【都市計画の区域区分,開発許可の基準】

都市計画で,家の建築はどのように規制されているのでしょうか。
規制の区分けについて教えてください。

1 都市計画の区域区分により,建物建築は類型的に規制されている
2 一定の規模の『開発』では『開発許可』が必要
3 開発許可が下りる前は販売広告や契約締結ができない
4 区域区分によって,開発許可が必要な規模が定められている
5 市街化調整区域内の開発許可基準は主に公的な用途が定められている
6 市街化調整区域でも親族による民家建替は開発許可が出されやすい;分家住宅

1 都市計画の区域区分により,建物建築は類型的に規制されている

都市計画で,建物の建築は一定の規制が適用されています。
都市計画法上の区域区分によって類型的に規制内容が定められています。

<都市計画;区域区分>

あ 市街化区域

優先的,計画的に市街化を推進するエリア

い 市街化調整区域

市街化を抑制するエリア

う 非線引き区域(区域区分が定められていない都市計画区域)

『あ』,『い』のどちらの区域にも指定されていないエリアです。
法律上はカッコ内の呼称となっています。

『い』の市街化調整区域とは,都市計画上,市街化を抑制する方針となっているエリアです。
建築物の建築,増築が原則的に禁止されます。
ただし,一定の場合は例外的に開発許可により建築ができるようになります。

2 一定の規模の『開発』では『開発許可』が必要

土地の開発については,一定の規制がなされています。
『開発許可』の制度です。

<開発許可の制度趣旨(目的)>

あ 都市の周辺部における無秩序な市街化を防止する

都市計画区域を次の区域に区分する。
ア 市街化区域 計画的な市街化を促進する区域
イ 市街化調整区域 市街化を抑制すべき区域

い 良好な宅地水準を確保する

都市計画区域内の開発行為について次のような規制を行う
・公共施設や排水設備等必要な施設の整備を義務付ける

<開発許可を要する『開発行為』の定義>

建築物の建築又は特定工作物の建設の用に供する目的で行う土地の区画形質の変更
いわゆる『土地の造成』のことです。
※都市計画法4条12項

3 開発許可が下りる前は販売広告や契約締結ができない

土地の造成が終わる前の土地を『未完成物件』と呼びます。
宅建業者が販売の仲介をする場合,『未完成物件』については一定の時期の制限があります。

<未完成物件(土地)の販売時期の規制>

買主 開発許可の前 開発許可の後(完成前)
買主が宅建業者以外 契約締結NG 契約締結OK・手付金等保全措置必要
買主が宅建業者 契約締結NG 契約締結OK・手付金等保全措置不要
共通 販売広告NG 販売広告OK

※宅建業法33条,33条の2,36条

<未完成物件の販売時期の規制の趣旨>

開発許可の申請では,その過程で設計変更を要請されることがある。
逆に,開発許可が下りる前の段階では,『その後に設計変更がなされる可能性がある』という状態と言える。
この状態で広告や売買契約締結を行うと,その後『設計変更→購入(候補)者にとって想定外』となる可能性がある。
このような『想定外』を生じないようにする。

4 区域区分によって,開発許可が必要な規模が定められている

開発許可が必要とされる開発=規制対象,は都市計画法29条で規定されています。
詳細は政令によって規定されています。
まとめると次のとおりです。

<開発規制(開発許可の対象)>

対象区域 開発許可が必要な規模
都市計画区域 (次の2つに分かれる)
→線引き都市計画区域,市街化区域 1000平方メートル以上
→三大都市圏の既成市街地,近郊整備地帯等 500平方メートル以上(※1)
市街化調整区域 原則として全ての開発行為
非線引き都市計画区域 3000平方メートル以上(※1)
準都市計画区域 3000平方メートル以上(※1)
都市計画区域及び準都市計画区域外 1ha以上

※1 開発許可権者が条例で300平方メートルまで引き下げ可能

5 市街化調整区域内の開発許可基準は主に公的な用途が定められている

市街化調整区域内の開発許可基準は,都市計画法34条に規定されています。
1~14号が規定されています。
主なものを示します。
主に公的施設ですが,12号,14号に,一定の民間の住居も含まれることになります。

<市街化調整区域内の開発許可対象>

1号 周辺地域に居住する者が利用する公益上必要な施設及び日常生活に必要な店舗等(※2)
2号 鉱物資源,観光資源の利用上必要なもの(※3)
4号 農林水産物の処理等の施設
6号 中小企業振興のための施設
7号 既存工場と密接な関連を有する事業場
8号 火薬庫
9号 沿道施設と火薬類製造所
10号 地区計画等区域内の開発行為
12号 政令に基づく条例による許可基準を満たす開発行為
13号 既存権利者の開発行為,開発行為の変更(※4)
14号 その他やむを得ない開発行為

※2 立地,規模,業種等に一定の制限があります。
※3 立地,対象となる資源は限定されています。
※4 都市計画の変更等があり6か月以内に届け出をし5年以内に行う開発行為です。

6 市街化調整区域でも親族による民家建替は開発許可が出されやすい;分家住宅

市街化調整区域内の一般の民家を建て替えるために開発許可が出るということはありますか。
開発許可が出される典型的ケースは,親族が住居を建て替える,というものです。

公的施設ではない場合の,開発許可の詳細な基準は,都道府県ごとに設定されています。
平均的な基準では,次のようなケースでは開発許可が認められています。

<典型的な民家建替の開発許可;分家住宅

既存の住宅が,市街化調整区域に指定される前から存在する
当該民家について,一定の親族が建替える

分家住宅と呼ぶこともあります。
都市計画を実施する前の,既存の状態を保護する(規制を制限する)という趣旨です。
いずれにしましても,例外的取扱となります。
一般的には,各都道府県の開発審査会が個別的に審査をすることになっています。
なお,開発許可とは別に,建築1回限定での許可,という制度もあります(都市計画法43条)。

条文

[都市計画法]
43条1項
(開発許可を受けた土地以外の土地における建築等の制限)
何人も、市街化調整区域のうち開発許可を受けた開発区域以外の区域内においては、都道府県知事の許可を受けなければ、第二十九条第一項第二号若しくは第三号に規定する建築物以外の建築物を新築し、又は第一種特定工作物を新設してはならず、また、建築物を改築し、又はその用途を変更して同項第二号若しくは第三号に規定する建築物以外の建築物としてはならない。ただし、次に掲げる建築物の新築、改築若しくは用途の変更又は第一種特定工作物の新設については、この限りでない。

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