【借地上の建物の再築許可の裁判の効果(解約回避・期間延長)】
1 再築許可(認容決定)の効果(総論)
借地借家法では、初回の更新後(第2ラウンド)における建物の再築について、裁判所が許可する手続があります。
詳しくはこちら|借地上の建物の再築許可の裁判制度の基本(趣旨・新旧法の違い)
裁判所が再築を許可すると、地主の承諾があったものとみなされます。
これ自体は当然ですが、法律的な細かい点の解釈があります。
本記事では、再築許可の効果について説明します。
2 再築許可の効果(全体)
再築許可は地主の承諾と同じ扱いとなります。
その内容としては、地主が解約できないことと、借地期間の延長の2つがあります。
再築許可の効果(全体)
あ 再築許可の基本的効果
再築許可(認容決定)について
→再築について地主の承諾があったものとみなされる
※借地借家法18条1項
具体的な内容は『い・う』がある
い 地主の解約権の否定
地主は再築を理由とする解約ができなくなる
※借地借家法8条2項
う 借地期間延長
借地期間の延長が適用される
※借地借家法7条1項
3 再築許可と借地期間の延長
再築許可によって借地期間の延長の規定が適用されます(前記)。
いわゆる法定期間が適用されるのです。
しかし、裁判所の判断によって、付随的裁判として、法定期間とは異なる期間を設定することもできます。
再築許可と借地期間の延長
あ 原則(法定期間)
再築許可(認容決定)によって
借地期間は次のように延長される
新たな期間=裁判があった日から20年間(法定期間)
※借地借家法7条1項
詳しくはこちら|借地借家法における承諾のある建物再築による期間延長
い 付随的裁判
裁判所は付随的裁判で法定期間(あ)とは異なる期間を設定できる
詳しくはこちら|借地借家法(新法)における更新後の建物再築の承諾料相場(再築許可の財産上の給付)
※借地借家法18条1項
※稲本洋之助ほか『コンメンタール借地借家法 第2版』日本評論社2003年p130
4 増改築許可との比較
再築ではなく、増改築を裁判所が許可する手続もあります。
再築許可と増改築許可は似ているように感じますが、許可の効果には違いがあります。
増改築許可には期間延長の効果がないのです。
再築許可には期間延長の効果があります(前記)。
間違えやすいのでまとめておきます。
増改築許可との比較
あ 増改築許可と期間延長(参考)
増改築許可は増改築禁止特約の排除が趣旨である
増改築許可(認容決定)によって
地主の異議権(法律上の規定)は喪失しない
=期間延長が適用されるわけではない
付随的裁判としても実務では期間の延長をしていない
詳しくはこちら|借地上の建物の増改築許可と付随的裁判の内容と法的効果
い 再築許可と期間延長
再築許可は再築による解約(法律上の規定)の排除が趣旨である
※借地借家法8条2項
再築許可(認容決定)によって
期間延長(法律上の規定)も原則として適用される
※借地借家法7条2項