【消費者契約法|不当条項|事業者の責任免除・消費者の負担加重】
1 事業者の責任|債務不履行責任の全部免除
2 事業者の責任|債務不履行責任の一部免除
3 事業者の責任|不法行為責任の全部免除
4 事業者の責任|不法行為責任の一部免除
5 事業者の責任|瑕疵担保責任の全部免除
6 消費者の負担|解除に伴う損害賠償額の予定条項
7 消費者の負担|金銭支払不履行×損害賠償額の予定条項
8 消費者の負担|消費者の利益を一方的に害する条項
9 事業者の責任|無効とはならない条項|例
1 事業者の責任|債務不履行責任の全部免除
本記事では,消費者契約法上の『不当条項』について説明します。
大きく分けて『事業者の責任』『消費者の負担』に関するものに分けられます。
1つずつ順にまとめてゆきます。
<債務不履行責任の全部免除>
あ 対象となる条項
消費者契約の中にある条項
事業者の負担する次の賠償責任を全部免除する
ア 事業者の債務不履行があったイ 『ア』により消費者に損害が生じた
い 効果
条項が無効となる
※消費者契約法8条1項1号
債務不履行責任の『全部』を免除するものはストレートに無効となります。
2 事業者の責任|債務不履行責任の一部免除
<債務不履行責任の一部免除>
あ 対象となる条項
消費者契約の中にある条項
事業者の負担する次の賠償責任の一部を免除する
ア 事業者の債務不履行があったイ 事業者に故意or重過失があったウ 『ア』により消費者に損害が生じた
い 効果
条項が無効となる
※消費者契約法8条1項2号
債務不履行責任の『一部』を免除する場合は全部が無効となるわけではありません。
一定の条件の範囲内で無効となるのです。
3 事業者の責任|不法行為責任の全部免除
<不法行為責任の全部免除>
あ 対象となる条項
消費者契約の中にある条項
事業者の負担する次の責任を全部免除する
ア 消費者契約が締結されたイ 事業者の債務履行に際して不法行為が生じたウ 『イ』により消費者に損害が生じたエ 民法の規定により事業者の責任が認められる
い 効果
条項が無効となる
※消費者契約法8条1項3号
不法行為責任の『全部』を免除するものはストレートに無効となります。
4 事業者の責任|不法行為責任の一部免除
<不法行為責任の一部免除>
あ 対象となる条項
消費者契約の中にある条項
事業者の負担する次の責任の一部を免除する
ア 消費者契約が締結されたイ 事業者の債務履行に際して不法行為が生じたウ 事業者に故意or重過失があったエ 『イ』により消費者に損害が生じたオ 民法の規定により事業者の責任が認められる
い 効果
条項が無効となる
※消費者契約法8条1項4号
不法行為責任の『一部』を免除するものは無効となるとは限りません。
一定の条件に該当した場合だけ無効となるのです。
5 事業者の責任|瑕疵担保責任の全部免除
<瑕疵担保責任の全部免除>
あ 対象となる条項
消費者契約の中にある条項
事業者の負担する次の賠償責任を全部免除する
ア 有償の消費者契約が締結されたイ 目的物に隠れた瑕疵があったウ 瑕疵により消費者に損害が生じたエ 事業者・第三者に代用物提供・瑕疵修補などの責任がない
い 効果
条項が無効となる
※消費者契約法8条1項5号,2項
瑕疵担保責任を『全部』免除する条項はストレートに無効となります。
なお『一部』を免除する条項についての規定はありません。
6 消費者の負担|解除に伴う損害賠償額の予定条項
ここからは消費者の責任を『重くする』条項の類型です。
順に説明します。
<解除に伴う損害賠償額の予定条項>
あ 対象となる条項
消費者契約の中にある条項
次のいずれにも該当する
ア 消費者契約の解除に伴う損害賠償額の予定・違約金の定めイ 合算額が『事業者に生じる平均的な損害額』を超過する
い 効果
『超過部分』は無効となる
※消費者契約法9条1項
7 消費者の負担|金銭支払不履行×損害賠償額の予定条項
<金銭支払不履行×損害賠償額の予定条項>
あ 対象となる条項
消費者契約の中にある条項
次のいずれにも該当する
ア 消費者が支払を遅延した場合の損害賠償額の予定・違約金の定めイ 合算額が『年14.6%』の率を超過する
い 効果
『超過部分』は無効となる
※消費者契約法9条2項
8 消費者の負担|消費者の利益を一方的に害する条項
<消費者の利益を一方的に害する条項>
あ 対象となる条項
次のいずれにも該当する
ア 法律の規定との重複
民法・商法その他の法律の規定と同一事項の条項である
イ 法律の規定とのバランス
条項(特約)が,法律の規定と比べて,消費者の権利の制限or消費者の義務を加重する
ウ アンバランス基準
消費者の利益を一方的に害する
信義誠実の原則(民法1条2項)に反する
い 効果
条項が無効となる
※消費者契約法10条
この規定は対象が非常に広く,ある条項がこれに該当する(無効となる)かが,はっきりと判定できないことがあります。
特に,民法1条2項との関係は不明確で,解釈として2つの見解があります。
詳しくはこちら|消費者契約法10条と民法1条2項の関係(確認説と創造説)
なお,本記事の分類上,便宜的に,消費者の負担に関するものとしましたが,実際には事業者の責任の軽減も無効とする条項に含まれます。
9 事業者の責任|無効とはならない条項|例
以上は『無効となる』条項の条件・要件の説明でした。
特に事業者の責任についてはちょっと複雑なところがあります。
具体例で説明した方が分かりやすいと思います。
そこで,逆に『無効とはならない』条項の具体例を紹介します。
<無効とはならない条項|例>
あ 無効とはならない条項|例
事業者の債務不履行または不法行為による損害賠償額の一部を免除する
ただし事業者の故意・重過失による場合は適用しない
い 条項との抵触回避
『一部免除』を無効とする規定に該当しない
※消費者契約法8条1項2号,4号
い 注意
免除する程度によっては『消費者の利益を一方的に害する』に該当する
→この場合,条項が無効となる
※消費者契約法10条