【不動産賃貸借|解除特約|有効性|ペット飼育・迷惑行為】
1 犬飼育×臭気・騒音→賃貸借解除事件
2 犬飼育禁止×違反→賃貸借解除事件
3 迷惑行為×解除特約|ショッピングセンター|事案
4 迷惑行為×解除特約|ショッピングセンター|裁判所の判断
5 迷惑行為×解除特約|逆騒音おばさん事件|事案
6 迷惑行為×解除特約|逆騒音おばさん事件|裁判所の判断
1 犬飼育×臭気・騒音→賃貸借解除事件
賃借人がペットを飼育して,他の住人が迷惑を被るケースもよくあります。
犬の飼育を理由にした解除が認められた事例を紹介します。
<犬飼育×臭気・騒音→賃貸借解除事件>
あ 事案
住宅の賃借人がベランダで犬を飼育していた
糞尿・吠え声などが生じた
い 裁判所の判断
他の入居者に被害を及ぼした
賃貸借契約解除の正当事由を認めた
→明渡請求を認めた
※東京地裁昭和54年8月30日
2 犬飼育禁止×違反→賃貸借解除事件
ペットの飼育による迷惑を回避するための『禁止ルール』はよくあります。
このルールの有効性について裁判所が判断した判例があります。
<犬飼育禁止×違反→賃貸借解除事件>
あ 事案
住宅の賃借人が犬を飼育していた
賃貸借契約では『犬の飼育』を禁止する特約が存在した
い 裁判所の判断|特約の有効性
犬飼育により建物に損害を与える
他の居住者に迷惑・損害を与えるおそれがある
例;鳴き声・排泄物・臭い・毛の浮遊
→犬の飼育を禁止する特約を設けることには合理性がある
う 裁判所の判断|解除・明渡
特約違反による解除は有効である
→明渡請求を認めた
※東京地裁平成7年7月12日
3 迷惑行為×解除特約|ショッピングセンター|事案
一定の『迷惑行為』を解除の理由とする特約もあります。
有効性が問題となった事案についての判例があります。
まずは事案を整理します。
<迷惑行為×解除特約|ショッピングセンター|事案>
あ 物件の環境
ショッピングセンターの一部
青物商・果物商などの店舗が多く存在する
い 特約|禁止事項
ア 粗暴・抗争
賃借人が粗暴な言動を用いるorみだりに他人と抗争すること
イ 秩序を乱す行為
策略・他人を扇動するなどによりショッピングセンターの秩序を乱すこと
う 特約|違反行為への措置
賃貸人は賃貸借契約を解除できる
え 違反行為
賃借人が他の賃借人と争うようになった
賃貸人が注意をした
賃借人は却って暴言を吐き,賃貸人に暴行を加えた
※最高裁昭和50年2月20日
4 迷惑行為×解除特約|ショッピングセンター|裁判所の判断
上記の事案について裁判所の判断内容をまとめます。
<迷惑行為×解除特約|ショッピングセンター|裁判所の判断>
あ 特約の有効性
ア 禁止することの意義
ショッピングセンターの運営・維持に必要不可欠である
イ 賃借人の負担の程度
禁止事項の遵守は通常の賃借人にとって容易である
→賃借人に不当に重い負担を課すものではない
ウ 結論
特約は有効である
い 解除の有効性
特約違反+信頼関係破壊のいずれも認められる
→無催告での解除を認めた
※最高裁昭和50年2月20日
5 迷惑行為×解除特約|逆騒音おばさん事件|事案
迷惑行為を理由とした解除が問題となった判例を紹介します。
『騒音被害を受けた』という主張が元になったトラブルです。
まずは事案の内容をまとめます。
<迷惑行為×解除特約|逆騒音おばさん事件|事案>
あ 物件の環境
一般的な住宅
い 特約|禁止事項
賃借人は近隣の迷惑となる一切の行為
例示=騒音をたてる・風紀を乱すなど
う 特約|違反への措置
賃貸人は無催告で賃貸借契約を解除できる
え 違反行為
賃借人は近隣の居住者に対し嫌がらせ行為を続けていた
何回も執拗に次の行為を繰り返していた
ア 『音がうるさい』と文句を言うイ 大声で怒鳴るウ 壁を叩く
お 近隣の居住者による騒音
日常生活として通常発生する程度の騒音にとどまっていた
社会生活上の受忍限度を超えるものではなかった
※東京地裁平成10年5月12日
6 迷惑行為×解除特約|逆騒音おばさん事件|裁判所の判断
上記事案について,裁判所の判断内容をまとめます。
<迷惑行為×解除特約|逆騒音おばさん事件|裁判所の判断>
あ 禁止事項・解除事由
これらのいずれにも該当する
い 信頼関係破壊
当該物件の両隣りの部屋が長期間空室のままとなっている
→賃貸人は実際に経済的に多額の損害を被っている
→信頼関係を破壊する行為に該当する
う 結論
無催告解除は有効である
※東京地裁平成10年5月12日