【インターネットの写真・動画の閲覧×著作権|保存・ダウンロード・ストリーミング】

1 閲覧サイト等の種類|投稿サイト(掲示板)・SNS・P2P
2 『ダウンロード』は複製権侵害・『ストリーミング』は適法
3 『ダウンロード』→例外的に『私的複製』として適法となることが多い
4 日本の著作権法が適用されないこともあるので要注意|準拠法
5 私的複製→『補償金』支払いが必要|PC・スマホへの保存は対象外
6 私的複製→『コピー防止技術の回避』は救済されない|プロテクト外し

1 閲覧サイト等の種類|投稿サイト(掲示板)・SNS・P2P

インターネットの普及により,一般の方が世界中の『コンテンツ』を見ることが容易になっています。
投稿サイトで動画を見る,というようなものです。
著作権に関するいろいろな問題が潜んでいます。
法的な扱いは,コンテンツの種類や,普及している閲覧の方法によって違います。
まずは分類を整理します。

<コンテンツの種類>

あ テキスト(文章)
い 画像(写真)
う 動画(映像)
え 音声(音楽)

<コンテンツの入手元>

あ インターネットのサイト上のコンテンツ

ア 投稿サイト ・YouTube
・ニコニコ動画
・2ちゃんねる
・掲示板(各種)
・ブログ(各種)
イ SNS(Social Networking Service) ・Facebook
・twitter
・mixi
・Instagram

い P2Pソフトウェア(※1)

・Winny
・WinMX
・Share
・Napster

<P2Pとは(上記※1)>

あ 概要

同一ソフトウェアを使用する他のユーザー保有のコンテンツを閲覧できる通信方式

い その他の説明

peer to peerの略
『ファイル共有』とも呼ぶ
多数の端末同士が対等の関係で通信を行う方式
特定のサーバーを使用しない
ビットコインでもこの方式が利用されている

2 『ダウンロード』は複製権侵害・『ストリーミング』は適法

(1)『複製権』の定義

上記のとおり,インターネット上で動画などのコンテンツを閲覧する方式は多くのものがあります。
同じ『閲覧』する場合でも,技術的な方式によって著作権法上『複製』に該当するかどうかが違ってきます。
まずは『複製』の定義を確認します。

<『複製権』の定義>

著作物を印刷,写真,複写,録音,録画その他の方法により有形的に再製する権利
※著作権法21条

『複製』というのは『再製』のことなのです。
『同一の情報が誕生・増えた』という意味を含むのです。
この定義と,『閲覧の方式』のマッチングをまとめます。

(2)『ストリーミング』と『ダウンロード』の違い

<閲覧の方式|『ストリーミング』と『ダウンロード』>

あ ダウンロード

閲覧ユーザーの所持する機材(HDDなど)に『データを保管』する
スマートフォンでは『保存する』という用語(表記)が使われている
→サーバーの情報と『同一の情報の記録』が誕生した
→『複製』に該当する
(ただし,『私的複製』として適法となることが多い)

い ストリーミング

閲覧ユーザーの所持する機材(HDDなど)に『データを保管』しない
=動画を表示・音声を出力するのみ(暫定的な保管(キャッシュ)は除く)
→『複製』に該当しない

<YouTube,ニコニコ動画の閲覧方式>

『ストリーミング』の方式で閲覧する仕様である
通常の方法では『ダウンロード』はできない仕様となっている

(3)『ダウンロード』→『複製権侵害』は例外が多い

以上のように『著作物』であるコンテンツを『ダウンロード』した場合,原則的に『複製権侵害』となります。
スマートフォンで画像を『保存する』という操作も同じです。
ただし実際には,次に説明する『私的複製』として例外的に適法となることが非常に多いです。
そこで『原則論=複製権侵害』の部分を忘れがちです。
しかし,著作権法上の扱い(適法性)を理解する上では,この『原則部分』が非常に重要です。

3 『ダウンロード』→例外的に『私的複製』として適法となることが多い

例えば,インターネット上で見た写真や文章を,後から見るためにスマートフォンに保存しておきたい,と思うことがよくあります。
保存すること(ダウンロード)は,形式的に『複製権侵害』となります。
しかしこれは過剰な制限と考えられます。
そこで,個人的な『複製』は,一定の範囲で許されています。
『私的使用のための複製』(私的複製)と呼ばれる規定です。

