【借地権評価額|基本・不動産鑑定評価基準|4種類の算定方法・組み合わせ】
1 借地権の評価|地域による傾向の違い
2 借地権評価方法|種類|4種類の算定方法がある
3 借地権評価額算定|成熟の程度が高い地域
4 借地権評価額算定|成熟の程度が低い地域
5 簡易的な借地権評価(概要)
1 借地権の評価|地域による傾向の違い
借地権の評価額について見解の対立が生じてトラブルになることは多いです。
典型例は明渡請求の場面です。
本記事では『借地権の価格・評価』について説明します。
最初に,大雑把な借地権の評価の傾向についてまとめておきます。
<借地権の評価|地域による傾向の違い>
借地権の取引慣行の成熟の程度→ | 高い | 低い |
権利金・明渡料 | 一般化している | 一般的に『ない』 |
借地権譲渡の実情 | 多い=取引市場がある | ほとんどない |
一般の土地=更地とは違って地域による特色が大きく現れているのです。
2 借地権評価方法|種類|4種類の算定方法がある
借地権の基本的な評価方法は4種類あります。
実際の評価額の算定ではこれらを組み合わせて使います。
まずは,基本的な算定方法をまとめます。
<借地権評価方法|種類>
あ 取引事例比較法
借地権の売買・借地権の新規設定時の権利金の金額を元にする
→『比準価格』を算出する
い 土地残余法(借地権残余法)
ア 純収益の算出
純収益=地上建物の賃料(総収入)−地代その他の経費
イ 土地による収益の算出
土地による収益=『純収益』−建物による収益
→現在の価値価値の総計を求める
う 賃料差額還元法
地代が地価の上昇に追いつかない=『差額(借り得)』が生じる
→『差額』の現在価値の総計を求める
え 借地権割合方式
更地価格・借地権割合をかける
それぞれの金額・数値は取引事例比較法で求める
3 借地権評価額算定|成熟の程度が高い地域
具体的に借地権の評価額を算定する方法を説明します。
の段階では対象エリアの『借地権取引の成熟の程度』によって算定方法が異なります。
まずは『借地権取引の成熟の程度が高い』地域についての算定方法をまとめます。
<借地権評価額算定|成熟の程度が高い地域>
あ 基本的方法
複数の評価方法を組み合わせる
い 標準となる評価|メイン
ア 比準価格イ 土地残余法による収益価格
う 比較衡量として使う|サブ
ア 賃料差額還元法イ 借地権割合方式
4 借地権評価額算定|成熟の程度が低い地域
借地権の取引の成熟の程度が低い地域における評価額算定方法をまとめます。
<借地権評価額算定|成熟の程度が低い地域>
あ 基本的方法
複数の評価方法を組み合わせる
い 標準となる評価|メイン
土地残余法による収益価格
う 比較衡量として使う|サブ
ア 賃料差額還元法
取引対象となる期間相当部分
イ 『更地価格(建付地価格)−底地価格』
これは,不動産鑑定評価基準として示されているものです。
しかし実際に借地権取引がほとんどないエリアでは,この算定方法はやや非現実的です。
個々のパラメータが『よく使われている』ものではないのです。
算定結果も現実的な納得感が乏しいことになる傾向があります。
5 簡易的な借地権評価(概要)
以上の説明は,正式な借地権の評価の方法です。
実務では,解決の見通しを検討する段階で,大雑把な借地権の評価を即座に算出する必要があります。
そこで,簡易的な借地権の評価方法が活用されます。
その中で路線価図の借地権割合がよく使われます。
しかし,そのまま使うと不合理なことになることもあります。注意が必要です。
これらについては別の記事で説明しています。
詳しくはこちら|簡易的な借地権評価の方法(路線価図の借地権割合の不合理性)