【建物の建築工事の欠陥・瑕疵についての法的責任の種類】
1 建物建築請負における欠陥・瑕疵についての法的責任の種類
建物建築工事が終わった後で、欠陥(瑕疵)が発覚するケースはよくあります。
法的な責任として発生するのは主に3種類のものがあります。
本記事では、建物の建築請負に関して生じる3種類の責任について説明します。
2 建物建築請負のトラブルの解決の典型例
建物建築工事に不備があったトラブルの典型例と、その法的な解決の方向性をまとめます。
建物建築請負のトラブルの解決の典型例
あ 建築請負のトラブルの具体例
住居の新築工事を依頼した
引渡を受けてから家が傾いていることが分かった
基礎部分に手抜き工事があったと思われる
詳しくはこちら|不動産売買・建築請負における欠陥の典型例
い 解決の大きな方向性
施工業者・監理者・設計者の責任が発生している可能性がある
→修補や損害賠償請求をする
3 建物建築請負における欠陥・不備の法的責任の種類
建物の建築工事に不備があった場合に生じる可能性がある責任は瑕疵担保責任・不法行為責任・債務不履行責任の3つに分けられます。いずれの責任の内容も損害賠償は共通します。瑕疵担保責任だけ修補請求も含まれます。
建物建築請負における欠陥・不備の法的責任の種類
瑕疵担保責任が発生する要件や効果についての詳しい内容は別の記事で説明しています。
詳しくはこちら|売買・請負の契約不適合責任(瑕疵担保責任)の全体像
不法行為責任についての詳しい内容は別の記事で説明しています。(賠償)責任が発生する原因となる欠陥の範囲が、瑕疵担保責任とは違います。
詳しくはこちら|建物の建築工事の欠陥・瑕疵による不法行為責任
債務不履行責任は、仕事の完成前にだけ発生します。これについても別の記事で説明しています。
詳しくはこちら|建物の建築工事の瑕疵による債務不履行責任(否定方向)
4 責任の期間制限(概要)
請負に関する責任には前記のようにいくつかの種類のものがあります。それぞれの責任は当然、内容に違いがあります。
違いのうち1つは期間制限です。各種類の責任の期間制限については別の記事で説明しています。
詳しくはこちら|売買・請負に関する責任の期間制限と実務的な選択
5 3種類の責任の関係
前記の3種類の法的責任は、理論的には独立しています。複数の種類の責任が同時に発生することもあります。その場合、被害者(注文者)としてはいずれの責任を追及する(請求する)ことができます。
もちろん、損害をダブルカウント(2倍の金額の請求)できるというわけではありません。
3種類の責任の関係
あ 債務不履行責任が適用される時期
債務不履行責任が生じるのは工事が完了(最終工程に達する)前に限られる
詳しくはこちら|売買・請負に関する責任の期間制限と実務的な選択
い 瑕疵担保責任と不法行為責任との競合
瑕疵担保責任と不法行為責任の請求権競合を認める
※多くの判例
※松本克美ほか編『専門訴訟講座2 建築訴訟 第2版』民事法研究会2013年p317
6 建物建築請負に関する法的責任を負う者
建築工事の不備による法的責任を負うのは基本的には施工業者(請負人)です。しかし、建築工事に関わる者は施工業者に限りません。他にも設計や監理の業務を行う者も存在します。設計や監理を行った者の行為に不当なところがあった場合、これらの者も責任を負うことがあります。
建物建築請負に関する法的責任を負う者
→施工業者・設計・監理者
建物の建築への関わり方によって決まる
7 責任の追及(賠償請求)ができる者
建築工事の不備について責任の追及(損害賠償の請求)をすることができるのは、基本的には注文者です。しかし、不法行為責任については注文者に限定されません。建物の完成後に目的物(不動産)を購入した者や入居した者なども責任を追及(損害賠償を請求)できることがあります。
責任の追及(賠償請求)ができる者
あ 基本
瑕疵担保責任・不法行為責任・債務不履行責任について
建物建築工事の注文者(施主)が責任を追及できる
い 不法行為の損害賠償の請求者
不法行為による損害賠償を請求する者について
→建築工事の注文者に限定されない
中古建物の購入者やそれ以外の者も請求できることがある
詳しくはこちら|建物の建築工事の欠陥・瑕疵による不法行為責任
本記事では、建築工事(請負契約)に関する責任の種類を説明しました。
実際には、個別的な事情や主張・立証のやり方次第で結論が違ってくることもあります。
実際に建築工事(請負契約)に関する問題に直面されている方は、みずほ中央法律事務所の弁護士による法律相談をご利用くださることをお勧めします。