【隣の土地との境界問題!越境時の法律的対応とは?】

1 越境問題が発生する背景

土地の問題の1つとして「越境」があります。越境とは、ある土地の境界を越えて、隣接する土地に建物や工作物の一部が侵入することです。
通常は生じないはずなのですが、以下のような要因で発生することがあります。

<越境問題が発生する背景>

あ 境界の確認の不備

土地を購入した際や家を建てる際に、正確な境界の確認をせずに進めた結果、隣地に建物や塀などがはみ出してしまうことがあります。

い 古い測量データの利用

長年前の測量データを基にして土地の境界を判断すると、現在の実際の境界とズレが生じることが考えられます。

う 意図的な越境

ごくまれに、隣地とのトラブルや、増築の意図などで、意図的に境界を越える行為が行われることもあります。

え 自然災害による影響

地震や土砂崩れなどの自然災害により、境界標示物が移動したり、土地そのものが変形することで、無意識のうちに越境が生じる場合があります。

このような背景を理解することで、越境問題の解決に向けた第一歩を踏み出すことができます。もし、越境問題に直面している場合は、早急に専門家の意見を求めることをおすすめいたします。

2 越境問題を解決する前の確認ポイント

越境問題に直面した際、即座に法的手段を考える前に、まずはいくつかの確認ポイントを押さえることが大切です。これにより、問題の背景や状況を正確に把握することができ、より適切な対応をとる手助けとなります。

(1)現地確認の実施

実際に土地や建物の境界を確認しましょう。越境がどの程度の範囲で起きているのか、具体的な状況を明らかにします。

(2)資料の整理と確認

保有している土地の登記簿謄本や図面、過去の測量データなどの資料を整理し、確認します。これらの資料が示す境界と現地の状況が合致するかを確かめることが重要です。

(3)隣地とのコミュニケーション

越境の原因や背景、解決に向けての意向など、隣地の持ち主との対話を試みることで、多くの情報や理解を得ることができます。

(4)過去のトラブルや対応の有無

以前から同様の問題が存在していたのか、または過去に何らかの対応をとったことがあるのかを確認します。歴史的背景や先行事例は、今後の対応の参考となります。

(5)専門家の意見の取り入れ

越境問題は専門的な知識が求められる場合が多いため、測量士や弁護士などの専門家に相談し、アドバイスを受けることも検討するポイントとなります。

越境問題を解決するための第一歩として、これらの確認ポイントをしっかりと押さえることで、よりスムーズに問題の解決に向けて進めることができるでしょう。

3 越境物の撤去請求が認められない場合とは

(1)取得時効の成立

一定期間、隣地への越境が存在し続け、それに対して何らの抗議や行動を起こさなかった場合、取得時効が成立することがあります。この時効が成立すると、越境物の撤去を請求することは難しくなります。

(2)権利の濫用(軽微な越境)

越境物が実際に隣地に与える損害が軽微で、その撤去を求めることが過度なものと考えられる場合、その請求が権利の濫用となり、明渡請求が認められないことがあります。

(3)公序良俗違反

公共の利益を重視した場合や、社会通念上の評価を基にした場合、越境物の撤去を求めることが公序良俗に反すると判断されることが考えられます。たとえば、越境物が地域住民の利便性を高める施設である場合など、撤去請求が社会的に大きな不利益となる場合に公序良俗違反として明渡請求が否定される可能性があります。

4 法律的手続:土地明渡請求のステップ

土地や建物に関する越境問題が発生した際、その解決策として土地明渡請求が考えられます。この手続を適切に進めるためには、そのステップや注意点を理解しておくことが大切です。

(1)相談・アドバイスの受け入れ

まず、弁護士や司法書士などの専門家に相談し、現状のトラブルや権利関係を確認してアドバイスを受けます。

(2)必要な資料の準備

土地の登記情報、図面、測量データなどの関連資料を整理・準備します。これらの資料は、請求の根拠となるため重要です。

(3)交渉

まずは、隣地所有者と話し合いをして和解による解決をめざします。和解が成立すれば、時間と費用を節約することができます。弁護士に依頼して弁護士が代理人として交渉するという方法もあります。

(4)裁判所への申立(訴訟・調停)

和解が成立しなかった場合、裁判所へ土地明渡請求訴訟の申立を行います。訴訟ではなく民事調停を申し立てるという方法うもあります。
この際、上記で準備した資料や証拠を提出します。

(5)証拠・主張の提出

裁判の進行中、各種証拠や主張を裁判所に提出し、自らの権利を明確にアピールします。

(6)裁判所の判断・和解

提出された証拠や主張を元に、裁判所が判断を下します。この判断に基づき、土地の返還や賠償などの命令が下される場合があります。
実際には、判決に至る前に和解が成立することも多いです。

