【軽犯罪法『追随等の罪』|典型例・判断基準|ナンパ・募金・アンケート勧誘】
1 追随等の罪|違法と認められる行為・典型例
2 追随等の罪|典型例・カテゴリ
3 違法の範囲・判断|基本的事項
4 追随等の罪×違法の判断|追随時間
5 追随等の罪×違法の判断|被害者の対応
6 追随等の罪×違法の判断|背景事情
7 軽犯罪法全般×恣意的運用リスク
1 追随等の罪|違法と認められる行為・典型例
本記事では軽犯罪法の『追随等の罪』の典型例・判断基準を説明します。
なお『追随等の罪』の基本的事項については別記事で説明しています。
(別記事『追随等の罪・基本』;リンクは末尾に表示)
まずは『追随等の罪』に該当する具体的な行為をまとめます。
<追随等の罪|違法と認められる行為・典型例>
一定の距離的間隔をおいて尾行する行為
相手が嫌がっているのに追随を継続する行為
2 追随等の罪|典型例・カテゴリ
尾行・追随が『追随等の罪』に該当することがあります(前述)。
実際に該当しやすい活動・行動の種類はある程度決まっています。
典型的な活動・行動をまとめます。
<追随等の罪|典型例・カテゴリ>
あ 恋愛活動系
ナンパ
=路上で男性が女性に声をかけながら追跡する行為
い 事業活動系
ア ダフ屋行為イ 客引き行為ウ 店舗のチラシの配布エ 取材活用 例;キャメラマンが撮影許可を要請する
う 思想活動系
ア 署名の要請(署名運動)イ 募金を求める行為ウ アンケートを求める行為エ サークル活動の勧誘
当然ですが,これらがすべて違法=犯罪,というわけではありません。
これらに該当する活動で,正当・好ましいものも数多いです。
次に,違法かどうかの判断について説明します。
3 違法の範囲・判断|基本的事項
追随等の罪は,規定自体は非常に曖昧です。
どこからが『違法=犯罪』となるのか,という解釈が問題になります。
違法の範囲・判断の基本部分をまとめます。
<違法の範囲・判断|基本的事項>
あ 判断における重要な要件(条文)
次の言葉の意味に該当するかどうかが重要である
『つきまとう』
『迷惑or不安を覚える』
い 判断要素
違法の判断に影響を与える代表的事情
ア 追随時間イ 被害者の対応ウ 背景事情
判断事情の内容については順に説明します。
4 追随等の罪×違法の判断|追随時間
追随等の罪の『違法の判断』に影響する事情がいくつかあります。
『追随時間』が代表的な考慮事項です。
<追随等の罪×違法の判断|追随時間>
あ 基本的事項
相手が歩行するのについていく時間が長い
→『つきまとい』『不安を覚えた』の認定につながる
い 数分間→肯定的
相手が嫌がっている場合
→『3分程度』以上は長い
う 検挙例の目安
追随時間3〜5分で検挙されているケースもよくある
被疑者は『軽いナンパのつもり』と思っていることも多い
え 注意;時間以外の要素
『追随時間』が長くても違法となるとは限らない(後述)
5 追随等の罪×違法の判断|被害者の対応
追随等の罪の『違法の判断』では『被害者の対応』も影響します。
<追随等の罪×違法の判断|被害者の対応>
あ 基本的事項
被害者の対応によって『違法』の判断につながる
い 拒絶の明言|例
被害者が明確に『拒絶』を表明している
→『不安を覚えた』『つきまとい』の認定につながる
う 助けを求めた|例
声をかけられた女性が交番に駆け込んだ
→『不安を覚えた』という認定につながる
6 追随等の罪×違法の判断|背景事情
追随等の罪の『違法の判断』は単純ではありません。
背景にある全体的な事情が大きく影響することもあります。
<追随等の罪×違法の判断|背景事情>
あ 基本的事項
追随する者・される者の関係性によって違法の判断が異なる
い 判断事情|例
ア 知人同士/まったく知らない者同士イ 同性/異性ウ 話しかける・追随する理由・原因
う 背景事情|具体例
数年間にわたって男女が交際していた
女性が『別れる』ことを男性に突然告げた
男性が女性に『やり直す』ことを求めた
女性が歩き出したので一緒に歩きながら説得を続けた
→違法と認められる可能性は低い
このように追随等の罪の判断は不明確な部分が大きいです。
7 軽犯罪法全般×恣意的運用リスク
追随等の罪の判断は以上のように不明確と言えます。
軽犯罪法全般として各類型は文字どおり『軽い』です。
常識的・正当な行為との区別があまりないのです。
構造的に判断が曖昧になっているのです。
逆に言えば『恣意的な運用』のリスクがあります。
これについてまとめます。
<軽犯罪法全般×恣意的運用リスク>
あ 曖昧→正当な行為が罰せられるおそれ
評価の幅が大きい→ハッキリと区別・判断できない
い 恣意的な運用リスク|原則
捜査機関が恣意的に利用=悪用する可能性がある
例;別件逮捕
う 恣意的な運用リスク|条文
『この法律の適用にあたつては,国民の権利を不当に侵害しないように留意』する
『本来の目的を逸脱して他の目的のためにこれを濫用するようなことがあつてはならない』
※軽犯罪法4条
軽犯罪法4条自体が『恣意的な運用』を想定・公認しているとも読めます。
人権保護という点からは非常に問題が多い法律・犯罪類型であるという指摘も多いです。
追随等の罪に関する具体的事例・判例は別記事で紹介しています。
(別記事『追随等の罪・具体的事例・判例』;リンクは末尾に表示)