【模倣の善/悪|自由市場の競争|Lightningケーブル|識別チップ・特許】
1 iPhoneのLightningケーブル(電源コネクタ)の『値崩れ防止機構』
2 Lightningケーブル|識別チップ|他社はチップかIDを購入することになる
3 Lightningケーブル|識別チップ|他社が再現→著作権侵害にならない
4 Lightningケーブル|コネクタの特許|他社は承諾料支払が必要
5 Lightningケーブル|コネクタの特許|『リバーシブル』を捨てて特許侵害を回避
1 iPhoneのLightningケーブル(電源コネクタ)の『値崩れ防止機構』
iPhone5以降の電源・充電ケーブルとして『Lightningケーブル』が登場しました。
これはいろいろな意味で特殊な,今までにない『仕組み』が搭載されているのです。
『給電側がオス』→ショートのリスクがある,というところも従来の常識を破っていますが,メインはそこではありません。
『販売価格の崩れ防止機構』です。
<iPhoneのLightningケーブル|値崩れ防止機構>
あ 販売価格が高い
Apple社製の純正品・主要なサードパーティー製品ともに最低価格帯で1800円程度
い 2000円近い価格帯が維持できる理由
ア 『ケーブル側の識別チップ』を本体側でチェックしているイ リバーシブル仕様のコネクタの特許を得ている
マーケットは広く,これを打ち破る製品も存在します。
違法の疑いのある商品もあるようですが,『合法的に』突破する商品もあります。
2 Lightningケーブル|識別チップ|他社はチップかIDを購入することになる
Lightningケーブルのコネクタ部分には『識別チップ』が搭載されています。
識別チップの中には固有のID(番号)が記録されているようです。
そして,iPhoneの本体側でこのIDを読み取っています。
読み取ったIDが『登録されているもの』であれば接続し,そうでなければ接続しない,という機構になっています。
結局,他社は,Appleから識別チップを購入するか,チップのID付与を受けないと『接続できるケーブルを販売できない』ことになります。
3 Lightningケーブル|識別チップ|他社が再現→著作権侵害にならない
ここで『ID付与』などの手続を取らずに『独自に識別チップを作る』という発想が生じます。
この点『チップの内容を読み取って別の(新しい)チップに書き込む』というところが問題になります。
『ソフトウェアなどのプログラムの違法コピー=複製権侵害』と同じ構図です(後記『7』;EPSONのPC-9800シリーズ互換機)。
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しかし『違法コピー』は,コピーの対象が『プログラム=著作物』ということが前提です。
Lightningケーブルの識別チップの内容は『ID(番号)』です。
『創作性』が認められません。
そこで『著作物』ではありません。
『チップ内容のコピー』は著作権侵害とはなりません。
4 Lightningケーブル|コネクタの特許|他社は承諾料支払が必要
Lightningケーブルのコネクタ部分は形状について特許出願がなされています。
<Lightningケーブルの特許>
あ 米国での登録
US8647156・US8573995・US8708745
い 日本での出願
特願2013-512061;『外部接点を有する2方向性コネクタ』
前述のとおり『リバーシブル仕様』は,今まではありそうでなかった便利設計なのです。
『新規性』が認められる,という前提では,同じ設計の商品の製造・販売のためにはApple社に承諾料を支払う必要が生じます。
実際に,サードパーティー製の商品はApple社に対価を支払っているために『価格破壊』が生じない,という状態であると思われます。
5 Lightningケーブル|コネクタの特許|『リバーシブル』を捨てて特許侵害を回避
マーケットの熾烈な競争は『逆転の発想』を産み出しました。
『リバーシブルではない』機構であれば『特許を侵害しない』というものです。
なお,Lightningケーブル・コネクタの形状は『リバーシブル』以外にもいろいろな工夫がなされています。
この点『リバーシブル以外の工夫』については『真新しい』ものは見当たりません。
そこで『特許権』が認められるものはないと思われます。
以上のような前提では,『片面コネクタ採用』のLightningコネクタは『特許権侵害』にはなりません。
以上のように2つの『法的な壁』を超えた製品をリリースしたのがDAISOです。
マーケット(というかDAISO店舗)では税込み108円で入手できる状態です。
なお,さらに別の会社も同様のコネクタの製造を行っています。
DAISOの『奇抜な発想』自体には特許権はありません。
『奇抜・新規性ある発想』は『製品の形状』の創作,としてではありません。
『法的ハードルの回避の仕方』が『奇抜・新規性ある』ものだった,というに過ぎません。
『法的ハードルの回避の仕方』では『自然法則の利用』『技術的思想』には該当せず,特許権の対象にはならないのです。
詳しくはこちら|特許権の基本|登録すればアイデア自体が保護される
追従する製品について法的にシャットアウトすることはできません。
<注意・免責>
以上の『前提事情』は公式発表などを元にしたものではありません。
その点で,前提が違うために異なる結論(判断)になる場合もあります。
ご注意ください。