【法定地上権の所有者要件(設定時に土地・建物が同一所有)の解釈論】

1 法定地上権の所有者要件
2 所有権登記の要否
3 身分関係と所有者の同一性

1 法定地上権の所有者要件

法定地上権の成立要件の中の1つに所有者要件があります。
抵当権設定の時点で土地と建物の所有者が同一である,という要件です。
詳しくはこちら|法定地上権の成立要件には物理的要件や所有者要件がある
本記事では,所有者要件に関する細かい解釈論を説明します。

2 所有権登記の要否

所有者要件の内容は,現実の所有者(所有権の帰属)で判断します。
そこで,登記があるかどうかは関係ありません。

<所有権登記の要否>

あ 所有者要件の基本

所有者要件について
実体法上,土地・建物の所有者が同一であれば足りる

い 登記の要否

所有権取得の登記は要件ではない
→建物は未登記でもよい
※最高裁昭和48年9月18日

3 身分関係と所有者の同一性

実際に,節税目的やその他の事情によって,土地と建物の所有者が同一ではないが近親者同士であるということはよくあります。
常識的には,同居している親子であれば実質的に同一所有者といえるようにも思えます。
しかし,法定地上権の趣旨は(同一所有者だと)敷地利用権の設定ができないことに起因しています。
親子のような近親者でも(同一所有者ではないので)敷地利用権の設定は可能です。実際に賃貸借契約が締結されているケースはよくあります。
そこで,近親者であっても同一の所有者ではないと形式的に判断します。

<身分関係と所有者の同一性>

あ 前提事情

土地と建物の所有者に特定の身分関係がある
例=親子・兄弟姉妹・夫婦の関係

い 敷地利用権設定の可否(実質面)

土地と建物の所有者は異なる人である
→敷地利用権の設定は可能である
→法定地上権の趣旨に合致しない
詳しくはこちら|法定地上権の制度趣旨

う 法定地上権の成否

所有者要件を満たさない
→法定地上権の成立は否定される
※最高裁昭和51年10月8日

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【法定地上権の物理的要件(設定時に建物が存在すること)の解釈論】
【法定地上権の成立する範囲には庭や通路も含まれる】

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