【入会権・入会団体|全体・基本|所有形態】
1 入会団体の所有形態
2 入会地の売却→代金債権の帰属
3 入会権に関する訴訟|共同訴訟形態|概要
4 入会権|慣習・会則・公序良俗|概要
5 入会権|共有者の時効取得×対抗関係|概要
6 明治初年・官民有区分処分→入会権存続
1 入会団体の所有形態
本記事では入会権に関する法律問題の基本的事項を説明します。
まずは入会団体が財産を所有する形態についてまとめます。
<入会団体の所有形態>
構成員の共有持分はない
構成員は使用収益権を有するにとどまる
一般的な学説・判例では総有に分類する
=共有の中の1つの分類である
※最高裁平成20年7月17日
※最高裁昭和41年11月25日
※大判明治39年2月5日
※能見善久ほか編『論点体系 判例民法2物権 第3版』第一法規2019年p336
2 入会地の売却→代金債権の帰属
入会団体の所有財産を売却したケースがあります。
この場合の売却代金の権利関係についてまとめます。
<入会地の売却→代金債権の帰属>
あ 入会地の売却
入会地を売却した
売却代金は代表者Aが受領した
い 代金債権の法的位置付け
代金債権は構成員に『総有的に』帰属する
持分に応じた分割債権を取得することはない
※最高裁平成15年4月11日
う 比較|通常の共有
共有の不動産の売却代金債権について
→代金債権は可分となる
※最高裁昭和52年9月19日
詳しくはこちら|売買契約の売主または買主が複数である場合の所有関係・代金の可分性
3 入会権に関する訴訟|共同訴訟形態|概要
入会権や入会団体に関係する訴訟がいくつかあります。
大雑把に言うと,請求内容は,団体と個人の両方の性質があります。
そこで訴訟形態の解釈はちょっと難しいことになります。
これについては別に説明しています。
詳しくはこちら|入会権・入会財産に関する訴訟|原告適格・訴訟形態
4 入会権|慣習・会則・公序良俗|概要
入会権については慣習が尊重されます。
自主的な判断・運営が重視されているのです。
しかし公序良俗に反する場合は無効になります。
このような問題については別に説明しています。
詳しくはこちら|入会団体の運用ルール(慣習・会則)と有効性(公序良俗違反)
5 入会権|共有者の時効取得×対抗関係|概要
入会団体の財産について取得時効が完成するケースがあります。
このケースでは『対抗関係』も絡んで複雑な問題が生じます。
これについては別に説明しています。
詳しくはこちら|入会団体の構成員×取得時効|対抗関係
6 明治初年・官民有区分処分→入会権存続
入会権に関するマイナーな解釈論を紹介します。
明治初期の行政手続と入会権の関係を判断した判例です。
<明治初年・官民有区分処分→入会権存続>
あ 明治初年・官民有区分処分|基本
土地甲が民有地に編入された
=所有権が確定した
い 入会権の存続
土地甲に入会慣行があった場合
→入会権は従前どおり存続する
う 官有地編入
官有地への編入の場合
→『い』と同様である
=入会権は従前どおり存続する
※最高裁昭和48年3月13日