【共有物に関する確認訴訟の当事者適格・共同訴訟形態】
1 共有物に関する確認訴訟の当事者適格・共同訴訟形態
共有物に関する訴訟では、誰が当事者になるか(当事者適格)や、複数の共有者が当事者になる場合にはその扱い(共同訴訟形態)が問題となります。
本記事では、共有物に関する確認訴訟の当事者適格や共同訴訟形態を説明します。
2 第三者に対する共有持分権確認請求
共有者でない者が所有者であると主張している場合、共有者としては私は共有持分を持っているということを裁判所に確認してもらう、という解決方法があります。共有持分権確認訴訟です。
確認する共有持分は、各共有者がもつ権利なので、各共有者が単独で請求(提訴)することができます。
第三者に対する共有持分権確認請求
あ 事例
土地をA・Bが共有している
第三者Cが土地は自己に帰属すると主張している
い 原告適格
共有持分権は共有物の全部に及ぶ
※民法249条
→A・BはCに対して共有持分権の確認を請求できる
A・Bは各自単独で提訴できる
※大判大正3年2月16日
※大判大正8年4月11日
※大判昭和3年12月17日
※最高裁昭和40年5月20日
3 他の共有者に対する共有持分権確認請求
共有持分の確認を求める相手が、他の共有者である場合の当事者適格については、判例がみあたりません。ただし、第三者に対して確認請求をする場合と同じだと考えられます。つまり、確認を求めたい共有者(だけ)が単独で請求(提訴)することができるということです。
他の共有者に対する共有持分権確認請求
→相手が共有者でも第三者でもいずれも同様
=各共有者が単独で提訴できる
※能見善久ほか編『論点体系 判例民法2物権 第3版』第一法規2019年p339
4 第三者に対する「共有権」の確認請求
第三者に対して、共有持分ではなく、所有権(全体)の確認を求める、という方法もあります。たとえば、「AとBの2人が共有(所有)している」ことを確認する、というものです。この場合には、AとBの両方が原告になる必要があります。つまり、固有必要的共同訴訟であるということになります。
第三者に対する「共有権」の確認請求
あ 事案
A・Bが不動産を共有している
A・Bが共同原告となり共有権の確認訴訟を提起した
(A・Bが共有していることの確認を求めた)
い 共同訴訟形態
固有必要的共同訴訟である
→共有者単独では提訴できない
う 判決文引用
思うに、一個の物を共有する数名の者全員が、共同原告となり、いわゆる共有権(数人が共同して有する一個の所有権)に基づき、その共有権を争う第三者を相手方として、共有権の確認を求めているときは、その訴訟の形態はいわゆる固有必要的共同訴訟と解するのが相当である(大審院大正一一年(オ)第八二一号同一三年五月一九日判決、民集三巻二一一頁参照)。
※最判昭和46年10月7日
5 「共有権」に基づく移転登記請求
前記の昭和46年判例は、もうひとつ判断を示しています。共有権に基づく所有権移転登記請求も、共有権確認と同じように、固有必要的共同訴訟になる、ということです。
「共有権」に基づく移転登記請求
あ 事案
不動産の共有者は(実体上)A・Bである
登記上はCが所有者となっている(不実の登記)
A・Bが「CからA・Bへの所有権移転登記」を求めた
い 判決文引用
(共有権確認訴訟が固有必要的共同訴訟であるという判断に続いて)
また、これと同様に、一個の不動産を共有する数名の者全員が、共同原告となつて、共有権に基づき所有権移転登記手続を求めているときは、その訴訟の形態も固有必要的共同訴訟と解するのが相当であり(大審院大正一一年(オ)第二五六号同年七月一〇日判決、民集一巻三八六頁参照)、その移転登記請求が真正な所有名義の回復の目的に出たものであつたとしても、その理は異ならない。
※最判昭和46年10月7日
6 合有・総有の場合の共有権確認訴訟(参考)
以上の説明は、通常の共有を前提としていました。この点、「共有」の中でも特殊なものもあります。
まず、入会団体の財産は、構成員の「共有」ですが、共有持分がない総有と呼ばれるものです。この特殊性から、共有権(総有権)確認訴訟は、構成員全員が原告となる必要がある(固有必要的共同訴訟)となっています。
詳しくはこちら|入会権・入会財産に関する訴訟の共同訴訟形態(原告適格)
また、民法上の組合の財産は、組合員の「共有」であり、共有持分もありますが、大きな制限がある、合有と呼ばれるものです。特殊性(制限)はありますが、共有権(合有権)確認訴訟は、各組合員(共有者)が単独で提訴できます。つまり固有必要的共同訴訟ではありません。この扱いは、通常の共有の場合(前述)と同じです。
詳しくはこちら|民法上の組合に関する訴訟の当事者適格・共同訴訟形態
本記事では、共有に関する確認訴訟の当事者適格や共同訴訟形態を説明しました。
実際には、個別的な事情によって、法的判断や最適な対応方法は違ってきます。
実際に、共有物(共有不動産)に関する問題に直面されている方は、みずほ中央法律事務所の弁護士による法律相談をご利用くださることをお勧めします。