【債権譲渡の対抗要件(民法467条の通知・承諾)の解釈(判例・学説)】
1 債権譲渡の対抗要件(民法467条の通知・承諾)の解釈(判例・学説)
民法467条は債権譲渡の対抗要件について規定しています。この条文の解釈には多くの論点があり、本記事ではそれらを整理しながら説明していきます。
2 民法467条の条文
まずは条文そのものを確認しましょう。ここでは、債権を譲渡した際に、通知や承諾がないと「対抗できない」というルールが定められています。この「対抗」の意味や、通知・承諾の方法など、様々な解釈が存在します。
民法467条の条文
第四百六十七条 債権の譲渡(現に発生していない債権の譲渡を含む。)は、譲渡人が債務者に通知をし、又は債務者が承諾をしなければ、債務者その他の第三者に対抗することができない。
2 前項の通知又は承諾は、確定日付のある証書によってしなければ、債務者以外の第三者に対抗することができない。
3 通知に関する解釈
通知は債権譲渡の対抗要件として重要な役割を果たします。ここでは、通知の法的性質、通知をする義務、通知の主体などについて解説します。
(1)「通知」の意味→準法理行為・観念の通知
まず通知の法的性質について見ていきましょう。通知は「観念の通知」とされており、準法律行為に分類されます。
詳しくはこちら|意思表示の基本(意思表示・通知の分類・内容証明郵便の特徴)
しかし、法律行為と同様に民法97条が適用され、到達によって効力が生じるとされています。つまり、通知は単なる事実の伝達ではなく、法的な効果を持つ行為として扱われるのです。
「通知」の意味→準法理行為・観念の通知
※我妻栄ほか著『我妻・有泉コンメンタール民法 第8版』日本評論社2022年p964
(2)通知をする義務→あり
債権譲渡における通知は、単に可能というだけでなく、譲渡人の義務とされています。この義務は、譲受人の利益を保護するためのものです。つまり、譲渡人は通知をすることで、譲受人が債権譲渡を第三者に対抗できるようにする責任があるのです。これは、債権譲渡の取引の安全性を確保する上で重要な役割を果たしています。
通知をする義務→あり
※我妻栄ほか著『我妻・有泉コンメンタール民法 第8版』日本評論社2022年p964
(3)通知の主体(譲受人からの通知)→代理可・代位不可(概要)
通知の主体については、原則として譲渡人が行うべきとされていますが、実務上の便宜を考慮した例外も認められています。具体的には、譲受人が譲渡人の代理人として通知を行うことは可能です。しかし、債権者代位権を使って譲受人が通知することは認められていません。これは、通知の確実性と債権譲渡の安全性を確保するための解釈といえるでしょう。
通知の主体(譲受人からの通知)→代理可・代位不可(概要)
あ 譲渡人からの通知必要
債権譲渡の通知は、必ず譲渡人から債務者に対してすることを要する
※大判昭和5年10月10日
い 譲受人の代理通知可能
譲受人が譲渡人の代理人または使者として債権譲渡の通知をすることができる
※大判昭和12年11月9日
これらの判例(解釈)については別の記事で詳しく説明しています。
詳しくはこちら|債権譲渡の通知を譲受人が行う方法(代理は可能、債権者代位は不可)
4 承諾に関する解釈
承諾は、通知と並んで債権譲渡の対抗要件として重要な役割を果たします。ここでは、承諾の法的性質、承諾の相手方、譲受人の特定や事前承諾の有効性などについて解説します。
(1)「承諾」の性質
承諾とは、債務者が債権譲渡の事実を認識し、それを認めたことを表明する行為です。この承諾により、債権譲渡の効力が対外的に認められることになります。
「承諾」の性質
※我妻栄ほか著『我妻・有泉コンメンタール民法 第8版』日本評論社2022年p965
(2)承諾の相手方→譲渡人・譲受人のいずれも可能
承諾の相手方については、柔軟な解釈がなされています。基本的には、譲渡人または譲受人のどちらに対して行っても有効とされています。
特に「異議なき承諾」の場合、かつては譲受人に対してのみ有効とされていましたが、現在では譲渡人に対しても有効とされています。これにより、債権譲渡の実務がより円滑に行われることが期待されます。
承諾の相手方→譲渡人・譲受人のいずれも可能
あ 基本
