【シェアオフィスへの借地借家法の適用についての判断の傾向】
1 シェアオフィス|一般的状況
2 シェアオフィス×借地借家法の適用|判断の傾向
3 シェアオフィス(会計事務所)→借家否定裁判例
4 シェアオフィス(法律事務所)→借家肯定裁判例(概要)
5 トラブル防止のための定期借家の活用(概要)
1 シェアオフィス|一般的状況
最近では『シェアオフィス』が普及しています。
法律上の正確な定義などはありません。
一般的なシェアオフィスの状況・形態をまとめます。
<シェアオフィス|一般的状況>
あ 一般的状況|事務所エリア
比較的隔離の程度が高い
い 一般的状況|共用スペース
一定の共用スペース・施設がある
ア 応接室イ プリンタ・FAXなどの機器ウ トイレエ 給湯室
2 シェアオフィス×借地借家法の適用|判断の傾向
シェアオフィスについては借地借家法が適用されるかどうかが問題になります。
判断の基本的事項・傾向についてまとめます。
<シェアオフィス×借地借家法の適用|判断の傾向>
あ 一般的判断要素
使用上・効用上の独立性で判断する
詳しくはこちら|借地借家法の『建物』(借家該当性)の判断基準の基本
い 判断×重要要素
ア 『事務所エリア』と『共用スペース』の比率イ オーナーの提供する機器・インフラの程度
う 判断の傾向
重要要素(『あ』)以外の『独立性・排他性』も影響する
→個別的事情で借地借家法の適用あり/なしのいずれにもなり得る
3 シェアオフィス(会計事務所)→借家否定裁判例
シェアオフィスに関するケースの裁判例を紹介します。
個別的事情を元にして借地借家法の適用がないという結論になっています。
<シェアオフィス(会計事務所)→借家否定裁判例>
あ 対象エリアの利用実態
税理士・会計事務所としての使用
い 物理的隔離
対象エリアの周辺境界
→若干の什器備品が置かれているだけであった
壁などによる物理的な境界は設置されていなかった
う 裁判所の判断
独占的排他的支配が可能な構造・規模ではない
→借地借家法は適用されない
※東京地裁平成21年4月27日
4 シェアオフィス(法律事務所)→借家肯定裁判例(概要)
『シェアオフィス』というネーミングでも,サービスの内容は非常に幅広いです。
サービス内容によっては借地借家法が適用されることもあります。
隔離がしっかりしていたために借地借家法が適用されると判断された裁判例もあります。
<シェアオフィス(法律事務所)→借家肯定裁判例(概要)>
あ 対象エリアの利用実態
弁護士・法律事務所としての使用
い 物理的隔離
床から天井まで障壁で隔離されていた
う 裁判所の判断
独占的排他的支配があるといえる
→借地借家法は適用される
※東京地裁平成26年11月11日
詳しくはこちら|シェアオフィス(法律事務所)への借地借家法適用(肯定裁判例)
5 トラブル防止のための定期借家の活用(概要)
新しいサービスでも,想定外にレガシーな法律の枠組みにあてはまってしまうことはよくあります。
シェアオフィスと借地借家法(借家)の適用についてもその1つです。
見解の対立,つまりトラブルが生じると事業遂行へのブレーキとなります。
トラブルの防止策としては定期借家の活用が有用です。
詳しくはこちら|定期借家の基本(更新なし=期間満了で確実に終了する)