【管理規約・使用細則|民泊禁止条項×有効性・ハードル】
1 民泊禁止条項×ハードル|全体
2 管理規約変更|決議要件|一般
3 管理規約変更|決議要件|承諾
4 マンション×民泊|早い者勝ち現象
5 民泊禁止条項|有効性・一般的判断
6 民泊禁止条項|使用停止請求×共同の利害
7 使用細則×専有部分の使用制限
1 民泊禁止条項×ハードル|全体
管理規約・使用細則で民泊禁止条項を設定するケースがあります。
詳しくはこちら|管理規約・使用細則|民泊禁止条項|経済的影響・具体例・実例
しかし,これらの規定は『しっかりと効力を発揮しない』こともあります。
本記事では有効性などのハードルを説明します。
最初に問題となる項目を整理します。
<民泊禁止条項×ハードル|全体>
あ 管理規約
管理規約の新設・変更は次のハードルがある
ア 決議要件|一般(後記※1)イ 決議要件|承諾(後記※2)ウ 有効性|一般的判断(後記※3)エ 使用停止請求×共同の利害(後記※4)
い 使用細則
専有部分の使用制限を設定した場合
→無効になる可能性が高い(後記※5)
2 管理規約変更|決議要件|一般
管理規約を変更するには,高い決議要件をクリアする必要があります。
<管理規約変更|決議要件|一般(※1)>
あ 管理規約変更|手続|概要
集会の招集→開催→決議が必要
い 管理規約変更|決議要件|概要
法律上,最低限の決議要件が定められている
次のそれぞれの『4分の3』以上の賛成
ア 区分所有者の『頭数』イ 議決権割合
専有部分の床面積割合で算定される
詳しくはこちら|管理規約|基本|設定手続・有効性・特定の区分所有者の『承諾』
3 管理規約変更|決議要件|承諾
管理規約の変更の際,一部の区分所有者の『承諾』が必要となることがあります。
<管理規約変更|決議要件|承諾(※2)>
あ 特別の影響×承諾
『一部の区分所有者の権利に特別の影響を及ぼす』場合
→当該区分所有者の『承諾』が必要である
※区分所有法31条1項後段
い 『特別の影響』×民泊|基本
既にAが民泊サービスの提供を行っている場合
→『民泊禁止』となるとAは収益が奪われる
=直接的・多大な影響を受ける
→Aは『特別の影響』を受ける者となる
→Aの『承諾』が必要となる
=Aの『承諾』がないと規約変更は無効となる
う 『特別の影響』×民泊|判断
仮に民泊サービスが『違法』である場合
→法的な保護の対象にならない
=もともとAは収益を得る立場ではない
→『民泊禁止』となっても『特別の影響』はない
→Aの『承諾』は不要である
詳しくはこちら|管理規約|基本|設定手続・有効性・特定の区分所有者の『承諾』
4 マンション×民泊|早い者勝ち現象
上記のように既存の民泊サービスは優遇される結果が生じます。
逆に言えば『早い者勝ち』と言えるような状況になるのです。
<マンション×民泊|早い者勝ち現象>
あ 管理規約変更バリア
民泊禁止の管理規約設定がなされた
それより前にAが民泊サービス提供を開始していた
→Aには『民泊禁止』が適用されない
い 参考|消防法適用バリア
延床面積が300〜500平方メートルのマンション
民泊面積が1割まで→ハードルは低い
1割を超える→現実的にクリアできないハードルが生じる
詳しくはこちら|民泊×消防法|共同住宅|火災報知機・誘導灯|現実的ハードル
参考として,別の規制における『早い者勝ち現象』も紹介しました。
5 民泊禁止条項|有効性・一般的判断
民泊禁止条項を作ったとしても『無効』となる可能性があります。
<民泊禁止条項|有効性・一般的判断(※3)>
あ 所有権×収益
区分所有権という権利の内容として『収益』がある
財産権の中の重要な機能・権利である
※民法206条
い 不合理性
民泊を禁止すると効率の良い収益を奪うことになる
民泊禁止条項は不合理であるという考えもある
→『条項の設定・変更』が無効となる可能性がある
6 民泊禁止条項|使用停止請求×共同の利害
民泊禁止条項を実際に使う場面で『無意味』となることもあります。
<民泊禁止条項|使用停止請求×共同の利害(※4)>
あ 前提|民泊禁止条項・新設
規約が変更され『民泊禁止条項』が新設された
これが有効であると仮定する
い 民泊×使用停止請求|具体例
Aが民泊サービスを始めた
→『民泊禁止条項』違反となる
→管理組合は『使用停止請求』を行った
う 使用停止請求×共同の利益|概要
具体的な民泊サービスの内容により『共同の利益』が評価される
→『共同の利益』を害する程度ではないと判断された場合
→使用停止請求は認められない
=結論として民泊禁止条項が『無意味』となる
詳しくはこちら|マンション・民泊×使用停止請求|共同利益・業法規制|対応策
7 使用細則×専有部分の使用制限
管理規約ではなく『使用細則』で民泊禁止条項を設定するケースもあります。
この場合も,理論的に無効となる可能性があります。
<使用細則×専有部分の使用制限(上記※5)>
あ 決議要件×低いハードル|概要
使用細則の決議要件は『過半数』で可能である
管理規約よりも大幅にハードルが低い
い 専有部分の使用制限×有効性
使用細則による『専有部分の使用制限』について
→無効となる可能性が高い
詳しくはこちら|マンション使用細則|基本|設定手続・内容の範囲・民泊禁止条項