【瑕疵担保責任の期間制限の規定と特約の制限(まとめ)】
1 瑕疵担保責任の期間制限(総論)
瑕疵担保責任(契約不適合責任)には期間制限があります。
状況によって制限の内容が異なります。
本記事では、瑕疵担保責任のいろいろな期間制限について説明します。
2 一般的な売買の瑕疵担保責任の期間制限
まず、売買契約についての瑕疵担保責任の原則的な期間制限は、買主が瑕疵を知ってから1年間です。
後記の、他の期間制限が適用されない場合には、この原則が適用されるのです。
一般的な売買の瑕疵担保責任の期間制限
あ 前提事情
売主が不動産業者ではない
い 原則
買主が瑕疵を知ってから1年間
※民法570条、566条3項
う 特約
制限期間を合意することも可能である
合意する内容の制限はない
3 売主が宅建業者のケースの期間制限(概要)
売主が宅建業者である時は、特約で期間制限を短縮することが制限されます。
売主が宅建業者のケースの期間制限(概要)
あ 前提事情
売主が宅建業者である
『宅建業者が仲介をした』ケースは該当しない
い 原則
買主が瑕疵を知ってから1年間
※民法570条、566条3項
う 特約
期間制限を合意することが可能である
ただし次の制限がある
買主が瑕疵を知ってからの期間
1年間以上
引渡からの期間
2年間以上
※宅建業法40条
詳しくはこちら|売買の瑕疵担保責任の期間制限についての宅建業法の規定(『引渡し』の意味)
4 新築建物の売買の瑕疵担保期間制限(概要)
売買の対象が新築建物である場合は、一定の主要部分は、瑕疵担保責任の期間が10年となります。
平成12年から品確法により買主が保護されることになったのです。
新築建物の売買の瑕疵担保期間制限(概要)
あ 対象となる工事
住宅を新築する建設工事の請負契約
い 瑕疵の対象箇所
ア 構造耐力上主要な部分イ 雨水の侵入を防止する部分
う 瑕疵担保期間
引渡(え)から10年間
これより短い期間の特約は無効である
え 引渡の内容
売主が新築工事施工者であるケース
売主から買主への引渡
売主と新築工事施工者が異なるケース
工事施工者から売主への引渡
※品確法95条
お 適用される取引
瑕疵担保期間の制限(う)が適用される取引について
→平成12年4月1日以降に締結された売買契約
詳しくはこちら|住宅品確法による瑕疵担保責任の強化(基本構造部分は最低10年)
以上は売買に関する瑕疵担保責任の期間制限の説明でした。
以下、建築請負工事に関する瑕疵担保責任の期間制限について説明します。
5 一般的な建物建築請負の瑕疵担保期間制限
売買契約とは別に(建築建築)請負契約の瑕疵担保責任についても期間制限があります。請負の原則的な瑕疵担保責任の期間制限は、引渡から5年か10年です。建物の構造によって異なります。
一般的な建物建築請負の瑕疵担保期間制限
あ 対象となる工事
建物建築の請負
い 対象となる瑕疵
建物・地盤
う 瑕疵担保期間
建物の種類
瑕疵担保期間
(原則;※1)
引渡から5年間
石造・土造・れんが造・コンクリート造・金属造
引渡から10年間
※1 典型例=木造
※民法638条1項
え 特約の制限
制限期間を合意することも可能である
合意する内容の制限はない
お 実務における特約
『引渡から2年』という特約が多く使われている
例;不動産流通業界の統一売買契約書(後記※2)
6 売買契約の瑕疵担保条項の具体例
実際の売買では、瑕疵担保責任に関する条項があります。
法的には特約としての合意ということになります。
典型的な特約(条項)の内容を紹介します。
売買契約の瑕疵担保条項の具体例(※2)
引渡後2か月以内に発見されたものに限り、売主に修復義務がある
7 住宅の新築工事の瑕疵担保期間制限(概要)
住宅の新築工事については、瑕疵担保責任の期間が長くなります。
一定の主要部分は引渡から10年間となるのです。
これも品確法による発注者の保護の趣旨の規定です。
住宅の新築工事の瑕疵担保期間制限(概要)
あ 対象となる売買
新築住宅の売買契約
い 瑕疵の対象箇所
ア 構造耐力上主要な部分イ 雨水の侵入を防止する部分
う 瑕疵担保期間
引渡から10年間
これより短い期間の特約は無効である
※品確法94条
え 適用される取引
瑕疵担保期間の制限(う)が適用される取引について
→平成12年4月1日以降に締結された請負契約
詳しくはこちら|住宅品確法・住宅瑕疵担保履行法による消費者保護の強化
8 瑕疵担保の期間制限の法的性質
ここまで、瑕疵担保責任の期間制限の内容について説明しました。
最後に、期間制限の法的性質を説明します。
消滅時効ではなく除斥期間と解釈されています。
そこで、時効の中断や停止のような扱いは原則的にありません。
瑕疵担保の期間制限の法的性質
あ 法的性質
瑕疵担保責任の期間制限について
→『除斥期間』である
『消滅時効』ではない
※大判昭和10年11月9日;民法564条について
※最高裁平成13年2月22日;民法564条について
い 除斥期間の法的扱い(概要)
消滅時効の『中断・停止』に相当する扱いがない
詳しくはこちら|除斥期間の基本(消滅時効との比較・権利行使の内容・救済的判例)
本記事では、売買契約と請負契約による瑕疵担保責任の期間制限の基本的な内容を説明しました。
実際には、契約書の内容や個別的な事情によって期間制限に関する判断は違ってきます。
実際に売買や建築請負工事に関する瑕疵の問題に直面されている方は、みずほ中央法律事務所の弁護士による法律相談をご利用くださることをお勧めします。