【休眠担保権抹消手続|供託|金額|債務者・担保権者の相続・共有の担保物】
1 休眠担保権抹消手続|供託|法的性質
休眠担保権抹消手続の中で『供託』を前提とする方法があります。
(別記事『休眠担保権抹消手続・基本』;リンクは末尾に表示)
本記事では、この『供託』について説明します。
まずは、供託の法的性質をまとめます。
休眠担保権抹消手続|供託|法的性質
あ 供託の性質
『弁済供託』である
原因=債権者の受領不能
※民4第3365号民事局長通達昭和63年6月27日
い 受領不能としての特徴
『提供しても受領ができない』ということが前提となる
う 弁済供託としての特徴|供託者
『弁済』ができる一定の第三者も供託可能である
ア 物上保証人イ 担保不動産の第三取得者ウ これらの包括承継人
2 休眠担保権抹消手続|供託通知→行われない
休眠担保権抹消手続の供託における『供託通知』は特別な扱いがなされます。
休眠担保権抹消手続|供託通知
理由=『被供託者=担保権者』の所在が不明である
※昭和36年4月8日民事甲第816号
3 休眠担保権抹消手続|債務者の相続→当然分割承継
休眠担保権抹消手続の供託に関して債務者の相続が生じていることが多いです。
この場合の扱いについてまとめます。
休眠担保権抹消手続|債務者の相続
あ 債務の相続の法的性質
金銭債務の相続について
法定相続分に応じた当然分割となる
詳しくはこちら|相続債務の当然分割と遺言による相続分指定の効力
い 供託者・供託金額
ア 適法な方法
各相続人が各自の債務額を供託する
イ 誤った方法
相続人のうち1人が『債務全額』の供託をすること
→認められない
4 休眠担保権抹消手続|担保権者の相続
休眠担保権抹消手続では『債権者・担保権者』の相続が生じていることも多いです。
この場合の扱いについてまとめます。
休眠担保権抹消手続|担保権者の相続
あ 債権の相続の法的性質
当然分割である
→債権額を分割して承継される
※最高裁昭和30年5月31日
詳しくはこちら|一般的金銭債権の相続(分割承継・相続分の適用・遺産分割の有無)
い 弁済供託
『債権者全員への提供+受領拒否』が前提となる
『所在不明』に該当しない者がいる場合
→休眠担保権抹消手続が利用できない
5 休眠担保権抹消手続|供託金額|基本
休眠担保権抹消手続で供託する場合の金額の基本事項をまとめます。
休眠担保権抹消手続|供託金額|基本
あ 供託金額|基本
債権・利息・損害金の全額
い 供託金額|具体的算定方法
登記上に利息・損害金の記載がある場合
→これらの総額が供託金額となる
『無利息』という記載があれば利息なしで良い
※昭和63年7月1日民3第3456号
う 供託金額|利息・損害金
ア 登記に両方の記載がない場合
利息・損害金ともに年6%とする
※昭和63年7月1日民3第3499号
イ 登記に『利息』記載なし・『損害金』記載ありの場合
利息は年6%、損害金は記載どおりとする
※昭和63年7月1日民3第3499号
6 休眠担保権抹消手続|供託金額|一部弁済ずみ
休眠担保権抹消手続の供託では、弁済済みの部分の扱いに注意が必要です。
休眠担保権抹消手続|供託金額|一部弁済ずみ
あ 『債権額』の判断
『現実の『残額』=実体法上の金額』ではない
純粋に登記上の『債権額』である
※昭和63年7月1日民3第3456号
い 弁済額を控除した残額の供託
休眠担保権抹消手続では使えない
→『弁済供託』としては有効である
※昭和63年7月1日民3第3499号
7 休眠担保権抹消手続|供託金額|根抵当権
休眠担保権抹消手続は根抵当権の場合も利用できます。
この場合の供託金額についてまとめます。
休眠担保権抹消手続|供託金額|根抵当権
※昭和63年7月1日民3第3499号
8 休眠担保権抹消手続|供託金額|共有の担保物
休眠担保権抹消手続で『担保物が共有』ということもあります。
この場合の供託金額の扱いについてまとめます。
休眠担保権抹消手続|供託金額|共有の担保物
あ 発想
担保物件が共有の場合
共有者の1人が『債務全額』の供託をする
い 解釈論
可能と考えられる
第三者弁済として扱う
※東京法務局ブロック管内供託実務研究会『供託実務事例集』日本加除出版p219〜
9 休眠担保権抹消手続|供託|端数処理
休眠担保権抹消手続の供託金額算定における端数処理についてまとめます。
実務的に訂正が必要になると、手続・時間的ロスが生じます。
細かいですが、手続を遂行する上では注意すると良いでしょう。
休眠担保権抹消手続|供託|端数処理
特約がなければ、小数点以下を四捨五入する
※通貨単位・貨幣発行法3条1項