【住宅品確法による住宅性能表示制度(内容と問題点・注意点)】
1 住宅品確法による住宅性能表示制度
2 住宅性能表示制度の主な内容
3 住宅性能表示制度の問題点・注意点
4 住宅性能評価の対象事項と含まれない事項
1 住宅品確法による住宅性能表示制度
平成12年から住宅品確法が施行され,新築住宅の建設・売買について住宅取得者(施主・買主)の保護が強化されています。
詳しくはこちら|住宅品確法の全体像(『新築住宅』の定義・3つの制度)
住宅品確法の制度の1つに,住宅性能表示制度があります。
新築住宅の性能の表示のフォーマットを定めて,住宅の取得者がクオリティを理解しやすくするというものです。
本記事では,住宅品確法による住宅性能表示制度について説明します。
2 住宅性能表示制度の主な内容
住宅性能表示制度は,文字どおり新築住宅の性能を分かりやすく表示するものです。第三者機関が評価することでより正確性を高めています。
<住宅性能表示制度の主な内容>
あ 概要
ア 住宅の性能評価・表示について一定の基準を設定したイ 住宅性能評価を行う第三者機関を設置(整備)するウ 住宅性能評価書に表示された内容は契約内容となる
契約書に住宅性能評価書(写し)を添付した場合などのことである
住宅性能評価書の表示は義務ではない=任意の制度である
※品確法6条
い 効果・メリット
ア 一般消費者でも『住宅の品質』を把握・相互比較が可能となるイ 消費者(購入者)の保護になる
このようなメリットの実現を狙いとして導入された制度です。
しかし,次のような問題点があるので注意が必要です。
3 住宅性能表示制度の問題点・注意点
住宅性能表示は必ず実施(表示)するものではありません。
任意の制度なので,実際に,性能表示をしない売買契約や請負契約も多くあります。
また実施(表示)するとしても,重要な箇所がすべて含まれているわけではありません。
<住宅性能表示制度の問題点・注意点>
あ 任意の実施
住宅性能評価を行う義務はない
→行う・行わない,は自由となっている
い 対象項目から重要事項が欠落している
付加的な事項が性能表示の中心となっている
事後的に住宅の瑕疵などとして深刻な問題となる項目が評価対象に含まれていない(後記※1)
使用部材は対象であるが,施工は対象となっていない
う 特約で契約内容化を排除可能
契約書の条項で『住宅性能評価書を契約内容とはしない』と規定することが可能である
※品確法6条4項
4 住宅性能評価の対象事項と含まれない事項
住宅性能評価の対象となっている事項は,省エネ性能と高齢者への配慮に関する事項です。
構造や施工に関する事項は対象外となっています。
<住宅性能評価の対象事項と含まれない事項(※1)>
あ 評価対象とされている主な事項
ア 省エネ性能イ 高齢者への配慮
い 評価対象に含まれない重要事項
ア 構造品質イ 施工水準
結局,住宅性能表示制度は,住宅取得者の理解不足によるトラブル(後から想定外のことが発覚する)を回避・予防する機能として十分ではありません。
決定打に欠ける制度といえるでしょう。
本記事では,住宅品確法による住宅性能表示制度を説明しました。
前記のように,住宅性能評価書の交付は任意ですし,交付した場合でも,住宅の購入や建築の後に想定外のことが発覚してトラブルとなるケースは多いです。
実際に建物の瑕疵の問題に直面されている方は,みずほ中央法律事務所の弁護士による法律相談をご利用くださることをお勧めします。