<私的使用のための複製=『合法』の要件|『利用制限の例外』>

あ 私的使用が目的

私的使用=個人的にor家庭内その他これに準ずる限られた範囲内における使用

い 使用する者が『複製』する
う 『私的複製の例外』に該当しない

※著作権法30条

この点例えば,『他人にあげる目的でダウンロード(保存)した』という場合は『あ』に該当しません。
原則どおりに『複製権侵害』となります。
元々は『自分や家族が聞く目的で,レンタルショップで借りてきたCDをダビングする行為』が典型例でした。
最近では『インターネット上のコンテンツをPCやスマートフォンに保管(ダウンロード)すること』が典型例の座を奪いました。
詳しくはこちら|『私的使用のための複製』の要件|『利用制限の例外』

『違法にアップロードされたことを知っていた』場合は,『私的複製』に該当する場合でも違法となります。
詳しくはこちら|私的複製の例外|違法にアップロードされたことを知っていた場合
また,ダウンロード・保存した写真などをSNSや投稿サイトに投稿する場合は,著作権侵害となる場合があります。
これは別に説明しています。
『著作権侵害の投稿』からさかのぼって,ダウンロードが違法となることにもなります。

<後からの違法な投稿→最初のダウンロードが違法となるメカニズム>

ダウンロード後に多数が見られる場所に投稿した
↓さかのぼる
ダウンロードの目的が『私的使用目的』ではなかった

ダウンロードが『複製権侵害』にあたる

詳しくはこちら|写真・動画等をネット上に『投稿』『アップロード』×著作権|ロケーションフリーテレビ

4 日本の著作権法が適用されないこともあるので要注意|準拠法

『私的複製』は日本の著作権法のルールです。
外国でも似ているルールはありますが,細かい内容は異なります。
例えば米国では『フェアユース』というルールがありますが,日本の著作権法とは違いがあります。
この点,インターネットは『通信経路』が複数の国にまたがっている,ということがよくあります。
ネット上のコンテンツについて,どの国の法律が適用されるかという問題が生じます。
『準拠法』と呼ぶテーマです。
大原則は,サーバーの設置されている国,というものです。
しかし,各種サービス・サイトによって利用規約で特定の国が指定されていることも多いです。
このように『日本の著作権法』という前提が違うこともありますので注意が必要です。
詳しくはこちら|国際的法律問題まとめ(準拠法・国際裁判管轄・内容証明・強制執行)

5 私的複製→『補償金』支払いが必要|PC・スマホへの保存は対象外

インターネット上のコンテンツの『ダウンロード』が『私的複製』として適法となることは多いです。
『私的複製』については,『補償金支払い』が必要になることもあります。
『補償金』が必要になる媒体は指定されていて,磁気テープ・光ディスクに限定されています。
詳しくはこちら|私的複製→補償金支払いが必要|補償金制度
この点,インターネットからのダウンロードではPCやスマートフォン内部に記録する,ということが通常です。
つまり,PCやスマートフォン内部のHDDやSSDなどの記憶媒体に『ダウンロードする』という意味です。
また,クラウド方式として,ユーザーに割り当てられた外部サーバー上に記録する,ということもあります。
いずれにしても,補償金の対象として指定されている媒体には該当しません。
通常は『補償金』の対象外です。

6 私的複製→『コピー防止技術の回避』は救済されない|プロテクト外し

『私的複製』は適法ですが,一定の例外=違法となる場合,があります。
例外の1つは『技術的保護手段の回避』です。
いわゆる『プロテクト外し』です。
『コピー防止のプロテクト』がかかっているのにこれを解除する操作を行ってコピーすると違法となります。
なお,プロテクト外しは,著作権法だけではなく,不正競争防止法に抵触することもあります。
詳しくはこちら|私的複製の例外|技術的保護手段の回避|プロテクト外し

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【著作権の『利用制限の例外』|『引用』・検索エンジンによる『複製』】
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