譲渡人または譲受人のどちらに対してしても、有効であると解されている。
※我妻栄ほか著『我妻・有泉コンメンタール民法 第8版』日本評論社2022年p965
い 異議なき承諾
ア 大正6年大判
異議をとどめない承諾は、抗弁権を伴わない債務を負担すべき旨の意思表示であり、譲受人に対してなされるべきである
イ 昭和9年大判
異議をとどめない承諾は、譲渡人または譲受人のどちらに対してしても有効である
※大判昭和9年7月11日
(3)譲受人の特定なし・事前の承諾→有効
承諾に関する解釈では、譲受人が特定されていない場合や事前の承諾についても有効性が認められています。
譲受人の特定なし・事前の承諾→有効
あ コンメンタール民法
さらには、譲受人を特定しないで事前の承諾をすることもできるといえよう。
通知と異なり、債務者がそれでもよいとしたのであれば、その効力を否定する理由はないと考えられるからである(ただし、第三者との対抗関係を生じる場合には、問題がないとはいえない)。
※我妻栄ほか著『我妻・有泉コンメンタール民法 第8版』日本評論社2022年p965
い 昭和28年最判
債務者が特定の債権を特定の者に譲渡することに対して、あらかじめ承諾を与えることは有効である
※最判昭和28年5月29日
5 「対抗」の意味(効力)
民法467条における「対抗」という言葉の意味を正確に理解することは、債権譲渡の法的効果を把握する上で極めて重要です。ここでは、「対抗」の意味、債務者の主観との関係、対抗の消極的効力など、様々な観点から「対抗」の概念を解釈していきます。
(1)「債務者に対抗」の意味→弁済を請求する資格の主張
「債務者に対抗」するとは、譲受人が債務者に対して、自分が正当な債権者であることを主張し、弁済を請求する資格があると主張することを意味します。
つまり、通知や承諾がなければ、譲受人は債務者に対して債権者としての地位を主張できないのです。これは、債務者の利益を保護しつつ、債権譲渡の効力を明確にするための解釈といえます。
「債務者に対抗」の意味→弁済を請求する資格の主張
「対抗することができない」という同じ語句が用いられているが、この場合は、債務者に対して請求する資格を取得するかどうかに関するのであって、「その他の第三者」に対する関係において、債権の取得そのものを争う場合とは、意味がまったく異なることに注意を要する。
※我妻栄ほか著『我妻・有泉コンメンタール民法 第8版』日本評論社2022年p965
(2)債務者の主観→問わない
債権譲渡の対抗要件について、債務者の主観的な認識は関係ありません。たとえ債務者が債権譲渡の事実を知っていたとしても、通知や承諾がない限り、譲受人は債務者に対して債権譲渡を主張することはできません。これは、法的安定性を重視する立場から導かれる解釈です。つまり、債務者の知・不知にかかわらず、対抗要件の具備が必要とされるのです。
債務者の主観→問わない
※大判明治45年2月9日
(3)「対抗」の消極的効力
「対抗」には、消極的な性格があります。つまり、対抗要件が欠けるケースでは、債務者が主張した場合にだけ、対抗できないという効果が実現します。通知・承諾がなくても、債務者が債権の譲受を認めた場合(「譲受人が新たな債権者である」と認めた場合)には、債権の譲受があったことになります。
「対抗」の消極的効力
あ 債務者による主張が「可能」
対抗要件は譲受人が債権を主張するための積極的要件ではなく、債務者がその欠缺を主張した場合に問題となる
※最判昭和56年10月13日
い 債務者が主張しないこと(債権譲渡の容認)→可能
債務者は債権譲渡を認めて、譲受人に弁済することができる
※大判昭和2年1月28日
(4)合意解除→対抗できる(弁済と同じ)
債権譲渡後に、譲渡人と債務者の間で合意解除が行われた場合、その効力はどうなるのでしょうか。債務者が善意(債権譲渡を知らない)である場合、合意解除は有効とされ、債務者は債務を免れることができます。これは、善意の債務者が譲受人に弁済した場合と同様の扱いとなります。この解釈は、善意の債務者を保護する観点から導かれたものです。
合意解除→対抗できる(弁済と同じ)
※大判昭和19年4月28日
(5)対抗できない授受人による請求以外の権利行使→否定(請求と同じ)
