【不動産売買・賃貸×過去の人の死|基本|法的構成・責任・発覚ルート】
1 売買・賃貸×人の死発覚|法律構成・種類
2 売買・賃貸×人の死発覚|法的効果|全体
3 売買・賃貸×過去の人の死→心理的瑕疵
4 競売×人の死発覚|特殊性・概要
5 死亡の経緯・死因|類型
6 過去の人の死・発覚ルート
7 ワケあり物件×忘れられる権利
1 売買・賃貸×人の死発覚|法律構成・種類
不動産の取引後に『過去の人の死』が発覚するケースがあります。
この場合,売主・貸主や仲介業者が責任を負うこともあります。
まずは法律的な責任の種類を整理します。
<売買・賃貸×人の死発覚|法律構成・種類(※1)>
あ 瑕疵担保責任
『精神的瑕疵・心理的瑕疵』と呼ばれる(※2)
い 調査義務違反
売主・貸主の調査が不足していた
そのため『過去の人の死』を把握できなかった
う 説明義務違反
売主・貸主は『過去の人の死』を知っていた
しかし,買主・借主に説明しなかった
『告知義務違反』と呼ぶこともある
え 錯誤無効・詐欺取消
お 刑事上の詐欺罪
意図的に『騙した』ようなケース
詳しくはこちら|売買契約に関する責任の種類(瑕疵担保・債務不履行・不法行為)
2 売買・賃貸×人の死発覚|法的効果|全体
後から人の死が発覚した場合の法的な効果をまとめます。
<売買・賃貸×人の死発覚|法的効果|全体>
あ 基本的事項
法律構成(上記※1)の種類によって効果が異なる
大まかに整理すると次の『い・う』のようになる
い キャンセル系
正式には『解除』『無効』『取消』と呼ばれる
う 損害賠償系
金銭的な賠償のことである
具体的な内容により,これらの責任が認められることがあるのです。
3 売買・賃貸×過去の人の死→心理的瑕疵
過去の人の死は『瑕疵』と認められることがあります(前記)。
『瑕疵』の理論的な解釈をまとめます。
<売買・賃貸×過去の人の死→心理的瑕疵(上記※2)>
あ 『瑕疵』|一般的解釈|概要
『瑕疵』とは『平均的な性能を欠く』ことである
い 建物の瑕疵|分類
建物の『性能』は次の両方が含まれる
ア 構造上の物理的・客観的な性能イ 『心理的な問題』
う 人の死→心理的瑕疵
過去に対象物件で人の死があった場合
→心理的な『瑕疵』に該当することがある
※大阪高裁昭和37年6月21日
4 競売×人の死発覚|特殊性・概要
『競売』は普通の取引とは異なります。
問題があった場合の法的扱いも特殊です。
競売において過去の人の死が発覚した場合の扱いを整理します。
<競売×人の死発覚|特殊性・概要>
競売では一般的な法律の規定(上記※1)は適用がない
競売の場合『売却不許可・許可取消』となる可能性がある
詳しくはこちら|競売×『人の死』発覚→売却不許可or売却許可取消|判断基準・事例
5 死亡の経緯・死因|類型
法的責任の判断には『死亡の経緯』が大きく影響します。
『死亡の経緯』の種類を整理します。
それぞれの死因について判例を別記事で紹介しています。
<死亡の経緯・死因|類型>
あ 自然死
病死・寿命による大往生
詳しくはこちら|売買×心理的瑕疵|判例|自然死・火災事故死
い 自殺
う 不慮の事故死
例;火災による死亡
詳しくはこちら|売買×心理的瑕疵|判例|自然死・火災事故死
え 殺人事件
他殺のことである
詳しくはこちら|売買×心理的瑕疵|判例|殺人事件
6 過去の人の死・発覚ルート
実際に法的問題となるのは過去の死が発覚したケースです。
発覚するきっかけ・ルートは大体決まっています。
7 ワケあり物件×忘れられる権利
過去に人の死があった不動産は『ワケあり物件』と呼ばれます。
ワケあり物件は売却・賃貸が難しくなってしまうのです。
社会的な状況を考えると似ているものがあります。
<ワケあり物件×忘れられる権利>
あ 不動産を個人になぞらえる
次の2つは類似している
ア 不動産のワケあり物件(※3)イ 前科のある個人(※4)
い 前科×忘れられる権利(上記※4)
前科が知れ渡ると『平穏な生活・更生』を妨害する
→レッテルによる更生妨害は好ましくない
→前科の公表はプライバシー権侵害となる
最近では『忘れられる権利』という考え方もある
詳しくはこちら|プライバシー権×前科|基本|忘れられる権利|報道以外
う ワケあり物件×忘れられる権利(上記※3)
過去のイワクは『無用な心配』を与える
→レッテルによる『流通』妨害は好ましくない
→過剰な説明は不動産の流通を無駄に妨害する
不動産でも『忘れられる権利』があっても良い
不動産の『忘れられる権利』が公的に認められているわけではありません。
しかし考え方として非常に類似しています。
社会問題としてパラレルに考えることができるのです。