【建物の建築工事の契約不適合責任の内容(請求できる内容)】

1 建物の建築工事の契約不適合責任の内容

建物の建築工事に欠陥があった場合、請負人の契約不適合責任(瑕疵担保責任)が発生します。
詳しくはこちら|建物の建築工事の瑕疵の種類と判断基準(仕様や性能の基準)
この瑕疵担保責任の内容には3つの種類のもの(請求できること)があります。
本記事では、建物の建築工事の瑕疵担保責任の内容を説明します。

2 一般的な請負の瑕疵担保責任の内容(概要)

まず、建物の建築工事に限らず、一般的な請負契約における瑕疵担保責任の内容を押さえます。民法上、修補請求・損害賠償請求・解除の3つが規定されています。
ただし、建物建築工事については解除は適用されません。

一般的な請負の瑕疵担保責任の内容(概要)

あ 修補請求

請負人が修繕する
※民法634条1項

い 損害賠償請求

本来の使用ができなかったことによる損害の賠償
例=修理に要する費用相当額
※民法634条2項
信頼利益と履行利益の両方を含む

う 解除

建物建築の請負契約は解除できない
※民法635条ただし書
詳しくはこちら|売買・請負の契約不適合責任(瑕疵担保責任)の全体像

3 修補請求権と損害賠償請求権の関係

前記のように、建物の建築工事の請負に関する瑕疵担保責任の内容は修補請求と損害賠償請求の2つということになります。
注文者(施主)は、修補の請求をしてもよいし、修補してもらわないけれどその分の費用(損害賠償)を請求するということもできます。

修補請求権と損害賠償請求権の関係

修補請求権修補に代わる損害賠償請求権は、自由に選択することができる
※最高裁昭和52年2月28日
※最高裁昭和54年3月20日

4 過剰工事を要するケースの扱い

瑕疵自体は軽微であっても、これを是正するためには大掛かりな工事が必要になるというケースもあります。つまり、過分の費用を要する状況です。この場合は、修補を請求することも、修補に要する費用の賠償請求をすることもできません。
価値が下がった分の金額の賠償請求だけができることになります。

過剰工事を要するケースの扱い

あ 修補の否定

重要な瑕疵ではないのに、その修補に過分の費用を要する場合
→修補請求はできない
※民法634条1項ただし書

い 損害賠償請求

『あ』の場合、損害賠償を請求できるにとどまる

う 損害額の算定

『い』の損害賠償請求における損害額について
過分の費用を要する工事費用相当額ではない
瑕疵があるために生じた交換価値の低下に相当する額である
※民法634条1項類推
※最高裁昭和58年1月20日

5 修補の内容(賠償額の算定)

修補請求をした場合、請負人はどのような是正工事をするのか、ということが問題となることもあります。工事のやり直しをすれば、本来の状態を100%実現することができるので理想です。しかし、このような請求が認められるとは限りません。
例えば強度不足であれば、補強工事で済ませる(ことしか請求できない)ということもあります。必要な強度を持たせるという目的に達する方法のうち最も安価な工事しか請求できないのです。
修補に代わる損害賠償の金額を算定する場合に想定する工事も同じ考え方です。

修補の内容(賠償額の算定)

あ 損害の算定

損害額の算定の前提となる修補の内容は
当初予定していた工事内容と同程度に達するような修補、欠陥の除去である
工事のやり直しを意味するものではない

い 躯体の強度不足の例

躯体に所定の強度が確保されていなかった場合
→補強工事を求めることができるにとどまる

う 複数の工法がある場合の算定

同じ目的を達するために、いくつかの工事方法をとりうる場合には、最も安価な工事費用額の限度で賠償を請求できるにとどまる
※松本克美ほか編『専門訴訟講座2 建築訴訟 第2版』民事法研究会2013年p324、325

本記事では、建物の建築工事の瑕疵担保責任の内容を説明しました。
実際には個別的な事情や主張・立証のやり方次第で結論は違ってきます。
実際に建物建築の瑕疵の問題に直面されている方は、みずほ中央法律事務所の弁護士による法律相談をご利用くださることをお勧めします。

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