(7)判決・和解後の対応

裁判所の判決や和解として解決内容が決まったら、それに従い、土地の返還や賠償などの措置を実行することになります。
場合によっては、強制執行などの措置も考慮する必要があります。

土地明渡請求の手続は複雑で時間がかかることもありますが、しっかりとした準備と専門家との連携により、適切な解決を目指すことができます。

5 越境問題を回避・予防する方法

土地や建物に関する越境問題は、所有者間のトラブルを引き起こす可能性があります。予防や回避は早期の段階からの意識が求められます。以下、越境問題を回避・予防するための具体的な方法をご紹介いたします。

(1)定期的な境界確認

土地の境界は時間とともに変わることがあります。定期的に境界を確認し、適切な位置に境界標を設置することが大切です。

(2)正確な測量の実施

建物を建てる際や土地を購入する際に、専門家による正確な測量を実施することで、予期せぬ越境を避けることができます。

(3)隣地とのコミュニケーション

隣地の所有者と定期的にコミュニケーションを取ることで、予期せぬ問題や誤解を未然に防ぐことができます。

(4)文書による確認・合意

境界に関する確認や合意は、文書に残すことで後のトラブルを防ぐことができます。特に、合意内容や取り決めを書面で残すことは大切です。

(5)専門家のアドバイスを活用

弁護士や司法書士、測量士などの専門家からのアドバイスや意見を取り入れることで、正確かつ適切な対応を行うことができます。

(6)敷地内の植樹や建築に注意

植木や建物などを土地に設置する際は、境界を意識して配置することで、越境を予防することができます。

越境問題は、双方の協力と理解により、大きなトラブルを避けることができます。上記の方法を活用し、安心して土地や建物を利用するための環境を整えてください。

6 弁護士(専門家)に相談するメリット

土地や建物に関する問題、特に越境問題は複雑であり、適切な対応が必要です。その際、弁護士に相談することは非常に有効です。以下、専門家に相談する際の具体的なメリットをご紹介いたします。

(1)正確な情報の提供

弁護士は最新の法律や判例を知っていますので、正確かつ最新の情報を提供してくれます。これにより、誤った判断を避けることができます。

(2)効率的な問題解決

複雑な問題も、弁護士の知識と経験により、迅速かつ効率的に解決する道筋を示してくれます。

(3)法的リスクの低減

間違った手続きや対応をとると、法的なリスクが高まる可能性があります。弁護士のアドバイスを受けることで、そのようなリスクを低減することができます。

(4)心理的な安心感

一人で問題を抱えることはストレスとなります。弁護士と共に対応することで、心理的な安心感を得られます。

(5)適切な交渉のサポート

トラブル解決の際、交渉が必要となるケースが多いです。弁護士は適切な交渉の方法やポイントを知っているため、より良い結果を得るためのサポートをしてくれます。

(6)文書作成のアドバイス

書面による通知や合意書の作成が必要な場合、専門的な知識が求められます。弁護士はそのような文書の適切な作成方法をアドバイスしてくれます。

弁護士との協力により、土地や建物に関する問題を正確かつ迅速に解決することができます。弁護士の知識と経験を最大限に活用し、安心して問題解決を進めてください。

本記事では、越境問題に関する解決と予防の要点を説明しました。
実際には、個別的な事情によって、法的判断や最適な対応方法は違ってきます。
実際に越境に関する問題に直面されている方は、みずほ中央法律事務所の弁護士による法律相談をご利用くださることをお勧めします。

共有不動産の紛争解決の実務第2版

使用方法・共有物分割の協議・訴訟から登記・税務まで

共有不動産の紛争解決の実務 第2版 弁護士・司法書士 三平聡史 著 使用方法・共有物分割の協議・訴訟から登記、税務まで 第2班では、背景にある判例、学説の考え方を追加して事例検討をより深化させるとともに、改正債権法・相続法が紛争解決に与える影響など最新の実務動向を丁寧に追録して大幅改訂増補! 共有物分割、共有物持分買取権行使、共有持分放棄、共有持分譲渡などの手続きを上手に使い分けるためこ指針を示した定番書!

実務で使用する書式、知っておくべき判例を多数収録した待望の改訂版!

  • 第2版では、背景にある判例・学説の考え方を追加して事例検討をより深化させるとともに、改正債権法・相続法が紛争解決に与える影響など最新の実務動向を丁寧に追録して大幅改訂増補!
  • 共有物分割、共有持分買取権行使、共有持分放棄、共有持分譲渡などの手続を上手に使い分けるための指針を示した定番書!
  • 他の共有者等に対する通知書・合意書、共有物分割の類型ごとの訴状、紛争当事者の関係図を多数収録しており、実務に至便!
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • LINE
【借地人必見!増改築の許可を得る裁判手続と承諾料の算定方法】
【借地契約終了の障壁!更新拒絶の条件を解説】

関連記事

無料相談予約 受付中

0120-96-1040

受付時間 平日9:00 - 20:00