【集会の決議事項のうち『管理・変更』の対象行為・判断基準・具体例】
1 集会の決議事項のうち『管理・変更』の対象行為・判断基準・具体例
区分所有法の集会(総会)では、決議事項によって決議要件が異なります。
詳しくはこちら|区分所有法の集会・総会|基本|決議要件|管理規約の効力
本記事では、共用部分の「管理」と「変更」に該当する決議事項の内容を説明します。
2 共用部分の管理・変更の条文規定
最初に、共用部分の「管理」と「変更」に関する区分所有法の規定を押さえておきます。原則として、「管理」は集会の議事で決めるので、具体的には、区分所有者の人数の過半数、かつ議決権の過半数の賛成で決定になります。共用部分の「変更」は、区分所有者の人数の4分の3以上、かつ、議決権の4分の3以上の賛成で決定となります。
なにが「管理」や「変更」にあたるのか、ということは条文には書いてありません。
共用部分の管理・変更の条文規定
あ 共用部分の変更
第十七条 共用部分の変更(その形状又は効用の著しい変更を伴わないものを除く。)は、区分所有者及び議決権の各四分の三以上の多数による集会の決議で決する。ただし、この区分所有者の定数は、規約でその過半数まで減ずることができる。
2 前項の場合において、共用部分の変更が専有部分の使用に特別の影響を及ぼすべきときは、その専有部分の所有者の承諾を得なければならない。
※区分所有法17条
い 共用部分の管理
共用部分の管理に関する事項は、前条の場合を除いて、集会の決議で決する。ただし、保存行為は、各共有者がすることができる。
※区分所有法18条1項
う 集会(総会)の議事
集会の議事は、この法律又は規約に別段の定めがない限り、区分所有者及び議決権の各過半数で決する。
※区分所有法39条1項
3 共用部分の「管理」行為の要点
まずは決議事項のうち共用部分の管理の内容をまとめます。
共用部分の「管理」行為の要点
あ 共用部分の「管理」行為の要点
共用部分の使用・修繕・改良など
「保存行為」を除いた一切の行為
い 共有物の「管理」行為の解釈(要点・参考)
共有物の「管理」行為とは、利用・改良行為である
詳しくはこちら|共有物の(狭義の)管理行為の基本的な内容
4 共用部分の「管理」にあたる行為の具体例
共用部分の「管理」に該当する行為の具体例をまとめます。
共用部分の「管理」にあたる行為の具体例
あ 構成部分の変更に関わらない工事
ア 共用部分の排水管の取り替え工事イ 鉄部塗装工事ウ 外壁の補修工事エ 屋上などの防水工事オ 給水管更生・更新(取替え)工事カ 照明設備キ テレビ共聴設備ク エレベーター設備の更新(取替え)工事
い 構成部分の変更に関わる工事
建物の構成部分の材質・性能のグレードアップ
→このうち一定範囲内のものは『管理』にとどまる
範囲については後記する(後記※1)
5 建物構成部分の工事のうち「管理」にあたる範囲
建物構成部分の工事は、一定範囲で『管理』に該当します。
どの範囲で『管理』に該当するのか、について整理します。
建物構成部分の工事のうち「管理」にあたる範囲(※1)
あ 基本
建物構成部分の工事が工事が大きな加工を伴わない場合には「管理」にあたる
い 「大きな加工」の基本的な判断基準
次のいずれにも該当する場合
ア 建物の躯体部分に相当程度の加工を要するものではないイ 外観を見苦しくない状態に復元できる
う 「大きな加工」の判断基準(外壁・圧力壁)
建物の基本的構造部分を大きく取り壊す工事は「大きな加工」にあたる
それ以外は、外壁・耐力壁などに工事を加えても「大きな加工」に該当しないこともある
6 大きな加工に該当しない工事(「管理」)の具体例
建物構成部分の工事は『大きな加工』でなければ『管理』に該当します(前述)。
『大きな加工』の解釈・内容をまとめます。
大きな加工に該当しない工事(「管理」)の具体例
あ バリアフリー化工事
例;階段にスロープを併設する工事
い 手すりの設置工事
う 耐震改修工事
基本的構造部分への加工が小さい工事
・柱や梁に炭素繊維シートや鉄板を巻き付けて補修する工事
・構造躯体に壁や筋かいなどの耐震部材を設置する工事
え 防犯化工事
共用部分の加工の程度が小さい工事
・オートロック設備を設置する際に配線を空き管路内に通す工事
・建物の外周に敷設したりする工事
・防犯カメラ・防犯灯の設置工事
お IT化工事
共用部分の形状に変更を加えない工事
・光ファイバー・ケーブルを既存のパイプスペースを利用して敷設する
か 玄関ドア・サッシ工事
窓枠、窓ガラス、玄関扉などの一斉交換工事
き 撤去工事
既に不要となったダストボックスや高置水槽などの撤去工事
7 共用部分の「変更」行為の要点
区分所有法の集会の決議事項のうち『変更』に該当する工事についてまとめます。
共用部分の「変更」行為の要点
あ 基本的解釈
共用部分の「変更」行為とは、既存建物の外観形状を大きく変化させる工事である
い 共有物の「変更」行為の解釈(要点・参考)
共有物の「変更」とは、性質を変える行為のことである
詳しくはこちら|共有物の変更行為と処分行為の内容
8 共用部分の「変更」にあたる工事の具体例
共用部分の『変更』に該当する工事の具体例をまとめます。
共用部分の「変更」にあたる工事の具体例
あ 建物の基本構造部分の大規模な加工
ア 戸境壁・スラブの開口イ 既存階段室のエレベーターへの改造
い 付属施設の建替・増築・大規模改造
既存の附属施設の建替・増築・大規模な改造工事
例;集会場・倉庫など
う 敷地表面の利用を大きく変化させる工事
敷地内の広場・公園を廃止し駐車場・駐輪場に変更する工事
本記事では、区分所有建物の「管理」と「変更」にあたる行為(工事)の内容について説明しました。
実際には、具体的な事情によって、法的判断や最適な対応方法は違ってきます。
実際に区分所有建物の工事に関する問題に直面されている方は、みずほ中央法律事務所の弁護士による法律相談をご利用くださることをお勧めします。