【私道の評価(共有物分割・遺産分割・財産分与における私道減価)】

1 私道の評価(共有物分割・遺産分割・財産分与における私道減価)

いろいろな場面で、私道となっている土地の評価額が問題となることがあります。本記事では、私道の評価について説明します。

2 私道の特徴(制限)

私道はもちろん土地ですが、一般的な土地とは大きく異なります。私道の種類によって違いますが、建築基準法上の「道路」であれば建築制限があり、かつその制限をなくす、つまり私道の廃止自体も制限されています。
詳しくはこちら|建築基準法・『道路』|建築制限・管理・私道廃止
また、状況によっては、「私道」なのに、一般の人にも通行させることになる(通行を止められない)こともあります。
詳しくはこちら|日常生活上不可欠であれば第三者も私道を通行する権利が認められる
このように、「土地」ではあっても、建物の敷地として活用できる土地と比べるととても大きな制限があるのです。私道の評価ではこのような制限、つまり活用できないということをどのように反映させるか、ということが問題となります。

3 土地価格比準表→減価率50〜80%

国交省が関わって作成された基準では、私道減価は50〜80%とされています。もちろん、個別的な事情によって具体的な減価率を判断する、ということが前提となっています。

土地価格比準表→減価率50〜80%

(注・「標準住宅地域」について)
利用の状態 減価率 共用私道 50%〜80% 準公道的私道 80%以上
備考
私道の価格は、通路の敷地の用に供するために生ずる価値の減少分を、左欄の率の範囲内で当該私道の系統、幅員、建築線の指定の有無等の事情に応じて判断し、当該私道に接する各画地の価格の平均価格を減価して求めるものとする。
※国土交通省土地・建設産業局地価調査課監『土地価格比準表 6次改訂』住宅新報社2014年p45

4 令和3年東京地判(共有物分割)・公衆用道路をゼロ評価

実際に共有物分割訴訟の中で裁判所が公衆用道路となっている土地の評価額をゼロと判断したものがあります。

令和3年東京地判(共有物分割)・公衆用道路をゼロ評価

・・・本件私道につき、現況地目が公衆用道路であることなどを理由として平成29年2月21日現在において0円と評価されているところ、同日時点における本件私道の価格を適正に評価したものと認められ、かつ、前記認定事実(6)のとおり本件私道の現況が公衆用道路であることは現在においても変わりなく、同日から現在に至るまで約4年経過しているものの上記評価に影響が生じるような事情はうかがわれないことからすれば、本件口頭弁論終結時における本件私道の価格も0円と評価するのが相当である。
※東京地判令和3年3月8日
詳しくはこちら|分譲地(土地)と私道の「共有持分」の共有物分割訴訟(固有必要的共同訴訟の例外)

5 私道の評価のまとめ

ひとことで「私道」といっても、使用、収益が制限される程度、内容には広い幅があります。つまり、個別的な状況によって、減額する程度は大きく違ってきます。
たとえば、私道以外に使うことが実現することはほぼ不可能、という場合には100%減額(ゼロ評価)となります。一方、比較的容易に私道を廃止して建物の敷地として活用することが可能、という場合には制限は大きくないので減価率も小さくなります。

6 関連テーマ

(1)私道の評価が問題となる状況

私道の評価が問題となる状況はいろいろなものがあります。よくあるのは、共有物分割、遺産分割や遺留分、また離婚の時の財産分与もあります。
詳しくはこちら|全面的価格賠償における価格の適正評価と共有減価・競売減価
詳しくはこちら|遺産分割の分割方法の基本(分割類型と優先順序)
詳しくはこちら|遺留分算定基礎財産の計算の基本部分(基礎的計算式・改正前後)
それ以外に、私道の共有持分を取得する手続、具体的には共有持分買取権、令和3年の民法改正で作られた共有持分取得の裁判でも私道の評価額を出すことが必要になります。
詳しくはこちら|共有持分買取権の基本(流れ・実務的な通知方法)
詳しくはこちら|所在等不明共有者の不動産の共有持分取得手続(令和3年改正)

本記事では、私道の評価について説明しました。
実際には、個別的事情により法的判断や主張として活かす方法、最適な対応方法は違ってきます。
実際に私道の評価に関する問題に直面されている方は、みずほ中央法律事務所の弁護士による法律相談をご利用くださることをお勧めします。

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