【土地売買後の自動車通行不可の発覚による売買の解除(肯定裁判例)】
1 自動車が通行できる通路のない土地売買の解除(総論)
2 売買後の通行権がないことの発覚
3 通行権がない通路と瑕疵担保(解除肯定判断)
1 自動車が通行できる通路のない土地売買の解除(総論)
建物を建築する土地は公道から通路があることは必須条件です。
通路としては,自動車が通行できることが前提となることも多いです。
売買の後から,通路の通行権の不備が発覚すると買主は想定外の損失を受けます。
このような事情から,売買契約の解除が認められたケースがあります。
本記事では,このケースの裁判例を紹介します。
2 売買後の通行権がないことの発覚
売買契約の締結から,その後,通行権の不備が発覚する経緯をまとめます。
<売買後の通行権がないことの発覚>
あ 売買の当事者
売主A
売主の依頼した仲介業者B
買主C
Cは,保養施設建設用の敷地として土地甲を入手したかった
い 売買契約の経緯
土地甲の出入口の通路部分について
Cは『村道である』と説明した
A・Cは土地甲の売買契約を締結した
う 問題の発覚
通路部分は,実際には隣接地所有者Dの私道であった
DはCに対し,私道の通行を拒否した
CはAに対して瑕疵担保責任による契約解除を主張した
※東京高裁昭和53年9月21日
3 通行権がない通路と瑕疵担保(解除肯定判断)
前記事例について,裁判所は瑕疵があると判断しました。
その上で,担保責任としては最大の『契約解除』を認めました。
<通行権がない通路と瑕疵担保(解除肯定判断)>
あ 瑕疵の判断基準
Bは『出入口の通路が村道である』と説明した
→瑕疵の判断基準となる
※大判昭和8年1月14日
詳しくはこちら|『瑕疵』の意味・品質や性状の基準・種類(物理・法律・心理的)
い 瑕疵の判断結果
土地甲には,ただちに利用できる出入口の道路がない
→瑕疵にあたる
う 目的達成の可否
県道と土地甲の間に道路が必要である
少なくとも自動車1台の通行を可能とする程度を要する
→現状ではこれが不能である
→売買の目的を達することができない
え 解除の効力
解除を認める
→手付金の返還請求を認める
※東京高裁昭和53年9月21日