【プライバシー権侵害|公表内容別の分類|判例】
1 プライバシー権に関する判例や公的見解
2 プライバシー権の判例|前科・過去の犯罪行為|概要
3 プライバシー権の判例|疾病(持病・病歴)・身体的特徴
4 プライバシー権の判例|指紋
5 プライバシー権の判例|日常生活・行動・住所
6 プライバシー権の判例|身分行為(結婚・離婚)
7 プライバシー権の判例|犯罪捜査としての情報取得
1 プライバシー権に関する判例や公的見解
プライバシー権は,法律に規定はありませんが,判例で確立した権利です。
プライバシー権を認める判例は多くあります。
また,直接的『権利』ではなく,プライバシーを考慮要素の1つとした判例もあります。
一方,近年はテクノロジーの進化が,個人のプライバシーと衝突する場面もあります。
判例にはなっていませんが,議論されているテーマもあります。
これらを説明します。
2 プライバシー権の判例|前科・過去の犯罪行為|概要
前科や過去の犯罪行為の公表が問題となるケースも多いです。
主に報道ですが,それ以外にもあります。
詳しくはこちら|プライバシー権×前科|基本|忘れられる権利|報道以外
詳しくはこちら|プライバシー権×前科|報道|違法性阻却・判断基準
また,検索エンジンの検索結果・サジェストワードの表示もあります。
詳しくはこちら|検索エンジン×プライバシー|検索結果・サジェストワード・削除リクエスト
3 プライバシー権の判例|疾病(持病・病歴)・身体的特徴
<『石に泳ぐ魚』事件>
あ 事案概要
小説中で,登場人物の顔面の腫瘍を鮮明・詳細に描写した
モデルとされた女性が特定できる可能性があった
↓
い 裁判所の判断
個人が特定できる
↓
プライバシー権侵害を肯定した
※最高裁平成14年9月24日
4 プライバシー権の判例|指紋
<在留外国人指紋押捺強制事件>
あ 事案概要
政府が在留外国人に『指紋押捺』→採取を義務付けた
↓
い 裁判所の判断
指紋に『プライバシー性』を認めた
プライバシー侵害を肯定した
※最高裁平成7年12月15日
5 プライバシー権の判例|日常生活・行動・住所
<『宴のあと』事件>
あ 事案概要
小説において,料亭の女将と客の政治家との恋愛→結婚→政治活動などが描写された
モデルとされた男女が特定できる可能性があった
↓
い 裁判所の判断
プライバシー権侵害を肯定した
※東京地裁昭和39年9月28日
う 判決の意義・判決後
プライバシーの『権利性』を初めて認めた判例とされる
当該判決は確定していない
→その後控訴審で和解が成立した
<『エロス+虐殺』事件>
あ 事案概要
小説において,恋愛関係→三角関係→殺害,という描写がなされた
モデルとされた当事者が特定できる可能性があった
↓
い 裁判所の判断
既に公知(世間に知れ渡っている)の事実である
↓
プライバシー権侵害 否定
→上映差止請求は認めない
※東京高裁昭和45年4月13日
<ジャニーズ追っかけ本事件>
あ 事案概要
ジャニーズ所属タレントの住所等が詳細に記載されている書籍が発売予定となった
『ジャニーズ・ゴールド・マップ』定価1万円
↓
い 裁判所の判断
プライバシー権侵害 肯定
出版・販売差止請求を認めた
※東京地裁平成10年11月30日
次に,参考としてプライバシーの侵害が参考として考慮された『刑事事件の判決』を示します。
<フライデー襲撃事件(※刑事事件)>
あ 事案概要
著名人のプライベートの交際について,執拗な取材が行われた
抗議として,編集部の『襲撃』が行われた
↓
い 裁判所の判断
住居侵入罪,器物損壊罪,暴行罪成立
宣告刑=懲役6か月執行猶予2年
被害者側の落ち度,として,過剰な取材=プライバシーの侵害,についてが考慮された
※東京地裁昭和62年6月10日
6 プライバシー権の判例|身分行為(結婚・離婚)
<田中真紀子長女記事出版差し止め事件>
あ 事案概要
田中真紀子氏の長女の離婚問題が週刊文春に掲載・出版される予定であった
↓
い 裁判所の判断
プライバシー権侵害 肯定
出版差止を認めた(仮処分)
↓
う その後の『逆転現象』
『回収』が申請書に漏れていた
↓
流通に乗ったものは販売された+ニュースで話題になった
↓
飛ぶように売れた(逆効果)
※東京地裁平成16年3月16日
え 地裁の決定後の行方
東京地裁異議棄却
→東京高裁抗告審仮処分取消
7 プライバシー権の判例|犯罪捜査としての情報取得
<Nシステム(自動ナンバー読み取り装置)事件>
あ 事案概要
高速道路の料金所などでの車両全体を撮影
個人の顔や容姿が同時に写る
↓
い 裁判所の判断
個人識別情報は記録しない+長期間保存しない
↓
政府の責任を否定した
※東京地裁平成13年2月6日
<西成テレビカメラ撤去請求事件>
あ 事案概要
大阪あいりん地区(西成)は犯罪発生率が高かった
警察が監視のために防犯カメラを設置した
い 裁判所の判断|違法性判断基準
個人のプライバシーの利益を侵害するおそれがある
→次の要件を満たさないと違法となる
ア 目的の正当性イ 客観的具体的な必要性ウ 設置状況の妥当性エ 設置使用の効果の存在オ 使用方法の相当性
う 裁判所の判断|結論
プライバシー侵害 肯定
15台のうち1台についてだけ違法と判断した
※大阪地裁平成6年4月27日