信頼関係が破壊された
催告なしでの解除を認める
※最高裁昭和49年4月26日
詳しくはこちら|信頼関係破壊による催告と本質的義務違反なしの解除の判例(肯定・否定)
2 目的不動産の損壊による信頼関係破壊
賃貸の対象建物を失火により焼失させてしまった事例です。
<目的不動産の損壊による信頼関係破壊>
あ 事案
対象の建物について,賃借人の過失により火災が発生した
い 裁判所の判断
信頼関係が破壊された
※最高裁昭和27年4月25日
※最高裁昭和47年2月18日
詳しくはこちら|信頼関係破壊による催告と本質的義務違反なしの解除の判例(肯定・否定)
3 対象建物の無断改造による信頼関係破壊
借地契約の特約に違反して建物を改築(建築)した,という事例です。
<対象建物の無断改造による信頼関係破壊>
あ 事案|例
土地賃貸借のケース
バラックの所有のみという特約があった
賃借人がバラックを大規模に改造し『建物』にした
い 裁判所の判断
信頼関係が破壊された
※最高裁昭和31年6月26日
※最高裁昭和38年9月27日
4 賃貸人の拒絶を無視した改築による信頼関係破壊
地主の拒絶を無視して,借地人が建物改築を強行した事例です。
<賃貸人の拒絶を無視した改築による信頼関係破壊>
あ 事案|例
賃貸人が建物の改築の承諾要請を拒絶した
賃借人は,賃貸人の中止要請を無視して改築を実行した
い 裁判所の判断
信頼関係が破壊された
※最高裁昭和39年6月19日
5 建物の用途外使用による信頼関係破壊
『建物建築は借地範囲内にとどめる』という当然の『用法』を無視して建築したケースです。
<対象物の用途外使用による信頼関係破壊>
あ 事案|例
借地人が隣接する所有地に越境する建物建築をした
い 裁判所の判断
借地の用法違反である
信頼関係が破壊された
※最高裁昭和38年11月14日
※東京地裁昭和63年12月5日
※東京地裁平成3年7月9日
本記事では信頼関係破壊理論による賃貸借契約の解除の有効性を判断した判例を紹介しました。
実際には,細かい個別的な事情の主張・立証によって判断(結論)が大きく変わってきます。
実際に賃貸借契約の解除の問題に直面されている方は,みずほ中央法律事務所の弁護士による法律相談をご利用くださることをお勧めします。