【賃貸人の修繕義務の要件である「必要性」(解釈整理ノート)】
1 賃貸人の修繕義務の要件である「必要性」(解釈整理ノート)
賃貸借契約の目的物が損傷したケースでは、修繕が「必要」であり、かつ、「可能」である場合、賃貸人は修繕義務を負います。
詳しくはこちら|賃貸人の修繕義務の要件の基本(民法606条)(解釈整理ノート)
本記事では、修繕の「必要性」に関するいろいろな解釈をまとめました。
2 修繕の「必要性」の基本→使用収益できない
修繕の「必要性」の基本→使用収益できない
※大判昭5年9月30日
3 使用収益への支障の程度→見解が分かれている
使用収益への支障の程度→見解が分かれている
あ (ほぼ)不能→肯定
使用収益が全く、あるいはほとんど全く不能な状態
この場合は明らかに修繕義務が生じる
※大判大4年12月11日
※大判大10年9月26日
い 部分的な不能
部分的に使用収益が妨げられている場合
賃借人が一応賃借物を使用できるが、完全な使用を享受できない場合の判断基準として以下の見解がある
ア 「著しい支障」を基準とする見解
修繕義務の発生には「著しい支障」が必要とする
※最判昭38年11月28日
※大阪高判昭37年1月10日
※京都地判昭25年5月10日
※東京地判昭55年8月26日
イ 「通常の支障」を基準とする見解
修繕義務の発生には「通常の支障」で足りる
民法の一般的解釈論としては、破損が賃借物の使用収益に「通常の」支障を与える程度であれば、賃貸人の修繕義務を認めるのが相当である(「著しい支障」に限定する根拠はない)
4 修繕の「必要性」を判断した実例(裁判例)
修繕の「必要性」を判断した実例(裁判例)
あ 雨漏りケース
ア 「通常」レベル→修繕義務否定
通常程度の降雨での雨漏りは住宅使用に格別の支障を来たさない
※京都地判昭25年5月10日
※東京地判昭26年2月22日
イ レベル考慮なし
賃料額が低廉でも台風等による雨漏りの修繕費は賃貸人が負担すべきである
※大阪高判昭38年8月14日
い 住宅の破損・腐食ケース
床のキルク板張りの破損につき修繕義務を肯定した
※東京地判昭26年2月22日
住宅の土台腐食等につき「著しい支障」ではない
※最判昭38年11月28日
※最判昭40年9月10日
5 事案ごとの修繕必要性の総合判断
事案ごとの修繕必要性の総合判断
6 参考情報
参考情報
我妻榮ほか著『我妻・有泉コンメンタール民法 第8版』日本評論社2022年p1305、1306
本記事では、賃貸人の修繕義務の要件について説明しました。
実際には、個別的事情により法的判断や主張として活かす方法、最適な対応方法は違ってきます。
実際に賃貸借のケースの修繕義務(不具合の発生)に関する問題に直面されている方は、みずほ中央法律事務所の弁護士による法律相談をご利用くださることをお勧めします。