【賃貸建物の明渡料についての所得税の課税(所得の分類)】
1 賃貸建物の明渡料についての所得税の課税
賃貸中の建物の明渡(賃貸借契約の終了)の際、明渡料(立退料)が支払われるケースが多いです。
明渡料が支払われると、税務上は明渡料を受け取った賃借人の所得として扱われます。明渡料にはいろいろな実質的な意味が含まれます。
詳しくはこちら|賃貸建物の明渡料の金額の基本(考慮する事情・交渉での相場)
明渡料の性質によって税務上の所得の分類(所得税の種類)が異なります。
本記事では、建物の明渡料についての所得税の課税について説明します。
2 借家権の対価についての不動産譲渡所得税
最初に、明渡料を受け取った者が個人(法人以外)という前提で説明します。明渡料は所得になりますが、その性質によって、3種類の分類に分かれます。つまり、正しく振り分けた上で確定申告を行う必要があるのです。
明渡料の実質的な内容(性質)のうちひとつは、居住できる利益という意味で、借家権の対価という性質です。最も一般的な性質といえます。
この性質の明渡料を受領した場合には、不動産譲渡所得税の課税対象となります。
借家権の対価についての不動産譲渡所得税
つまり、借家権を譲渡したと考える
→不動産の譲渡所得に該当する
→不動産譲渡所得税が生じる
※所基通33-6、34-1(7)
3 移転費用補償についての一時所得
明渡料には移転費用(の補償)が含まれることがあります。移転費用という性質の明渡料については、一時所得に分類されます。
移転費用補償についての一時所得
この転居に要する実費(移転費用の補償)が明渡料に含まれることがある
→所得税の分類上、一時所得として扱われる
※所基通33-6、34-1(7)
4 営業補償(収益補償)についての事業所得
営業用建物の賃貸借における明渡料には、通常、営業補償が含まれます。明渡料のうち営業補償の性質の部分については、事業所得に分類されます。
営業補償(収益補償)についての事業所得
→移転に伴う休業期間は収入が途絶える
→利益の減少分を補う金銭(営業補償)が明渡料に含まれることがある
→営業保証は、事業(営業)活動による利益に代わるものである
→所得税の分類上、事業所得として扱われる
※所基通33-6、34-1(7)
5 法人が得た明渡料についての法人税
以上は、個人が明渡料を受領したことを前提としていました。この点、法人が明渡料を受領した場合、以上のような細かい(所得の)分類は出てきません。一律に法人税の課税対象となります。
本記事では、建物の明渡料の受領によって生じる所得税の課税について説明しました。
実際には、個別的な事情や主張・立証のやり方次第で結論が違ってきます。
実際に建物賃貸借の明渡料に関する問題に直面されている方は、みずほ中央法律事務所の弁護士による法律相談をご利用くださることをお勧めします。