【訴訟告知の要件(主体・対象手続・被告知者など)(民事訴訟法53条)(解釈整理ノート)】
1 訴訟告知の要件(主体・対象手続・被告知者など)(民事訴訟法53条)(解釈整理ノート)
民事訴訟法には、訴訟告知という手続が用意されています。訴訟告知をすることにより、参加的効力を及ぼすことができます。
実務では訴訟告知を活用する状況もよく生じます。条文はシンプルですが、実務で必要な細かい解釈が多いです。本記事では、訴訟告知の要件に関する解釈を整理しました。
2 民事訴訟法53条の条文
民事訴訟法53条の条文
第五十三条 当事者は、訴訟の係属中、参加することができる第三者にその訴訟の告知をすることができる。
2 訴訟告知を受けた者は、更に訴訟告知をすることができる。
3 訴訟告知は、その理由及び訴訟の程度を記載した書面を裁判所に提出してしなければならない。
4 訴訟告知を受けた者が参加しなかった場合においても、第四十六条の規定の適用については、参加することができた時に参加したものとみなす。
※民事訴訟法53条
3 訴訟告知の目的(意義)(参考)
訴訟告知の目的(意義)(参考)
4 訴訟告知の主体
<訴訟告知の主体>
あ 訴訟告知をすることができる者
(ア)現に裁判所に係属している訴訟手続の当事者(イ)当事者として訴訟に参加した者(民訴法47条・49条~52条)(ウ)訴訟を受継した当事者(民訴法124条)(エ)選定当事者(民訴法30条)(オ)補助参加人(民訴法42条)(民訴法53条2項)(カ)訴訟告知を受けた第三者(被告知者)(民訴法53条2項)
い 訴訟告知をすることができない者
(ア)強制執行手続や調停手続等の当事者(イ)選定者(当事者の地位を持たないため) 〜〜〜
5 対象となる手続
<対象となる手続>
あ 訴訟告知が可能な手続
(ア)判決手続(イ)再審手続(ウ)上告審に係属中の手続(利益は少ないが可能)(エ)決定手続・抗告手続(理論的には可能だが実益は少ない)
い 訴訟告知ができない手続
(ア)強制執行手続(イ)調停手続(ウ)民事保全手続(迅速性の要請から不可) 〜〜〜
6 被告知者(訴訟告知を受ける「第三者」)
被告知者(訴訟告知を受ける「第三者」)
あ 被告知者(第三者)
ア 裁判例
告知者が敗訴したとき、当該敗訴判決の訴訟物に関する判断やその前提となる判断が、告知者と被告知者間の後訴において、被告知者の法律上の地位の前提となり、その結果として被告知者に法律上の不利益を生じさせるおそれのある者
※大阪高判昭和39年12月28日判時408号35頁
イ 要点(ア)参加することができる第三者(補助参加人、独立当事者参加人、共同訴訟参加人など)(イ)実務では、補助参加のできる第三者(訴訟の結果について利害関係を有する者)が多い
い 具体例
(ア)買主が売主に対し売買目的物の瑕疵を理由として損害賠償を請求する訴訟における、売主にこの物件を売り渡した前主(イ)債権者が保証人に対し支払請求する訴訟における主債務者(ウ)原告・被告双方が告知できる事例:買主(原告)から建物の占有者(被告)に対する明渡請求訴訟において売主に対して訴訟告知をするケース
う 該当しない者への訴訟告知→無効
当事者が、訴訟の結果について利害関係を有しない第三者に対して訴訟告知の申立てをした場合には、告知の効果を生じない
※大阪地判昭和38年5月27日判時348号31頁
※大阪高判昭和39年12月28日判時408号35頁
※最判平成14年1月22日判時1776号67頁
え 補助参加人への訴訟告知→原則不要
すでに自分のための補助参加人になっている場合(ただし、時効中断等の実体的効力が訴訟告知に与えられているときは訴訟告知を認めるべき)
7 被告知者による訴訟告知→可能
<被告知者による訴訟告知→可能>
あ 被告知者からの再告知
訴訟告知を受けた第三者は、その訴訟に参加することのできる第三者に、さらに訴訟告知をすることができる
い 具体例
(ア)第2の売主が第1の売主に対して訴訟告知をする場合(イ)手形の償還請求訴訟で第2の裏書人が第1の裏書人に対して訴訟告知をする場合 〜〜〜
8 訴訟告知の義務→原則自由(任意)
訴訟告知の義務→原則自由(任意)
あ 原則
訴訟告知をするかしないかは、原則として当事者の自由である
い 例外的に義務となる場合
(ア)株主代表訴訟における株主の会社に対する訴訟告知(会社法849条4項)
→義務違反があっても代表訴訟自体の適法性には影響せず、会社に対する損害賠償責任を負うのみ
(イ)債権者代位訴訟における代位債権者から債務者への遅滞のない訴訟告知(民法423条の6)
→告知義務を懈怠した場合には、代位債権者の当事者適格が否定されるという考え方が一般的
(ウ)詐害行為取消訴訟における取消債権者から債務者への訴訟告知(民法424条の72項)
→当事者適格に影響するか争いあり
・当事者適格を否定する見解
・当事者適格は失われないとする見解(有力)
9 参考情報
参考情報
本記事では、訴訟告知の要件について説明しました。
実際には、個別的事情により法的判断や主張として活かす方法、最適な対応方法は違ってきます。
実際に主に対立している2者以外にも密接に関係する者が存在するというケースに関する問題に直面されている方は、みずほ中央法律事務所の弁護士による法律相談をご利用くださることをお勧めします。