【借地開始時に権利金・保証金・建設協力金が支払われる(全体)】
1 借地開始時の権利金は借地権設定の対価の性質など
2 借地の明渡料と権利金は経済的に対応する
3 権利金の相場は更地価格の6〜9割だが最近は下落傾向
4 権利金なしの場合は贈与税課税リスクあり(概要)
5 借地開始時の金銭は権利金・保証金・建設協力金などがある
1 借地開始時の権利金は借地権設定の対価の性質など
借地契約,つまり,土地の賃貸借契約,を締結する際,借地人が地主に金銭を払うのが一般です。
これを権利金と言います。
趣旨としては,借地権を設定する対価,とか,地代の前払いという性格などと言われています。
借地契約の終了時に地主が借地人に返還する性質のものではありません。
詳しくはこちら|借地の権利金の性格は複数あり返還義務は原則的にない
2 借地の明渡料と権利金は経済的に対応する
一般に,借地の明渡においては,明渡料として多額の金銭が支払われることが多いです。
これは借地権の価格がベースとされています(別の考え方もあります)。
さかのぼって,借地開始によって,借地人が大きな財産を得たと言えます。
この借地契約によって借地人が得た財産に対応するものが権利金と考えられます。
実質的,経済的には,借地開始時の権利金と終了時の明渡料は対応するものと言えます。
結果的に同じような金額になるので,『権利金を返した』というような見た目になります。
しかし,法的には権利金と明渡料は別のものです。
3 権利金の相場は更地価格の6〜9割だが最近は下落傾向
(1)権利金の相場
借地における権利金には一定の相場があります。
地域によって,傾向があります。
目安として,ごく平均的な相場の目安と変動する事情をまとめます。
<借地の権利金の相場>
更地価格の6〜9割
(2)権利金が変動する事情
高めの割合は,古い時期の設定に多い傾向です。
借地権(価格)の相場と同一に考える場合も多いです。
経済的な視点では,借地権の売買となぞらえることが可能だからです。
4 権利金なしの場合は贈与税課税リスクあり(概要)
借地の開始に際して権利金を払わないとならないというルールはありません。
しかし,権利金なしの場合,税務上,思わぬ課税の対象となるリスクがあります。
これは別に説明しています。
詳しくはこちら|権利金の授受がない借地契約における認定課税(相当の地代・無償返還の届出書による回避)
5 借地開始時の金銭は権利金・保証金・建設協力金などがある
借地(土地賃貸借)契約に伴って,地代以外の金銭のやりとりがなされます。
大きく分類すると,返還の約定のあるものとないものとに分けられます。
(1)返還の約定の無いもの
権利金,礼金
どちらの名称を使ったとしても,その理論的な性質に違いはないと言えます。
商習慣と言いますか,ニュアンス・イメージという面では違いがありますが,あくまでも理論的・法的な視点です。
(2)返還の約定のあるもの
敷金,保証金,建設協力金
<返還義務のある金銭の種類>
あ 敷金
『賃貸借契約成立から明渡しまでに生じる損害を担保するもの』として交付された金銭
い 保証金
個別的にいろいろな性格が設定される
『敷金』と同じ,ということも多い
『貸金』の性格が強い設定もありえる
う 建設協力金
法的には貸金と同じ種類である
(3)借地開始時にやりとりされる金銭のまとめ
<賃貸借スタート時に授受される金銭の種類>
なし----権利金・礼金(同義)
/
返還約定< 返還の条件---敷金
\ /
あり--明渡<
\
条件ではない--保証金,建設協力金(貸金)