【賃借人の犯罪や逮捕・捜索による解除特約は有効となることもある】
1 賃借人の犯罪や逮捕・捜索による解除の特約の有効性
2 逮捕・捜索による解除特約は有効となることもある
3 逮捕・捜索によるイメージ悪化の実例(国策捜査LD)
4 危険ドラッグ所持による解除特約の推奨
1 賃借人の犯罪や逮捕・捜索による解除の特約の有効性
不動産の賃貸借契約では通常『契約終了・解除』に関する条項(特約)があります。
このような解除の特約にはいろいろな種類のものがあります。
詳しくはこちら|不動産の賃貸借における禁止事項の特約と違反による解除・解約の有効性
その1つとして,賃借人による犯罪行為や賃借人が逮捕や捜索を受けたことを解除の事由とするものがあります。
本記事では,このような賃借人による犯罪行為に関連する解除の特約の有効性について説明します。
2 逮捕・捜索による解除特約は有効となることもある
警察・検察による逮捕・捜索を解除の理由とする特約もあります。
このような特約の有効性に関する解釈論をまとめます。
<逮捕・捜索による解除特約の解釈の傾向>
あ 物件と関係ない逮捕・捜索
賃借人の『信用』が失墜する考えもある
しかし刑事訴訟での有罪判決確定までは無罪が推定される
→解除の合理性が少ない
→無効となる傾向がある
※憲法31条,刑事訴訟法336条
い 物件における逮捕・捜索
対象物件での逮捕・捜索があった場合
→規模によっては大きな騒動となる
例;マスコミの取材・報道
→対象物件・同一建物全体のイメージが低下する
→オーナー・他の入居者が損失を受ける
→解除の合理性がある
→有効となる場合もある
3 逮捕・捜索によるイメージ悪化の実例(国策捜査LD)
逮捕・捜索での『オーナーの被害』としての代表例があります。
<逮捕・捜索によるイメージ悪化の実例(国策捜査LD)>
あ 事案
平成18年
東京地検特捜部が株式会社ライブドア本社の捜索・差押を行った
ライブドア本社は六本木ヒルズのテナントであった
い 世間的イメージ
六本木ヒルズについてネガティブなイメージが広まった
賃貸物件としての価値が下がったとも思える
なお『国策捜査』という性格があるがこちらは広まっていない
う 用語;注意
マスコミ用語では『家宅捜索』とされている
法的・正式には『捜索・差押(処分)』である
4 危険ドラッグ所持による解除特約の推奨
『危険ドラッグ』が社会的な問題・話題となっています。
これを賃貸借契約の特約に盛り込むケースも普及しつつあります。
不動産賃貸の業界団体がこのような特約の活用を推奨しています。
<危険ドラッグ所持による解除特約の推奨>
あ 推奨する業界団体
都宅地建物取引業協会豊島区支部
全日本不動産協会豊島文京支部
い 推奨の対象
次の特約を設定することを会員に推奨している
う 推奨する特約
『ア・イ』に該当する場合,契約を解除できる
ア 『危険ドラッグ』を所持した・持ち込んだイ 販売・自己使用の目的である
吸引・注射接種など
え 特約の有効性
この推奨の中では有効性については触れられていない
当然,具体的特約の内容によって有効性の判断が決まることになる
※平成26年10月21日各社報道・豊島区HP