【悪臭|基本|差止・損害賠償請求・受忍限度論|悪臭防止法・規制基準】
1 悪臭排出×法的請求|基本|差止・損害賠償請求・受忍限度論
2 特定悪臭物質・臭気指数|悪臭防止法
3 悪臭防止法・規制基準|都道府県が物質の種類ごとに設定する
4 悪臭防止法・規制|遵守義務・改善勧告|市町村が個別的に対応する
5 悪臭防止法・規制|改善命令・罰則|最終的には刑事罰がある
6 悪臭防止法の規制×対象者|事業者/一般人
7 規制基準×設定・強化の要請|悪臭防止法
8 市町村による臭気測定|民事的トラブルでも活用できることがある
1 悪臭排出×法的請求|基本|差止・損害賠償請求・受忍限度論
近隣のトラブルとして『悪臭排出』というカテゴリがあります。
法律的な対処法の基本部分をまとめます。
<悪臭排出×法的請求|基本>
あ 悪臭排出に対する法的請求
ア 差止請求イ 損害賠償請求
い 悪臭排出×違法性|判断基準
『受忍限度』を超えている場合に違法性が認められる
『受忍限度』の判断では『規制基準・臭気測定結果』が重要である(後記)
その他の判断要素は『騒音・振動』の場合と同様である
(別記事;リンクは末尾に表示)
近隣に迷惑をかけるカテゴリとして『悪臭』と『騒音・振動』は同じです。
騒音・振動でも『受忍限度』が違法性の判断要素となります。
2 特定悪臭物質・臭気指数|悪臭防止法
悪臭排出については『悪臭防止法』による規制があります。
悪臭防止法における基本事項として『特定悪臭物質』『臭気指数』についてまとめます。
<特定悪臭物質・臭気指数|悪臭防止法>
あ 特定悪臭物質
不快なにおいの原因となり,生活環境を損なうおそれのある物質
例;アンモニア・メチルメルカプタン
い 臭気指数
ア 概要
気体・液体の悪臭の程度を示す値
イ 算出方法
試料の臭気を人間の嗅覚で感知できなくなるまで希釈する
→この希釈の『倍数』を求める
→『倍数』の常用対数に10をかける
ウ 算出時の注意
自然対数(底=ネイピア数)ではなく常用対数(底=10)を用いる
※悪臭防止法2条,施行規則1条
これらの用語は,後述する『規制』の中で使われています。
3 悪臭防止法・規制基準|都道府県が物質の種類ごとに設定する
悪臭防止法では『規制基準』を設定することが規定されています。
<悪臭防止法・規制基準|悪臭防止法>
都道府県知事は地域・特定悪臭物質の種類ごとに規制基準を定める
『臭気指数』により数値として限度を定める
※悪臭防止法4条1項
この基準が,そのまま規制の中で使われています。
4 悪臭防止法・規制|遵守義務・改善勧告|市町村が個別的に対応する
悪臭防止法における規制の基本部分をまとめます。
<悪臭防止法・規制|遵守義務・改善勧告|悪臭防止法>
あ 規制基準の遵守義務
規制地域内の『事業場』設置者
→規制基準を遵守しなければならない
※悪臭防止法7条
い 改善勧告|概要
市町村長は,次の要件に該当する場合,事業所設置者に改善を勧告できる
う 改善勧告の要件
次のいずれにも該当する場合
ア 事業場からの悪臭原因物の排出が規制基準に適合しないイ 不快なにおいにより住民の生活環境が損なわれている
え 『改善』の具体的措置|例
ア 施設の運用の改善イ 悪臭原因物の排出防止設備の改良ウ その他の悪臭原因物の排出を減少させるための措置 ※悪臭防止法8条
5 悪臭防止法・規制|改善命令・罰則|最終的には刑事罰がある
悪臭防止法による『改善勧告』に従わない場合,規制内容はグレードアップします。
<悪臭防止法・規制|改善命令・罰則|悪臭防止法>
あ 改善命令
市町村長は『改善勧告』に従わない事業者に対し,改善を命令できる
い 罰則|法定刑
『改善命令』に事業者に対しては罰則が適用される
懲役1年以下or罰金100万円以下
※悪臭防止法8条,24条
6 悪臭防止法の規制×対象者|事業者/一般人
悪臭防止法の規制は最終的には刑事罰まで用意されていて強力と言えます。
しかし,対象となる者は『事業者』のみです。
事業者ではない個人の場合,規制を受けません。
とは言っても『個人は関係ない』というわけでもありません。
<悪臭防止法の規制×対象者|事業者/一般人>
あ 規制の対象者
『事業者』のみである
い 事業者以外に対する効果
悪臭排出の差止・損害賠償請求において『受忍限度』が判断される
『規制基準・臭気測定』は『受忍限度』の判断における有力な基準となる
実際の『臭気』についての受忍限度の判断・判例は別記事で説明しています(リンクは末尾に表示)。
7 規制基準×設定・強化の要請|悪臭防止法
被害者の立場としては規制基準が軽すぎるorない,という場合に困ります。
この場合,都道府県に規制を新設・強化するよう要請する方法もあります。
しかし,都道府県は一般住民からの要請だけでは対応しない傾向が強いです。
その場合は,市町村経由で都道府県に『要請』を行ってもらうとベターです。
<規制基準×設定・強化の要請|悪臭防止法>
あ 規制の要請|市町村長→都道府県
住民の生活環境を保全するため必要がある場合
→市町村から都道府県に対して,次の要請を行うことができる
い 要請内容
ア 規制地域の指定イ 規制基準の設定・強化 ※悪臭防止法9条
8 市町村による臭気測定|民事的トラブルでも活用できることがある
悪臭防止法では『市町村による臭気測定』という制度も用意されています。
民事的なトラブルでもこの制度を活用できることもあります。
特に悪臭排出者が『事業者』である場合はもともと『改善勧告』の対象です。
『市町村による臭気測定』は実施されやすいです。
<市町村による臭気測定|悪臭防止法>
あ 市町村による
改善勧告を行うために必要な場合
→市町村は,次の測定を行うことができる
い 臭気測定|内容
ア 特定悪臭物質の濃度の測定イ 臭気指数の測定
う 臭気測定士への委託
実際の測定実施は臭気測定士などに委託する
※悪臭防止法12条
え 臭気測定士
国家資格の1つ
臭気の測定ができる資格
※悪臭防止法13条