【建物賃貸借の相当賃料算定における差額配分法と賃貸事例比較法】
1 建物賃貸借の相当賃料算定における差額配分法と賃貸事例比較法
2 差額配分法の基本的な考え方(概要)
3 配分率の特徴と傾向
4 賃貸事例比較法の基本的な考え方(概要)
5 類似事例の賃料との差額の調整の例
1 建物賃貸借の相当賃料算定における差額配分法と賃貸事例比較法
相当な賃料の算定手法の中に差額配分法と賃貸事例比較法があります。一般的な(主に借地についての)差額配分法と賃貸事例比較法については別の記事で説明しています。
詳しくはこちら|差額配分法の基本(考え方と算定式)
詳しくはこちら|賃貸事例比較法の基本(個別事情による修正や不採用)
本記事では,差額配分法と賃貸事例比較法による算定の中で,建物の賃貸借に特有の算定方法について説明します。
2 差額配分法の基本的な考え方(概要)
差額配分法を大雑把にいうと,適正な新規賃料と対象となる賃貸借の賃料の間のどこかを適正な改定賃料とする,というものです。
<差額配分法の基本的な考え方(概要)>
適正な新規賃料と従前賃料との差額部分を貸主・借主に配分する
詳しくはこちら|差額配分法の基本(考え方と算定式)
3 配分率の特徴と傾向
差額配分法で用いる配分率については,純粋な理論から一義的に定まるというものではありません。借主の負担割合を2分の1,3分の1とする方法が代表的です。しかし,2つの選択肢だけしかないというわけではありません。実際に個別的事情からこれ以外の割合で分配した裁判例もあります。
<配分率の特徴と傾向>
あ 理論の欠如(概要)
理論的に合理的な配分率は存在しない
い 代表的な配分率(概要)
折半法・3分の1法(借主が3分の1を負担)が代表的である
詳しくはこちら|差額配分法の配分率の基本(理論と代表的/マイナーな配分率)
う 実例
建物賃貸借の継続賃料について
適正な新規賃料と従前賃料との差額部分の60%相当額を貸主に配分した
=借主が40%を負担する
※東京地裁昭和54年10月23日
4 賃貸事例比較法の基本的な考え方(概要)
次に,賃貸事例比較法について説明します。
まず,大雑把にいうと,他の賃貸借契約の賃料を参考にするというものです。とてもシンプルです。
<賃貸事例比較法の基本的な考え方(概要)>
対象不動産と類似の賃貸借契約の事例の内容を参考にする(参照する)
詳しくはこちら|賃貸事例比較法の基本(個別事情による修正や不採用)
5 類似事例の賃料との差額の調整の例
賃貸事例比較法による算定では,比較する他の事例の賃料をそのまま適正な改定賃料として用いるわけではありません。そもそも比較対象として採用しない,ということもありますし,採用するとしてもいろいろな修正を行います。
詳しくはこちら|賃貸事例比較法の基本(個別事情による修正や不採用)
商業ビルの(建物)賃貸借のケースで,商店街として賑わった事情(理由)を考慮して相当賃料の算定に反映させた裁判例があります。差額配分法の手法を取り入れたともいえます。
詳しくはこちら|差額配分法の基本(考え方と算定式)
<類似事例の賃料との差額の調整の例>
あ 鑑定における意見
比較方式による比準賃料と従来の実質賃料との差額について
鑑定では,折半にするという意見が付されていた
い 裁判所の判断
借主の営業が貸主所有の建物(ビル)の利用価値の高騰に寄与した
貸主30%,借主70%という配分にした
※東京地裁昭和51年8月16日
本記事では,差額配分法と賃貸事例比較法による建物賃貸借の相当賃料の算定について説明しました。
実際には,個別的な事情や主張・立証のやり方次第で結論が違ってきます。
実際に建物賃貸借の賃料の金額に関する問題に直面されている方は,みずほ中央法律事務所の弁護士による法律相談をご利用くださることをお勧めします。