【動物の占有者の責任|占有者・管理者|占有補助者・所有者の責任】
1 占有者|解釈論|基本
2 占有補助者|具体例=運送スタッフ・馬丁
3 管理者|解釈論
4 動物の占有者の責任×所有者の責任
1 占有者|解釈論|基本
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民法には動物の占有者の責任の規定があります。
詳しくはこちら|動物の占有者の責任|基本・『動物』解釈論
本記事では,この規定の中の『占有者・管理者』の解釈論を説明します。
まずは『占有者』の解釈の基本的事項をまとめます。
<占有者|解釈論|基本>
あ 基本的事項
動物の『占有者』
→『占有権』を有する者を意味する
※民法180条
詳しくはこちら|『占有』概念の基本(判断基準や対象物のバラエティ)
→動物を事実上支配する者のことである
※潮見佳男著『不法行為法2 第2版』信山社2011年p429
い 占有補助者・占有機関(後記※1)
独立の地位を有しない者のことである
→『占有者』には該当しない
※我妻栄『事務管理・不当利得・不法行為』日本評論社p190
※潮見佳男著『不法行為法2 第2版』信山社2011年p429,430
※吉村良一『不法行為法 第4版』有斐閣p220
※加藤一郎『注釈民法19』有斐閣p204
※四宮和夫『不法行為−事務管理・不当利得・不法行為 下』p758
2 占有補助者の具体例=運送スタッフ・馬丁
『占有補助者』は『占有者』とは別に扱われます(前記)。
『占有補助者』の具体例をまとめます。
<占有補助者の具体例(※1)>
あ 運送会社の被用者
占有の補助機関である
→『占有者・保管者』のいずれにも該当しない
※大判大正10年12月15日
※最高裁昭和37年2月1日
い 馬丁
ア 辞書的意味
馬の世話をすることを仕事とする人。
また,馬の口を取って引く人。
※『大辞林 第3版』三省堂
イ 法解釈
『占有者』には該当しない
3 管理者|解釈論
動物の占有者の責任の規定では『管理者』が示されています。
『管理者』の解釈論をまとめます。
<管理者|解釈論>
あ 古い解釈
運送人を『管理者(保管者)』と認めた
※最高裁昭和40年9月24日
い 現在の解釈
占有理論では『賃借人・受寄者・運送人』は『占有』を取得する
→『占有者』に該当すると考える
2項は注意規定である
※通説
※我妻栄『事務管理・不当利得・不法行為』日本評論社p190
※前田達明『現代法律学講座14不法行為法』青林書院p173
※加藤一郎『注釈民法19』有斐閣p203
4 動物の占有者の責任×所有者の責任
動物の占有者の責任の規定には『所有者』が登場しません。
『所有者』の責任との関係をまとめます。
<動物の占有者の責任×所有者の責任>
あ 動物の『所有者』の責任
『占有者』の責任を負わない;民法718条
一般不法行為責任を負うことがある;民法709条
い 占有者の責任×所有者の責任|関係
2つの責任は競合する
う 責任の競合|判例
主体 | 立場 | 責任 | 民法 |
鹿の愛護会 | 鹿の占有者 | 占有者の責任を認めた | 718条 |
春日大社 | 鹿の所有者 | 一般不法行為責任を認めた | 709条 |
※奈良地裁昭和58年3月25日