【暴利行為の客観的要素(売買の代金額や違約金)の判断基準】
1 暴利行為の客観的要素の判断基準
2 客観的要素(要件)の判断基準(全体)
3 低い金額で財産を得るタイプの暴利の目安
4 高い金額で財産を売るタイプの暴利の目安
5 高い違約金・損害賠償の予定による暴利の目安
1 暴利行為の客観的要素の判断基準
売買などの契約の当事者が暴利を得るものである場合は,公序良俗違反として,契約や特約が無効となることがあります。
詳しくはこちら|売買の代金額や違約金が不当だと無効となる(暴利行為の判断基準)
本記事では,暴利行為の中の客観的要素の判断基準について説明します。
つまり,金額的に標準的な金額からどの程度ずれいていると無効になるのか,という基準のことです。
2 客観的要素(要件)の判断基準(全体)
暴利行為の判断の中の客観的要素については明確な判断基準がありません。
つまり,どの程度の利益の大きさであれば暴利行為として扱うかがハッキリとは決まっていないのです。
<客観的要素(要件)の判断基準(全体)>
どの程度の利得があれば著しく過当な利益に当たるのか
→明確な基準はない
客観的要素の判断基準については,多くの裁判例の蓄積である程度の目安はあります。
以下,暴利行為のタイプ別に判断の目安を説明します。
3 低い金額で財産を得るタイプの暴利の目安
安い金額で財産を取り上げるようなケースを考えます。暴利行為として無効となる金額的な基準は,本来の金額(評価額)の3分の1〜4分の1までディスカウントした金額が目安となります。
もちろん,他の事情(主観的要素)によっては,金額的な判断基準は大きく違ってきます。
<低い金額で財産を得るタイプの暴利の目安>
あ 契約の種類
ア 売買イ 代物弁済ウ 質権設定(質入れ)
い 3分の1〜4分の1の目安
代物弁済予約が公序良俗違反に該当する基準について
目的物の価格が債務の3〜4倍となるところが境界になるという見方があった
=3分の1〜4分の1の対価で目的物を取得する
※武田直大稿『暴利行為』/『別冊ジュリスト223号 民法判例百選Ⅰ 総則・物権 第7版』有斐閣2015年1月p33
う 6割の目安
適正価格の6割程度の代金での不動産売却を無効とした裁判例もある
個別的な事情が大きく影響している
※大阪高裁平成21年8月25日
詳しくはこちら|異常な売買代金の金額による暴利行為の裁判例(無効・有効)
4 高い金額で財産を売るタイプの暴利の目安
高い金額で売りつけるタイプの暴利行為について考えます。個別的事情によって大きくぶれますが,入手額の5倍で売りつけたケースでこの契約(と入手した競売)を無効とする裁判例があります。
<高い金額で財産を売るタイプの暴利の目安>
あ 契約の種類
主に売買契約である
い 5倍の目安
入手額の5倍で転売した契約を無効とした裁判例がある
※青森地裁五所川原支部昭和38年12月23日
詳しくはこちら|異常な売買代金の金額による暴利行為の裁判例(無効・有効)
5 高い違約金・損害賠償の予定による暴利の目安
売買契約の違約金(や損害賠償の予定)の特約として異常な金額が設定されるタイプの暴利行為を考えます。
売買代金の30%が,有効と無効を分ける境界の目安といえます。
<高い違約金・損害賠償の予定による暴利の目安>
あ 暴利の態様
売買契約に違約金or損害賠償の予定の特約が付けられる
違約金or損害賠償の予定の内容(金額)が不当に高い
い 30%の目安
売買価格の30%が公序良俗違反となる目安となる
詳しくはこちら|異常に高額な違約金による暴利行為の裁判例(無効・有効)
本記事では,暴利行為として契約が無効となる理論の基本的な内容や判断基準について説明しました。
実際には,個別的な細かい事情の主張・立証の仕方によって判断が違ってきます。
実際に暴利目的の不当な内容の契約の問題に直面されている方は,みずほ中央法律事務所の弁護士による法律相談をご利用くださることをお勧めします。