【税務上の『借地/使用貸借』判断基準|消費貸借通達・経過的取扱い】
1 親子間での土地貸借|典型例|節税対策
2 税務上の土地『借地/使用貸借』|使用料の授受あり
3 『借地』についての民事上の地代相場|参考
4 税務上の『借地/使用貸借』|使用料の授受なし
5 『借地』×『権利金の授受なし』→贈与税|認定課税
6 税務上の『借地/使用貸借』×相続税
7 『使用貸借通達=昭和48年』以前の扱い
8 使用貸借通達×経過的取扱い
1 親子間での土地貸借|典型例|節税対策
親子間での『土地貸借』は非常に多いです。
節税効果があるので,節税対策として活用する,というのが典型です。
<親子間での土地貸借|典型例|節税対策>
あ 典型的設定内容
ア 土地=父所有イ 建物=息子所有
収益物件を建築することも多い
ウ 使用対価=地代を定期的に息子が父に払う
い 節税目的・節税効果
建物の賃料収入を息子が直接得る
『将来の相続=相続税の対象となる』ことを避けられる
『賃料収入』を利用した節税対策がよく見受けられます。
一方,この方法では別の部分で税務的な扱いが問題となります。
以下説明してゆきます。
2 税務上の土地『借地/使用貸借』|使用料の授受あり
土地の貸し借りが『借地/使用貸借』のどちらに該当するかで権利関係が大きく異なります。
そこで『借地/使用貸借』の判断基準が大きな問題となります。
詳しくはこちら|借主の金銭負担の程度により土地の使用貸借と借地(賃貸借)を判別する
『借地/使用貸借』のどちらかによって,税務上の扱いも大きく異なります。
この点『借地/使用貸借』の判断は,民事上のものと税務上のものがイコールとは限りません。
ここでは税務上の通達における『借地/使用貸借』の判断基準を説明します。
まずは『使用料の支払いがある』という場合についてまとめます。
<税務上の土地『借地/使用貸借』|使用料の授受あり>
あ 使用料が少ないケース
『使用料=使用の対価』が公租公課に相当する金額以下である場合
→『使用貸借』に該当する
※使用貸借通達『1』
い 使用料が少なくないケース
『あ』に該当しない場合は『借地』扱いとなることが多い
ただし,『あ』が『上限』とは言い切れない
↑通達では『あ』は一例として示されている
3 『借地』についての民事上の地代相場|参考
『借地』について,民事上,地代の金額が問題となることが多いです。
賃料の算定の理論で相場が形成されています。
これは税務上のものではないですが,参考として別記事を紹介しておきます。
<『借地』についての民事上の地代相場|参考>
詳しくはこちら|改定賃料算定手法の種類全体(主要4手法+簡易的手法)
詳しくはこちら|公租公課倍率法の基本(裁判例・倍率の実情データ)
4 税務上の『借地/使用貸借』|使用料の授受なし
土地の貸し借りで『使用料の支払いなし』ということもあります。
民事的には,単純に『賃貸借ではない=使用貸借である』となります。
しかし,税務上は『使用料なし』でも『借地』と判断することもあるのです。
判断基準をまとめます。
<税務上の『借地/使用貸借』|使用料の授受なし>
あ 原則=使用貸借
土地の使用料の授受がない場合
→『使用貸借』として扱う
い 例外
ア 土地の使用料の授受はないイ 『権利金その他土地使用料に代わるべき経済的利益の授受』がある
以上の両方に該当する場合
→『使用貸借』には該当しない
=『借地』として扱う
※使用貸借通達『1』
5 『借地』×『権利金の授受なし』→贈与税|認定課税
『借地』であるけれど『権利金なし』という場合は,税務上の特殊な扱いがあります。
贈与税が課税される,というものです。
『認定課税』という制度です。
これについては別の記事で詳しく説明しています。
詳しくはこちら|権利金の授受がない借地契約における認定課税(相当の地代・無償返還の届出書による回避)
6 税務上の『借地/使用貸借』×相続税
相続税評価としては『借地(底地)』よりも『使用貸借』の方がとても大きくなります。
相続税の算定上の扱いの違いをまとめておきます。
<税務上の『借地/使用貸借』×相続税>
あ 使用貸借
『使用貸借』対象土地の相続税算定における評価額
=『自用地』の価額
※使用貸借通達『3』
い 借地(底地)
『借地』対象土地の相続税算定における評価額
=『更地評価額−借地権価格』
以上の内容は税務上の扱いとして整合しています。
ところで,過去の扱いと現在の扱いでミスマッチが生じることがあります。
これについてマッチさせるための『経過措置』があります。
『経過措置』について,次に説明します。
7 『使用貸借通達=昭和48年』以前の扱い
現在使われている『借地/使用貸借』の判断基準は『使用貸借通達』です。
この通達が適用されるのは昭和48年以降です。
それ以前の扱いについてまとめます。
<『使用貸借通達=昭和48年』以前の扱い>
あ 『使用貸借』の設定=契約開始時点
『借地権の贈与』として扱う
→贈与税の対象としていた
い 土地所有者の権利
使用借人に『借地権』が帰属している
→土地の相続税評価は『底地=自用地−借地権価額』としていた
※使用貸借通達『経過的取扱い』
8 使用貸借通達×経過的取扱い
使用貸借通達の適用スタート前/後の扱いでミスマッチが生じることがあります。
要するに『実質的な2重の課税』です。
これを避ける措置が『使用貸借通達』で設定されています。
<使用貸借通達×経過的取扱い>
あ 経過的取扱いの対象
既に借受人に次のいずれかの課税がなされている場合
『贈与税が課税されている』
『建物取得時に借地権価額を含めて相続税or贈与税が課税されている』
い 経過的取扱いの内容
『借地権が存在する』ことを前提とした課税がなされる
※使用貸借通達『経過的取扱い』
使用貸借通達については国税庁のサイトに掲載されています。
<使用貸借通達・『経過的取扱い』>
あ 対象
次の両方に該当するケース
ア 地主=個人イ 借地人=個人
い 通達
直資2-189(例規),直所2-76,直法2-92
昭和48年11月1日
外部サイト|国税庁|使用貸借に係る土地についての相続税及び贈与税の取扱いについて