【住居・建造物侵入罪|侵入の対象|屋根・屋上・ベランダ・バルコニー】

1 住居侵入罪の条文|『人の住居・人の看守する邸宅・建造物』が対象
2 住居侵入罪|『人の看取する邸宅』は『塀で囲まれた敷地』が典型
3 住居侵入罪|『地面に触れない』場合でも成立する
4 『屋根の上への侵入』→住居侵入罪|成立可能性が高い
5 『屋上の上への侵入』→住居侵入罪|成立可能性が高い
6 『ベランダ・バルコニーへの侵入』→住居侵入罪|成立可能性が高い
7 地上から離れた『上空』の侵犯→住居侵入罪|成立しない
8 軽犯罪法・立入禁止場所等侵入の罪(概要)

本記事では『建造物の上部・上空』についての『住居・建造物侵入罪』を説明します。
なお,ドローン・ロボットの『侵入・上空侵犯』については別記事で説明しています。
詳しくはこちら|ドローン・ロボットの『侵入・上空侵犯』×犯罪|故意犯のみ|業務妨害罪・盗撮系

1 住居侵入罪の条文|『人の住居・人の看守する邸宅・建造物』が対象

まずは,大元になる『住居・建造物侵入罪』の条文をまとめておきます。

<住居・建造物侵入罪|条文>

あ 構成要件=違法行為

正当な理由がないのに,人の住居若しくは人の看守する邸宅,建造物若しくは艦船に侵入した

い 法定刑

懲役3年以下or罰金10万円以下
※刑法130条前段

この条文の解釈について多くのバラエティが生じるのです。

2 住居侵入罪|『人の看取する邸宅』は『塀で囲まれた敷地』が典型

住居侵入罪の条文は用語自体が古くてちょっと分かりにくいです。
基本的な部分についての解釈をまとめます。

<住居侵入罪|基本的解釈論>

あ 『人の看守する』の解釈

『事実上の管理・支配』を意味する
※最高裁昭和59年12月18日

い 『人の看守する邸宅』の具体例

囲い(塀)で囲まれた敷地

う 敷地が住居侵入罪の対象となる要件|判例

次のいずれにも該当する場合
ア 建物に接してその周辺に存在しているイ 建物の付属地として,建物利用のために供されていることが示されている 例;管理者が門塀等の囲障を設置してある
※最高裁昭和51年3月4日;判決上では『囲繞地』と呼称している

ここで『上空』『地上に接しない』という場合にどうなるのか,が問題になります。

3 住居侵入罪|『地面に触れない』場合でも成立する

『地面に触れない』態様の場合の『住居侵入罪』の扱いについての見解を整理します。

<住居侵入罪×『地面に触れない』>

あ 見解

囲障設備に囲まれた内部空間に入った場合
→『地表面に足がついていない』場合でも『侵入』に該当することがある

い 理由

住居侵入罪の保護法益は『住居の平穏』である
『空間への侵入』により『住居の平穏』が害されることがある
※佐伯仁志『住居侵入罪』法学教室362号p105

4 『屋根の上への侵入』→住居侵入罪|成立可能性が高い

『建造物の上部』については,カテゴリごとに見解・判例があります。
順に説明します。
『屋根の上』については判例があります。

<住居などの『屋根の上』→住居侵入罪成立傾向>

あ 結論

『住居・建造物』の一部に該当する可能性が高い

い 事例

警察官の職務尋問を免れるため,ブロック塀・複数の住居の屋根を歩いた
→住居侵入罪が成立する
※東京高裁昭和54年5月21日

5 『屋上の上への侵入』→住居侵入罪|成立可能性が高い

『屋上』への侵入についての解釈論・判例をまとめます。

<『屋上』→住居侵入罪成立傾向>

あ 結論

『住居・建造物』の一部に該当する可能性が高い
※江藤孝『判例評論256号』p56

い 事例|特殊事情あり

対象=球場外野スタンドの鉄筋コンクリート造りの諸旗掲揚台兼スコアボード
態様=スコアボード側壁面をよじ登ってその屋上に立ち入った
→建造物侵入罪の成立を認めた
※福岡高裁那覇支部平成7年10月26日;野球場のスコアボードの屋上

6 『ベランダ・バルコニーへの侵入』→住居侵入罪|成立可能性が高い

以上の『屋根・屋上』よりも『ベランダ・バルコニー』は居住空間に近いです。
この解釈論をまとめます。

<ベランダ・バルコニー→住居侵入罪成立傾向>

『住居・建造物』の一部である
理由;『居住部分の延長』と言える可能性が特に高い
※齊藤彰子『刑法130条により保護される行為客体』法政論集251号p57〜

7 地上から離れた『上空』の侵犯→住居侵入罪|成立しない

建造物の上部,から,さらに離れて『上空を飛行・浮遊する』という態様について説明します。
まず,住居・建造物侵入罪の条文の基本的解釈として『人の事実上の支配』(への侵入)が前提となっています。
『上空の空間』については,『事実上の支配』という意味や『邸宅』の言葉とはかけ離れています。
結局『上空侵犯』では刑法上の犯罪には該当しないと思われます。

8 軽犯罪法・立入禁止場所等侵入の罪(概要)

『住居・建造物・邸宅』に該当しない場合に侵入しても,住居侵入罪は成立しません。しかし,軽犯罪法の立入禁止場所等侵入の罪が成立することはあります。軽犯罪法は,入ることを禁じた場所への侵入が対象となっているのです。
軽犯罪法の立入禁止場所等侵入の罪については別の記事で説明しています。
詳しくはこちら|軽犯罪法1条32号・立入禁止場所等侵入の罪

本記事では建造物侵入罪について説明しました。
実際には,個別的事情によって法的解釈や最適な対応方法が違ってきます。
実際に建造物やその周囲への侵入に関する問題に直面されている方は,みずほ中央法律事務所の弁護士による法律相談をご利用くださることをお勧めします。

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