対抗要件を具備していない譲受人の権利行使の範囲はどこまでなのでしょうか。結論としては、対抗要件を欠く譲受人は、債務者に対する請求だけでなく、その他の権利行使もできないとされています。具体的には、破産申立、抵当権実行、時効中断などの行為も行うことができません。要するに、対抗要件が欠けると債権譲渡はなかった扱いになる、ということです。
対抗できない授受人による請求以外の権利行使→否定(請求と同じ)
※大決昭和4年1月15日、大連判大正11年9月23日、大判昭和6年1月29日、大判大正8年10月15日
6 将来債権の譲渡・債権譲渡予約
将来債権の譲渡や債権譲渡予約は、現代の取引実務において重要な役割を果たしています。ここでは、これらの特殊な形態の債権譲渡に関する対抗要件や法的効果について説明します。
(1)将来債権譲渡の対抗要件
将来債権譲渡、すなわちまだ発生していない債権の譲渡についても、対抗要件を具備することが可能です。最高裁判例によれば、将来債権譲渡の対抗要件具備には、通常の指名債権譲渡と同じく民法467条2項の方法(確定日付のある証書による通知または承諾)を用いることができます。これにより、将来債権譲渡の有効性と対抗力が認められ、取引の安全と円滑化が図られています。
将来債権譲渡の対抗要件
※最判平成13年11月22日、最判平成12年4月21日
将来債権譲渡については、別の記事で詳しく説明しています。
詳しくはこちら|将来債権譲渡(集合債権譲渡)の要件・活用の例
(2)譲渡予約→第三者対抗不可
債権譲渡予約は、将来的に債権を譲渡することを約束する契約です。しかし、この予約自体では第三者に対抗することはできません。最高裁判例によれば、たとえ確定日付のある証書による承諾があったとしても、予約の完結をもって第三者に対抗することはできないとされています。つまり、実際に債権譲渡が行われるまでは、第三者に対する対抗力は生じないのです。これは、取引の安全性を確保するための解釈といえます。
譲渡予約→第三者対抗不可
※最判平成13年11月27日
7 特殊な状況での対抗要件
債権譲渡の対抗要件に関しては、通常の場合だけでなく、特殊な状況下でも様々な解釈が存在します。ここでは、他人の債権を譲渡した場合、債権譲渡契約が解除された場合、債権の特定遺贈の場合など、特殊な状況下での対抗要件の適用について解説します。
(1)他人債権譲渡後の通知後の債権取得→対抗要件肯定
他人の債権を譲渡し、その後に通知を行い、さらにその後で実際にその債権を取得した場合、対抗要件の効力はどうなるのでしょうか。最高裁判例によれば、この場合、債権を取得した時点で当然に対抗要件を備えるとされています。つまり、後から債権を取得しても、先に行った通知が有効な対抗要件となるのです。これは、取引の安全と円滑化を図るための解釈といえます。
他人債権譲渡後の通知後の債権取得→対抗要件肯定
※最判昭和43年8月2日
(2)債権復帰時の対抗要件→適用肯定
債権譲渡契約が解除されて債権が譲渡人に復帰する場合、再度対抗要件を具備する必要があるのでしょうか。大審院の決定によれば、この場合にも対抗要件を備える必要があるとされています。つまり、一度譲渡された債権が元の所有者に戻る場合でも、その事実を第三者に対抗するためには、再度通知や承諾などの手続きが必要となります。これは、取引の安全性を確保し、債権の帰属を明確にするための解釈です。
債権復帰時の対抗要件→適用肯定
※大決昭和3年12月19日
(3)債権の特定遺贈→適用肯定
債権の特定遺贈、つまり遺言によって特定の債権を特定の人に与える場合でも、債権譲渡の対抗要件を備える必要があります。これは、相続による権利の移転と、生前の債権譲渡を同様に扱うことで、取引の安全を図る解釈といえます。特定遺贈を受けた者は、対抗要件を具備しない限り、第三者に対して権利を主張できないことになります。
債権の特定遺贈→適用肯定
※最判昭和49年4月26日
8 確定日付ある証書
確定日付のある証書は、債権譲渡の対抗要件として重要な役割を果たします。債権譲渡の時期を客観的に証明し、詐害的な取引を防ぐという機能を持っています。
(1)確定日付証書の必要性
確定日付のある証書は、債権譲渡の通知または承諾を証明する上で必要不可欠です。大審院の判例によれば、通知または承諾という行為そのものに確定日付のある証書が存在すれば十分とされています。これにより、債権譲渡の時期が明確になり、第三者との関係で優先順位が決定されます。
