【刑事・責任能力|基本|心神喪失・心神耗弱|事理弁識能力+行動制御能力】

1 刑事・責任能力=事理弁識能力+行動制御能力
2 責任能力・不十分=心神喪失・心神耗弱
3 心神喪失・心神耗弱|具体例=精神障害・薬物・アルコールの影響
4 責任能力の有無・程度の判断要素|例
5 刑事・責任能力|法的判断と医学的判断は異なる

1 刑事・責任能力=事理弁識能力+行動制御能力

犯罪を行った者が『責任能力』がないと,処罰されません。
刑事責任に関する『責任能力』の基本的事項についてまとめます。

<刑事・責任能力|基本事項>

あ 刑事責任の責任能力

刑事責任を負う条件
『非難可能性』と言うこともある

い 責任能力の2要素

次の2つが備わっている者は責任能力が認められる
ア 事理弁識能力 行為の是非善悪を弁識する能力
イ 行動制御能力 判断に従って行動する能力

2 責任能力・不十分=心神喪失・心神耗弱

責任能力が不完全である状況は,刑法上2つの種類が設定されています。
心神喪失・心神耗弱という状態についてまとめます。

<責任能力・不十分=心神喪失・心神耗弱>

あ 心神喪失

ア 該当する状況 事理弁識能力・行動制御能力のいずれかが『失われた』状態
イ 刑事責任 責任阻却→無罪となる
※刑法39条1項

い 心神耗弱

ア 該当する状況 事理弁識能力・行動制御能力のいずれかが『著しく減退』した状態
イ 刑事責任 刑の減軽→法定刑よりも軽減される
※刑法39条2項

3 心神喪失・心神耗弱|具体例=精神障害・薬物・アルコールの影響

心神喪失・心神耗弱の定義はちょっと抽象的で分かりにくいです。
典型的な状況は次の3つのカテゴリです。

<心神喪失・心神耗弱|具体例>

あ 病的疾患

例;精神障害・知的障害・発達障害

い 薬物の影響

例;覚せい剤の使用

う アルコールの影響

例;飲酒による酩酊

4 責任能力の有無・程度の判断要素|例

責任能力の有無や程度を判断する際の具体的な事情を整理します。

<責任能力の有無・程度の判断要素|例>

ア 被告人の犯行当時の病状イ 犯行前の生活状態ウ 犯行の動機・態様 ※最高裁昭和59年7月3日

5 刑事・責任能力|法的判断と医学的判断は異なる

責任能力の有無について,見解が熾烈に対立するケースは多いです。
医師などの専門家が『鑑定』として見解を示します。
専門家の見解と法律的な責任能力の判断の関係は単純ではありません。

<刑事・責任能力|法的判断×医学的判断>

あ 医師・専門家の判断×法的判断|拘束なし

専門家の提出した鑑定書に裁判所は拘束されない
※最高裁昭和58年9月13日

い 医師・専門家の判断×法的判断|尊重あり

専門家の鑑定結果を尊重して判断すべきである
※最高裁平成20年4月25日

う 病名・罹患×法的判断|直結ではない

犯行当時『統合失調症に罹患していた』
→これだけでは『心神喪失』と判断できない
※最高裁昭和59年7月3日

以上は法律の理論的な解釈・ルールの説明でした。
実際の刑事裁判の手続での判断の場面もまた,ちょっと複雑です。
実務的な手続については別記事で説明しています(リンクは末尾に表示)。

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