【『賃料』の種類(地代・家賃・新規賃料・継続賃料)】

1 『賃料』の名称のバラエティ

土地や建物の貸し借りで支払われる金銭の名称にはバラエティがあります。
いろいろな問題の中で登場する用語です。

『賃料』の名称のバラエティ

あ 不動産賃貸借などの名称

対象となる契約 契約の名称 賃料の名称 土地賃貸借・地上権(設定) 借地 地代 建物賃貸借 借家 家賃

い 『賃料』の名称

『賃料』=『地代・家賃』の総称

個々の用語について、これとは違う意味で用いることもあります。
ここではある程度一般的・実用的な使い方として紹介しました。

2 新規賃料と継続賃料

賃料は、タイミング、つまり契約の状態によって2種類に分けられます。
新規賃料と継続賃料です。
これは、賃料額の相場を評価(鑑定)する際の区分けといえます。

新規賃料と継続賃料

賃料評価の種類 内容 新規賃料 新たに賃貸借契約を締結する場合の賃料額 継続賃料 既存の賃貸借契約の途中・更新時に『変更』する時の賃料額

3 新規賃料のトラブル発生

新規賃料は新たに賃貸借を始める時の賃料額です(前記)。
新規賃料は通常、当事者間で金額が決まります。
当事者間の話し合いで決められないという問題にはなりません。
つまり、どちらかがイヤなら契約しない、ということになります。
ただし、当事者が合意していないのに契約と同じ状態になる特殊なケースでは別です。
法定地上権と法定借家権の発生の際には、新規賃料を裁判所が判断する手続もあります。

新規賃料のトラブル発生

あ 賃貸借契約締結と賃料額

賃貸借契約締結前において
賃貸を希望する者が新規賃料を協議する
新規賃料を合意して始めて賃貸借契約が締結される
合意に至らない場合は契約を締結しない
→トラブル発生・裁判所が判断する状況は生じない

い 法律の規定による利用権発生と賃料額

ア 法律の規定による利用権発生 『イ・ウ』の権利について
法律上の規定により不動産の利用権が生じる
通常、当事者は地代・賃料を合意していない
当事者の協議により賃料額が合意できない場合
→裁判所が判断・決定する手続がある
イ 法定地上権 詳しくはこちら|法定地上権の地代相場・地代確定請求訴訟と成立範囲の全体像
ウ 法定借家権 詳しくはこちら|建物譲渡特約付借地における法定借家権発生と賃料の決定(協議・裁判)

4 継続賃料のトラブル発生(概要)

継続賃料が問題になることは実際によくあります。
賃貸借の途中で当事者のどちらかが賃料の増減額を請求したというケースです。
この場合も、最終的には裁判所が賃料額を決める手続があります。

継続賃料のトラブル発生(概要)

賃貸借契約期間中において
さまざまな状況の変化が生じる
→賃料を増額や減額をする要請が生じる
→当事者は賃料増減額請求をすることができる
当事者の協議により改定賃料(継続賃料)額が合意できない場合
→裁判所が相当の賃料を判断・決定する手続がある
詳しくはこちら|借地・借家の賃料増減額請求の基本

5 借地の一部滅失扱いによる賃料減額

特殊な要因により賃料が減額されるというケースもあります。
借地の対象となっている土地の一部が滅失したというものです。
前記の『賃料増減額請求』とは違います。結果として似ているので、ここで紹介します。

借地の一部滅失扱いによる賃料減額

あ 土地の『一部滅失』扱い→賃料減額請求

実質的・永続的に対象土地が使えなくなった場合
→土地の『一部滅失』として扱われることがある
→『賃料減額請求』が認められる
※民法611条

い 『一部滅失』扱いの具体例

ア 収用イ 区画整理ウ その他『使えなくなる』状態

6 賃貸管理業務(概要)

以上のように、賃貸借の期間が長くなると、賃料の増減額が何度も行われることになります。
逆に言えば、賃料の管理は、賃貸管理全体の中の大きな1つの業務なのです。
適切な時期に交渉や調停・訴訟などの手続を行わないと、不利な状況が固定化してしまうかもしれません。
賃貸管理業務の内容や注意すべき内容などは別の記事で説明しています。
詳しくはこちら|不動産の管理業務の基本(主な内容・非弁行為禁止との関係)

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【借主の金銭負担の程度により土地の使用貸借と借地(賃貸借)を判別する】
【賃料改定事件の裁判手続(調停前置の適用範囲と例外)】

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