【形式的形成訴訟(共有物分割)と権利濫用による請求棄却の理論的関係】
1 形式的形成訴訟(共有物分割)と権利濫用による請求棄却の理論的関係
共有物分割訴訟が権利の濫用として請求棄却となるケースがあります。
詳しくはこちら|共有物分割訴訟における権利濫用・信義則違反・訴えの利益なし(基本・理論)
ところで、共有物分割請求は形式的形成訴訟にあたると一般的に解釈されています。
詳しくはこちら|共有物分割訴訟の性質(形式的形成訴訟・処分権主義・弁論主義)
この形式的形成訴訟は、請求棄却と結びつきにくい性質があります。本記事ではこのような理論的問題点を説明します。
2 形式的形成訴訟の性質と請求棄却の不整合
一般的に、形式的形成訴訟は、裁判所が請求棄却とすることはできない性質を持っているはずです。もちろん個別的事情により例外的扱いをすることを否定することはできませんが、理論的には請求棄却とは整合しない、といえます。
形式的形成訴訟の性質と請求棄却の不整合
ところが、権利濫用での否定の場合も、実体的判断に基づく共有物分割請求権の行使の効果の否定として、いわばその不存在として請求棄却の判決がされる。
否定されるべきであるということは大きな意味を有する。
従来の一般的説明では、形式的形成訴訟においてはそのような処理判断は理論的には説明しにくい結論なのだということとである。
※奈良次郎稿『共有物分割訴訟をめぐる若干の問題点』/『判例タイムズ879号』1995年8月p68
3 共有物分割訴訟の形式的形成訴訟という性質の再考(概要)
前述のように、形式的形成訴訟という性質を前提とすると、請求棄却は否定されることになるのですが、ここで、前提部分の形式的形成訴訟という性質に疑問が指摘されています。少なくとも現在では形式的形成訴訟であるとは言えないのではないか、という指摘です。これについては別の記事で説明しています。
詳しくはこちら|共有物分割訴訟における当事者の希望の位置づけ(希望なしの分割方法の選択の可否)
本記事では、共有物分割訴訟が持つとされる形式的形成訴訟の性質と請求棄却との理論的な関係について説明しました。
実際の事案では、個別的な事情によって、法的判断や最適な対応方法が違ってきます。
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