【借地非訟の裁判の制度の全体像(変遷・趣旨・性質)】

1 借地非訟の制度の全体像(総論)
2 借地非訟手続の機能と趣旨
3 借地非訟手続の種類(概要)
4 借地非訟手続の変遷
5 借地非訟手続の性質
6 借地非訟の共通の手続のルール(概要)

1 借地非訟の制度の全体像(総論)

借地では,借地人が建物を建て,自ら居住するか第三者に建物を賃貸します。
こうして土地や建物が活用されるのです。
この点,地主の承諾が得られないために借地人が建物を活用できなくなることがあります。
不動産の活用が実際にストップしてしまうと非常に不経済です。
住宅供給という意味では,当事者だけでなく,社会にとっても不利益と言えます。
そこで,裁判所が地主に代わって許可を出す,という制度があります。
いくつかの種類の手続があります。総称して借地非訟手続と呼んでいます。
訴訟とは違う概念です。
本記事では借地非訟の制度の全体的な説明をします。

2 借地非訟手続の機能と趣旨

借地非訟の制度の本質的な機能は,裁判所の判断によって地主の承諾を不要とすることです。
不動産の利用の公益性も制度の根本的な趣旨となっています。

<借地非訟制度の機能と趣旨>

あ 借地非訟の本質的機能

本来,地主が承諾・同意することについて
→裁判所が代わって許可(決定)する

い 借地非訟の趣旨や意義

不動産利用の効率化を図る
→社会経済向上に貢献する

3 借地非訟手続の種類(概要)

借地非訟の手続のうち主なものは4種類あります。
さらに,介入権の行使による手続もあります。

<借地非訟手続の種類(概要)>

あ 建物に関する借地条件の変更
い 借地上の建物の増改築の許可
う 借地上の建物の再築の許可
え 借地権の譲渡・転貸の許可
お 介入権(地主の借地権譲受許可)

詳しくはこちら|4種類の借地非訟(裁判所の許可)手続(新旧法全体)

4 借地非訟手続の変遷

借地非訟の制度は,昭和41年以前はありませんでした。
地主の承諾が得られない限り,増改築などの工事が特約違反となるという困った状況が生じました。
そこで借地非訟の制度が創設されたのです。

<借地非訟手続の変遷>

あ 手続の創設

昭和41年
借地法の一部改正がなされた
借地非訟手続が創設された

い 借地借家法の制定

借地借家法が制定された
平成4年に施行された
借地非訟手続は踏襲された

なお,借地条件変更の裁判の内容は時代とともに拡大されてきました。
詳しくはこちら|借地条件変更の裁判制度の意義と時代変化に伴う変遷

5 借地非訟手続の性質

借地非訟の制度の性質は文字どおり訴訟とは違います。
非訟訴訟ではないという意味なのです。
とはいっても,裁判所が調査して判断するという意味では裁判の一種です。
特徴をひとことで言うと,裁判所の裁量が大きいということになります。

<借地非訟手続の性質>

あ 借地非訟の性質

裁判所の裁量的判断により,権利義務の具体的内容の形成を目的とする事件
実体法上の権利・義務の存否の判断ではない
※最高裁判所昭和40年6月30日

い 裁量的判断の例

建物の増改築を許すことが適切かどうか
承諾料(財産上の給付)の金額はいくらが適切か

う 訴訟の性質(比較)

実体法上の権利・義務の存否の判断をする
例;借地権が存在するか否かを判断する

6 借地非訟の共通の手続のルール(概要)

借地非訟は訴訟とは違う性質があります(前記)。
そこで,手続も訴訟とは異なる特殊なものがいろいろとあります。
借地非訟のすべてに共通する手続のルールについては,別の記事で説明しています。
詳しくはこちら|借地非訟の裁判に共通する手続のルール

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