【地上権が成立する状況(処分行為(合意)・遺言・取得時効・法律の規定)】

1 地上権が成立する状況(処分行為(合意)・遺言・取得時効・法律の規定)

地上権は他人所有の土地を利用する権利の1つです。
詳しくはこちら|地上権の基本事項(性質・「工作物」「竹木」の意味)
実務では、地上権が成立したといえるかどうかについて熾烈な対立が生じることがあります。本記事では、どのような状況で地上権が成立するか、ということを横断的に説明します。

2 地上権設定契約

(1)地上権設定契約の分類→処分行為(前提)

地上権が成立(発生)する基本的な状況は(地上権設定)契約です。この契約は処分行為に分類されます。つまり、処分権限がない者は設定できません。

地上権設定契約の分類→処分行為(前提)

あ 設定契約→処分行為

地上権は、土地所有者と地上権者との契約によって設定されるのが普通である
この地上権設定行為は、処分行為に該当する
※最判昭和4年6月12日

い 処分行為→制限あり

そのため、一定の者には地上権設定行為が禁じられている場合がある(民法5条、28条)
※鈴木禄弥稿/川島武宜ほか編『新版 注釈民法(7)』有斐閣2012年p871

「処分行為」の意味については別の記事で説明しています。
詳しくはこちら|「処分(行為)」の意味や具体例(事実的処分・法的処分)
なお、令和3年の民法改正で、前述の基本ルールに例外ができました。なんと、過半数持分を有する共有者(=処分権限を持たない)が、地上権を設定できることになったのです。
詳しくはこちら|共有不動産への用益物権設定の変更・管理分類(賃貸借以外・改正民法252条4項)

(2)譲渡による土地と地上物の別所有発生→地上権設定合意の推定

地上権設定の契約(合意)は通常、契約書に調印して明確にするのがベストですが、実際には、契約書はないけれど地上権を設定したと認定されることもあります。典型は、土地と地上物(建物や工作物など)の一方の譲渡がなされたケースです。

譲渡による土地と地上物の別所有発生→地上権設定合意の推定

土地と地上物の両方の所有者が土地のみまたは地上物のみを他人に譲渡し、かつ地上物の取壊しまたは伐採を予定していない場合
地上権(または少なくとも土地賃借権)の設定の合意が両者間に存在したものと推定される
※長崎地判明治40年4月30日
※鈴木禄弥稿/川島武宜ほか編『新版 注釈民法(7)』有斐閣2012年p871、872

3 遺言・時効→地上権取得可能

契約以外で地上権設定がなされることもあります。遺言や取得時効です。

遺言・時効→地上権取得可能

地上権は、土地所有者の遺言による設定や取得時効によって取得することも可能である
※鈴木禄弥稿/川島武宜ほか編『新版 注釈民法(7)』有斐閣2012年p871

4 法律の規定による地上権発生

契約以外による地上権設定の特殊なものとして、法律の規定によって地上権が成立する、というものがあります。

法律の規定による地上権発生

あ 法定地上権

民法388条または民事執行法81条によって法定地上権が成立する場合がある

い 都市再開法による地上権成立

都市再開発法75条以下の規定によって地上権が成立することがある

法定地上権の成立要件については別の記事で説明しています。
詳しくはこちら|法定地上権の成立要件には物理的要件や所有者要件がある

本記事では、地上権が成立する状況について説明しました。
実際には、個別的事情により法的判断や主張として活かす方法、最適な対応方法は違ってきます。
実際に土地の利用に関する問題に直面されている方は、みずほ中央法律事務所の弁護士による法律相談をご利用くださることをお勧めします。

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【地上権(建物所有目的以外)の認定基準と具体例(判例)】
【適法な転貸借における目的物返還義務(民法613条)】

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