【共有物分割における証書保存義務(非訟手続・開示・使用請求)】
1 共有物分割×『証書』保存|基本
共有物分割に関する『証書』の保存義務があります。
まずは基本的事項をまとめます。
共有物分割×『証書』保存|基本
2 共有物に関する『証書』|例
証書保存義務の対象となる『証書』の具体例をまとめます。
共有物に関する『証書』|例(※1)
あ 売買契約書
対象物を購入した時の売買契約書
い 納税証明書
公租公課の納付証明書
う 判決書
対象物に関する訴訟の判決書
3 証書保存義務者|優先順位
証書保存義務を負う者の優先順位をまとめます。
証書保存義務者|優先順位(※2)
あ 優先順位|基本
保存義務を負う者について
優先順位は『い→う→え』の順である
い 単独所有となった者
分割の結果単独所有となった者
※民法262条1項
う 最大部分取得者
最大部分を取得した者
※民法262条2項
え 協議or裁判所の指定
最大部分が判明しない場合
→協議で保存者を定める
合意に至らない場合
→裁判所が指定する(後記※3)
※民法262条3項
4 証書保存者指定請求|非訟手続
証書保存者を裁判所が指定する手続があります。
これについてまとめます。
証書保存者指定請求|非訟手続(※3)
あ 非訟事件申立
次の『い』の要件すべてに該当する場合
→裁判所に指定を求めることができる
※非訟事件手続法86条
い 要件
ア 共有物分割を行ったイ 最大部分が判明しないウ 証書保管者の協議→合意に至らない ※民法262条3項
5 証書保存義務|開示・使用請求
保存した証書の活用に関するルールもあります。
使用するために開示を求める権利が認められているのです。
証書保存義務|開示・使用請求
あ 開示・使用請求
証書保存者以外の元共有者において
→証書保存者に対して『証書を使用させる』ことを請求できる
※民法260条4項
い 文書提出命令
民事訴訟における挙証者が文書の所持者に対しその引渡を求めることができる(民事訴訟法220条2号)に該当する
→文書提出命令が認められる
※民事訴訟法221条
条文上、以上のように細かいルールが設定されています。
誰が資料を保管するのかについて迷った時にこのルールを使います。
ただ、実務上の意義や実際に使用する状況はほとんどありません。