【住居の使用貸借におけるリフォーム工事・有益費の請求や契約解除(事例解説)】
1 住居の使用貸借におけるリフォーム工事・有益費償還請求(事例解説)
親族など、近い関係の者の間で、建物で無償で貸すことはよくあります。借主としては、生活が快適になるようにリフォーム工事をした場合、建物がグレードアップしたことになります。民法上、その費用を貸主に請求できることもあれば、逆に契約解除となることもあります。本記事では、このようなことを説明します。
2 事案
Aが親戚のBに古い住宅を2年間無償貸与しました。
Bは古い在来工法の風呂をユニットバス(150万円)に改装しました。
返還時、住宅の価値は120万円上昇していました。
3 ユニットバスが収去可能→収去義務あり・償還請求否定
ユニットバスが収去可能な附属物と判断される場合、原則としてBには収去義務(民法599条1項)が発生します。そして償還請求はできないことになります。
ただし、収去によって原状回復が困難または不経済である場合は、収去義務が免除され(599条1項ただし書)ます。この場合は有益費償還請求は否定されません。
以下、収去義務がないケースを前提として説明を続けます。
4 事前に改装の承諾があった場合→償還請求肯定
事前にAがBによる風呂の改装を承諾していた場合、Bは有益費償還請求権を行使できます。
Bは返還時に現存する価値の増加分である120万円、または支出額である150万円のいずれかをAに請求することができます。この選択権はA(貸主)にあります。もちろんAは低い方(120万円)を選択するのが通常です。
5 事前の承諾がなかった場合→契約解除あり・償還請求否定
風呂の改装という大規模な変更は通常、貸主の承諾を必要とします。事前にAの承諾を得ずにBが風呂を改装した場合、通常、用法遵守義務(民法594条1項)違反となります。
実際には、契約書などを作成しておらず、Aが改装を承諾したかどうかがはっきりしないことも多いです。この点、たとえば、改装がAの意向に反することをBが知っていた(知ることができた)場合には承諾なしとして扱われます。
用法遵守義務違反にあたる場合は、Bの有益費償還請求が認められないのはもちろん、Aは契約を解除(解約)することもできます(民法594条3項)。
6 本記事で活用した法的知識の詳細
詳しくはこちら|使用貸借における有益費償還請求権(民法595条)
本記事では、住居の使用貸借におけるリフォーム工事の事例について説明しました。
実際には、個別的事情により法的判断や主張として活かす方法、最適な対応方法は違ってきます。
実際に建物の使用貸借など、不動産の利用に関する問題に直面されている方は、みずほ中央法律事務所の弁護士による法律相談をご利用くださることをお勧めします。