【セールストーク×法的責任|環境保証タイプ|眺望・日照・通風・騒音】
1 不動産のセールストーク|環境保証タイプ|基準
2 環境保証タイプ・セールス|解釈論・傾向
3 眺望×セールストーク|責任否定
4 眺望×セールストーク|責任否定
5 眺望×セールストーク|責任否定
6 眺望×セールストーク|売主が隣地を売却→責任あり
7 眺望×セールストーク|売主が隣地を購入+建築→責任あり
8 防音性能×セールストーク|騒音を防げない
9 売買とは関係ない日照・眺望の法的問題
1 不動産のセールストーク|環境保証タイプ|基準
不動産の販売では過剰なセールストークが問題となることが多いです。
典型例は『利益保証タイプ』『環境保証タイプ』です。
『利益保証タイプ』については別記事で説明しています。
詳しくはこちら|セールストーク×法的責任|利益保証タイプ|全体
本記事では『環境保証タイプ』について,判例を中心に説明します。
なお,一定の場合には売主が環境に関する事情を『調査・説明する義務』があります。
この法的解釈論・基準については別記事で説明しています。
詳しくはこちら|調査・説明義務の範囲|違反→行政/刑事責任・契約の有効性
2 環境保証タイプ・セールス|解釈論・傾向
環境保証タイプのセールスの問題の全体的な解釈の傾向をまとめます。
<環境保証タイプ・セールス|解釈論・傾向>
あ 眺望・日照のPR|原則
セールストークに過ぎない
→合意とは認めない方向性
い 売主自身に環境悪化の回避可能性あり
例;売主自身が土地所有者
環境が悪化することについて売主に回避可能性がある
→信義則違反などの責任を認める方向性
う 問題となる『環境』の内容
眺望・日照・通風に関するトラブルが多い
最近では『耐震性』の約束・説明の問題も増えている
3 眺望×セールストーク|責任否定
眺望に関するセールストークの責任が否定された判例を紹介します。
<眺望×セールストーク|責任否定>
あ セールストーク
将来に渡る眺望の良さ・環境の良さが維持される
町の条例により高層建築が禁止される
い 現実の状況
その後近隣に別のリゾートマンションが建築された
眺望・自然が大幅に損なわれた
う 裁判所の判断
眺望の利益の確保は物理的・経済的に不可能である
→錯誤・詐欺は認めない
※東京地裁平成2年6月26日
売主は『阻害する建物建築』には関与していないことがポイントです。
4 眺望×セールストーク|責任否定
眺望に関するセールストークの責任が否定された別の判例です。
<眺望×セールストーク|責任否定>
あ 広告・パンフレットの表記
日差し豊富な両面採光
四季を通じて藻岩石を眺望できる
い セールストーク
日照や眺望が妨げられない
う 現実の状況
西側の空き地に高層マンション建設されることとなった
え 裁判所の判断|前提事情
売主は阻害する建物建築の計画を知らなかった
お 裁判所の判断|結論
ア 保証特約違反の主張について
日照・通風・眺望を保証する契約は認めない
イ 調査・説明義務違反・不法行為の主張について
調査・説明義務は生じない
→説明内容に違法性はない
→調査・説明義務違反・不法行為はすべて認めない
※札幌地裁昭和63年6月28日
売主が『阻害する建物建築』を知り得なかったことがポイントです。
5 眺望×セールストーク|責任否定
眺望のセールストークの責任が否定された別の判例を紹介します。
<眺望×セールストーク|責任否定>
あ セールストーク
リゾートマンションの販売において
優れた眺望を有することを宣伝して販売した
い 現実の状況
売主業者が,海側隣地に保養所を建築することとなった
販売したマンションからの眺望が阻害される
→購入者が,建設禁止の仮処分を申し立てた
う 裁判所の判断|前提事情=特殊性
保養所の最高部は,マンションの地盤面よりも低い
眺望阻害の程度は小さい
え 裁判所の判断|評価・結論
『眺望の確保』の合意は認めない
眺望阻害は受忍限度内である
→仮処分申請を却下した
※東京地裁平成2年9月11日
6 眺望×セールストーク|売主が隣地を売却→責任あり
眺望に関するセールストークに関連して責任が肯定された判例もあります。
そのうち1つを紹介します。
<眺望×セールストーク|売主が隣地を売却→責任あり>
あ セールストーク
本件マンションは眺望が良い
南側隣接地に将来眺望を阻害する建物が建築されるおそれはない
い 特殊事情
当時,南側隣接地は売主業者の所有であった
う 現実の状況
その後,売主業者は南側隣接地を他業者に売却した
マンション建築計画が立てられた
本件マンションからの眺望が阻害されることになった
え 裁判所の判断
『眺望を阻害する建物を建築しない』という合意がある
この合意に反する
→購入代金の2割に相当する損害賠償責任を認めた
※大阪地裁平成5年12月9日
7 眺望×セールストーク|売主が隣地を購入+建築→責任あり
眺望のセールストークに関する責任が肯定された,別の判例を紹介します。
<眺望×セールストーク|売主が隣地を購入+建築→責任あり>
あ マンション販売時のパンフレット
『史都の街並みを一望できる』
い セールストーク
眺望が良好である
南側隣接地に別のマンションが建築される可能性はない
う 現実の状況
その後,売主業者は南側隣接地を買い受けた
自ら別のマンションを建築した
え 裁判所の判断
ア 否定的な認定
『眺望・日照の保証』の合意は認めない
受忍限度を超えない
イ 責任を肯定する認定
信義則違反に該当する
未着手の8階部分の建築差止請求を認めた
※仙台地裁平成7年8月24日
8 防音性能×セールストーク|騒音を防げない
セールストークの中で『防音性能』が出てくることもよくあります。
防音性能に関するセールストークの責任が判断された判例を紹介します。
<防音性能×セールストーク|騒音を防げない>
あ セールストーク・パンフレット
高性能防音サッシを使用している
騒音は大丈夫だ
い 現実の状況
実際には十分な防音性能を有していなかった
道路を隔てて鉄道の線路に接している
騒音を防げていない
→買主は不眠・不快感の被害を受けた
う 裁判所の判断
違法性あり
→損害賠償請求を認めた
※福岡地裁平成3年12月26日
9 売買とは関係ない日照・眺望の法的問題
以上の説明は『売買契約』に関する環境の不備が生じたケースです。
この点,売買とは関係なく日照・眺望の悪化の責任が問題となることがあります。
これらについては別記事で説明しています。
詳しくはこちら|日照権侵害|建築基準法などの違反・違法がないと『違法性なし』の傾向が強い
詳しくはこちら|眺望権は権利として認められない|『眺望地役権』設定は有意義