【増減額請求権の強行法規性に関する4つの最高裁判例(要点)】
1 賃料改定特約と賃料増減額請求の関係(総論)
2 最高裁判例(借地借家法の適用のある借地)
3 最高裁判例(借地借家法の適用のある借家)
4 最高裁判例(借地法の適用のある借地)
5 最高裁判例(借家法の適用のある借家)
1 賃料改定特約と賃料増減額請求の関係(総論)
賃料改定特約と賃料増減額請求権の関係は複雑です。
詳しくはこちら|賃料に関する特約と賃料増減額請求権の関係(排除の有無と影響)
この関係性について判断した最高裁判例として代表的なものが4つあります。
本記事では,これらの判例の内容の要点をまとめます。
判決文の該当箇所の引用は別の記事で紹介しています。
詳しくはこちら|増減額請求権の強行法規性に関する4つの最高裁判例(引用)
2 最高裁判例(借地借家法の適用のある借地)
<最高裁判例(借地借家法の適用のある借地)>
あ 賃料増減額請求の強行法規性
借地借家法11条1項の規定は強行法規である
特約により適用を排除することはできない
→賃料増減額請求を行使できる
い 特約の有効性(参考)
特約の『有効/無効(失効)』は示していない
う 賃料改定特約の影響
特約の存在は当事者が当初の賃料額を決定する際の重要な要素となった事情である
→賃料増減額の当否・相当賃料額の判断において
重要な事情として十分に考慮する
※最高裁平成16年6月29日
3 最高裁判例(借地借家法の適用のある借家)
<最高裁判例(借地借家法の適用のある借家)>
あ 賃料増減額請求の強行法規性
借地借家法32条1項の規定は強行法規である
賃料自動増額特約により適用を排除することはできない
い 賃料増減額請求権の行使への影響
賃料自動増額特約が存するとしても,そのことにより直ちに賃料増減額請求権の行使が妨げられるものではない
う 特約の有効性(参考)
特約の『有効/無効(失効)』は示していない
え 賃料改定特約の影響
特約は,当事者が当初賃料額を決定する際の重要な要素となった事情である
→賃料減額請求の当否・相当賃料額の判断において
重要な事情として十分に考慮する
※最高裁平成15年10月21日
4 最高裁判例(借地法の適用のある借地)
<最高裁判例(借地法の適用のある借地)>
あ 特約の内容
新地代を公租公課の増加に応じて協議して決める
い 協議決裂
当事者間の協議が合意に至らなかった
う 裁判所の判断
賃料の増減請求権の規定は強行法規である
特約によって適用を排除することはできない
→賃料増減額請求を行使できる
※借地法12条1項
※最高裁昭和56年4月20日
5 最高裁判例(借家法の適用のある借家)
<最高裁判例(借家法の適用のある借家)>
賃料増減額請求は強行法規である
特約で排除することはできない
※借家法7条
※最高裁昭和31年5月15日