確定日付証書の必要性
※大連判大正3年12月22日
(2)確定日付ある証書の具体例
確定日付のある証書には様々な形態があります。公正証書や公証人役場・登記所で日付のある印章を押した私署証書、官庁や公署で日付を記載した私署証書などが該当します。
特に実務では、内容証明郵便や配達証明郵便がよく利用されます。
また、電子的な方法で作成された日付情報も、一定の条件下で認められています。
確定日付ある証書の具体例
あ コンメンタール民法
「確定日付のある証書」とは、およそつぎのようなものである(民施§5参照)。
すなわち、
(a)公正証書(公証§36⑩参照)
(b)公証人役場または登記所で日付のある印章を押した私署証書
(c)官庁または公署(いわゆる民営化後の郵便局もこの機能は継続する)で、ある事実を記入して日付を記載した私署証書(普通は、内容証明郵便および配達証明郵便を利用する。最判昭和43・10・24民集22巻2245頁は、市役所文書係員が受付印を押印した例である)
(d)指定公証人が電磁的記録に記録する方式で作成した日付情報(公証§§62ノ6~628参照)
などである。
※我妻栄ほか著『我妻・有泉コンメンタール民法 第8版』日本評論社2022年p966、967
い 昭和43年最判(市役所受付印)
市役所文書係員が受付印を押印した私署証書は、確定日付のある証書に該当する
※最判昭和43年10月24日
9 債権譲渡の優劣
複数の債権譲渡(二重譲渡)が行われた場合には、その優劣関係が問題となります。債権譲渡の優劣は、通知または承諾の到達時期によって決定されます。
同時に到達した場合は優劣がつかず、債務者はどちらか一方からの請求を拒絶できません。また、通知の先後が不明な場合に債務者が供託したケースでは、供託金を按分して還付請求できることになります。
債権譲渡の優劣
あ 優劣の決定基準→到達時
債権譲渡の優劣は、通知または承諾の到達の前後によって決する
※最判昭和49年3月7日、最判昭和58年10月4日
い 同時到達→優劣なし
通知が同時に到達した場合、譲受人間の優劣は決しえないが、債務者は一方からの請求を拒絶できない
※最判昭和53年7月18日、最判昭和55年1月11日
う 先後不明時の供託金の扱い→按分還付
通知の先後が不明の場合、弁済供託された金額を案分により還付請求できる
※最判平成5年3月30日
10 「債務者以外の第三者」の範囲
(1)「債務者以外の第三者」の意味と具体例
「債務者以外の第三者」とは、譲受人の地位と両立し得ない法律上の地位を取得した者を指します。具体的には、二重譲受人、差押債権者、破産債権者などが該当します。これらの第三者は、債権譲渡の効力を争う利害関係を有する者として扱われます。物権変動における第三者の概念に準じて考えられていますが、債権譲渡特有の解釈も存在します。
「債務者以外の第三者」の意味と具体例
あ コンメンタール民法
「債務者以外の第三者」とは、同じ債権につき譲受人の地位と両立しえない法律上の地位を取得したものである。
すなわち、
債権を二重に譲り受けた者
(大判昭和11.7.11民集15巻1383頁など)、
その債権について仮差押命令・差押命令・転付命令を得た者
(大判大正8・11・6民録25輯1972頁、前掲最判昭和49・3・7、前掲最判昭和58・10・4)、
その債権が破産財団に属した場合の破産債権者
(破産した譲渡人に対する破産債権者、したがって破産管財人、大判昭和8・11・30民集12巻2781頁)
などである。
考え方としては、物権変動における第三者になぞらえて考えられている
(本節解説2(2)参照、§177〔8〕参照)。
これに反して、その債権の譲渡によって間接に影響を受ける者は、ここにいう第三者に該当しない。
※我妻栄ほか著『我妻・有泉コンメンタール民法 第8版』日本評論社2022年p968
い 「第三者」該当性を肯定した大判
ア 債権譲受人・差押債権者
債権譲受人、差押債権者は「債務者以外の第三者」にあたる
※大判昭和11年7月11日、大判大正8年11月6日
イ 破産管財人
(要旨)
