【形式的競売×担保権への影響|期限の利益喪失】
1 引受主義×住宅ローンへの影響|ダブル競売
2 ダブル競売|不合理性
3 形式的競売×期限の利益喪失|実務・現実
4 形式的競売×期限の利益喪失|実務対応
1 引受主義×住宅ローンへの影響|ダブル競売
形式的競売では担保権の処理方法が主に2とおりあります。
詳しくはこちら|形式的競売の担保権処理は引受主義より消除主義が主流である
原則的には消除主義が採用されますが,個別事情によっては引受主義が採用されることもあります。
この場合,住宅ローンなどの担保権に影響が生じます。
これについてまとめます。
<引受主義×住宅ローンへの影響|ダブル競売>
あ 住宅ローン→存続
形式的競売において
引受主義が採用された場合
→住宅ローンは競売後も残ることになる
い 期限の利益喪失事由→該当
ア 期限の利益喪失事由|典型例
・所有者の変更
・競売
イ 形式的競売の影響
形式的競売が行われた場合
→通常,期限の利益喪失事由に該当する
う 期限の利益喪失|効果
期限の利益を喪失する
→一括払いをしなくてはならない状態になる
=住宅ローンの残額の一括請求を受ける状態
え ダブル競売
通常,全額一括返済はできない
→債務不履行に該当する
→金融機関は担保権の実行=競売ができる
2 ダブル競売|不合理性
前記の結論は競売が2つ行われるというものです。
これは非常に不合理です。
<ダブル競売|不合理性>
あ ダブル競売
引受主義により住宅ローンを温存した
→その後競売になった場合
次のように2つの競売が連続することになる
形式的競売の手続→担保権実行による競売
い 不合理性
『住宅ローンの温存』が無意味となる
3 形式的競売×期限の利益喪失|実務・現実
以上の説明は形式的な解釈を前提とするものです。
実務的な解釈や現実の運用についてまとめます。
<形式的競売×期限の利益喪失|実務・現実>
あ 期限の利益喪失事由|解釈論
形式的競売は債務者の支払能力低下が要因ではない
→期限の利益喪失事由の趣旨に該当しない
→期限の利益喪失の効果は生じないと思われる
い 金融機関・実務的対応
金融機関は『一括返済請求→競売申立』を通常行わない
う まとめ
現実的なリスクは高くはない
4 形式的競売×期限の利益喪失|実務対応
形式的競売については期限の利益喪失のリスクが一応あります(前記)。
実務では,共有物分割の初期段階で配慮するのが通常です。
<形式的競売×期限の利益喪失|実務対応>
共有物分割の協議の当初の時点において
→共有者から金融機関に説明・確認する