債権の譲渡が対抗要件を具備しない場合に譲渡人の破産管財人がその債務者から弁済を受領しこれを破産財団に組入れても、譲受人は不当利得返還の請求権を有しない。
※大判昭和8年11月30日
ここで出てくる物権変動における第三者とは、民法177条の「第三者」のことです。この解釈については別の記事で説明しています。
詳しくはこちら|債権者が民法177条の第三者に該当するか否か
(2)間接影響者→「第三者」に該当しない
債権譲渡により間接的に影響を受けるだけの者は、「債務者以外の第三者」には該当しません。これは、債権譲渡の効力を直接争う利害関係を有しない者は、対抗要件の問題における「第三者」には含まれないという解釈です。
間接影響者→「第三者」に該当しない
※大判昭和8年4月18日、大判昭和9年6月26日
11 第三者対抗要件具備の効果
第三者対抗要件を具備することで、債権譲渡の効力が第三者に対して主張できるようになります。ここでは、対抗要件具備が債務者に与える効果や、債権消滅後の譲渡の場合の取り扱いについて解説します。
(1)債務者への効果→債権者確定
第三者対抗要件が具備されると、債権の帰属が確定し、その効果は債務者にも及びます。債務者は、対抗要件を具備した譲受人を真の債権者として認めなければならなくなります。これにより、債権譲渡後の法律関係が明確になり、債務者の弁済の相手方が確定します。
債務者への効果→債権者確定
※大連判大正8年3月28日
(2)債権消滅後の譲渡→対抗要件は関係ない
債権が消滅した後に行われた譲渡については、対抗要件を具備しても効力を持ちません。例えば、第1譲受人が対抗要件を具備せずに弁済を受けて債権が消滅した後、第2の譲渡が行われた場合、第2譲受人が対抗要件を具備しても、既に消滅した債権を復活させることはできません。これは、債権譲渡の対抗要件が債権の存在を前提としているためです。
債権消滅後の譲渡→対抗要件は関係ない
第2譲受人は確定日付のある証書による通知をしても「弁済によって債権が消滅」したことを覆せるわけではない(第2譲受人が優先されるわけではない)
※大判昭和7年12月6日
12 対抗要件規定の強行性→肯定方向
債権譲渡の対抗要件規定の強行性については、判例と学説で見解が分かれています。大審院判例は、対抗要件規定全体を強行規定と解しています。一方、学説では、第1項(債務者に対する対抗要件)については任意規定、第2項(第三者に対する対抗要件)については強行規定と解する見解があります。この解釈の違いは、当事者間の特約の有効性や取引の安全性に影響を与える可能性があります。
対抗要件規定の強行性→肯定方向
あ 大正10年大判→強行性肯定
債権譲渡の対抗要件規定は強行規定であり、特約によってもその効力を排除できない
※大判大正10年2月9日
い コンメンタール民法→2項のみ肯定
ア 1項の強行性→否定
・・・けだし、債務者に対する対抗要件という面では、通知または承諾は、債務者を保護することだけを目的とする制度だからである(大判昭和2.1.28新聞2666号16頁)。
同じ理由から、債権者が債権を譲渡した場合に通知または承諾を必要としないということを債務者が債権者との間で特約した場合にも、その効力を認めるべきである。
しかし、判例は、本条1項は強行規定であるという理由で、このような特約は債務者に対しても無効であるという(大判大正10・2・9民録27輯244頁)。
債務者以外の第三者に対する対抗要件の場合と区別して考えるのが正しいであろう(〔9〕(オ)参照)。
※我妻栄ほか著『我妻・有泉コンメンタール民法 第8版』日本評論社2022年p966
イ 2項の強行性→肯定
本条2項は、強行性を有する。
債権者と債務者または譲受人などとの間で、確定日付のある証書による通知または承諾がなくても第三者に対抗できる旨の特約をしても、第三者に対しては効力を生じない。
けだし、これは、一般取引の安全を図る制度だからである(前述〔5〕(ウ)参照)。
※我妻栄ほか著『我妻・有泉コンメンタール民法 第8版』日本評論社2022年p969
本記事では、について説明しました。
実際には、個別的事情により法的判断や主張として活かす方法、最適な対応方法は違ってきます。
実際にに関する問題に直面されている方は、みずほ中央法律事務所の弁護士による法律相談をご利用くださることをお勧めします。