【資格業・士業|紹介料・広告の規制・受任義務・公定価格】

1 紹介料・広告の弊害|資格業・許認可業務
2 各種資格業|紹介料・広告の規制・受任義務・公定価格
3 適法な『広告』/違法な『紹介料』の境界
4 適法/違法の境界|クリック数課金・適法擬態
5 弁護士の広告規制に関するルール|広告/紹介料の境界
6 資格業・独占業務→受任義務|医師・弁護士・司法書士・税理士など
7 資格業・独占業務→公定価格|医師・弁護士・司法書士・税理士など

1 紹介料・広告の弊害|資格業・許認可業務

一般的には『紹介・広告』は社会経済にとって有用なものです(前述)。
しかし,商品・サービスによっては弊害があり,法律による規制がなされています。

<紹介料・広告・プロモーションによる弊害>

あ 業務独占制度の潜脱となる

資格・許認可による参入規制がある業務の場合
『無資格・許認可なし』の事業者が一部の『利益を得る・業務を行う』
→実質的に『無資格・許認可なし』で事業を行う(関与する)ことになる

い 過度の競争→サービスクオリティの低下
う 過剰な勧誘→無用・過剰な商品・サービス購入

特に公的資金が関与している場合にこの傾向が強い
例;医療サービス

2 各種資格業|紹介料・広告の規制・受任義務・公定価格

以上のような弊害を回避するために,主な『資格業』では『紹介料』『広告』が規制されています。
まずは規制などをまとめたものを示します。

<業種による『紹介料』『広告』の規制・受任義務・公定価格|まとめ>

あ 全体のまとめ
サービス・商品 参入規制 紹介料 広告規制(※3) 受任・受託義務 公定価格
医療サービス(医師) 資格 ☓(平成26年〜) あり あり(※4)
弁護士業 資格 撤廃(平成12年) 撤廃(平成16年)
司法書士業 資格 撤廃(平成13年) (※5) 撤廃(平成14年)
税理士業 資格 撤廃(平成13年) 撤廃(平成14年)
不動産仲介業 資格 ◯(メインサービスの対価) なし あり
生命保険サイト なし ◯(グレーな性格) なし なし
結婚紹介所 なし ◯(メインサービスの対価) なし なし
い 注意事項

※3 『広告規制』の『なし』について
大幅な制約がない・廃止された,という意味です。
『まったくない』という意味ではありません。
※4 公的保険利用の場合です。自由診療は除きます。
※5 簡裁訴訟代理・交渉業務は除かれます。

詳しくはこちら|病院・薬局の紹介料禁止ルール|紹介料ビジネス・医療コンサル・施設運営|医療担当規則

3 適法な『広告』/違法な『紹介料』の境界

これらのサービスは,名称としては多いですが,サービス内容・実質面では『相対的・連続的』と言えます。
『対価の設定方法』という要素に着目すると定量的に把握・整理できます。
連続的なサービス形態のうち,違法/適法の境界は曖昧です。
他業種のプロモーションでも,グレーゾーン=判例などの統一的公的見解がない,という形態が増えています。
テクノロジー進化に『法整備』が後れを取っている状況の1つです。
可能な限りまとめます。

<『紹介料』該当性|『広告費用』の境界>

料金設定内容 適法性
一定の掲載(期間・場所)に対する『固定』料金
(オンライン)クリック数に応じた料金(※1)
送客数(電話等の問い合わせ数(コンバージョン数))に応じた料金
購入者(医療機関訪問=料金発生)の『人数』に応じた料金
売上金額に応じた料金

現実には形式的にはっきりと区別できません
上記のクリック課金などについては次に説明します。

4 適法/違法の境界|クリック数課金・適法擬態

上記の『適法/違法の境界』の限界部分について説明します。
まずは『クリック課金』に関してまとめます。

<クリック数課金(上記※1)>

あ クリック課金の具体例

Google・Yahoo!のリスティング広告

い 適法の理由

『売上』との関連性が薄い
『チラシの配布数に比例した広告料の徴収』と同様

以上のように,一部はハッキリと『適法』『違法』と言えます。
そうすると,サービス形態は進化し,『適法に擬態』する種も現れます。

<『適法に擬態』したサービス形態の例|実質はグレー>

あ 実績ベースのクリック単価設定

『試験的期間』で,効果測定を行う
→1クリックあたりの『売上』が算定できる
→これを元に『クリック単価』を設定しする
→『クリック数に応じた』料金設定とする

い 擬態効果

実質的には『売上金額に応じた料金設定』=違法,と同様である
しかし,形式的には『クリック数に応じた料金設定』=適法,となる

もともと,グレーゾーンのプロモーション形態が多いのに,さらに『擬態』で曖昧さが広がっています。

5 弁護士の広告規制に関するルール|広告/紹介料の境界

『広告/紹介料』の区別に関しては,弁護士会の規定が参考になります。
重要な部分を抜粋して紹介します。

<弁護士の『広告/紹介料』区別に関する規定類>

あ 紹介料を禁止する規定
根拠 禁止行為
弁護士法72条 『弁護士が報酬を得てする事件の周旋』
弁護士職務基本規程13条 『事件紹介の対価の授受』
い 広告/紹介料区別に関する基準

業務広告運用指針『第2−4』
適法の具体例=『定額の登録料』『登録の期間とスペースで客観的に決まる』
外部サイト|日弁連|弁護士及び弁護士法人並びに外国特別会員の業務広告に関する運用指針

<参考情報>

『自由と正義15年2月号』日本弁護士連合会p54〜

6 資格業・独占業務→受任義務|医師・弁護士・司法書士・税理士など

『独占業務』については,事業者の視点では『参入規制』と言えます。
一方ユーザーの立場としては『購入先選択』が制限されている,ということです。
そこで,一部の業種については『事業者が依頼された場合に拒否してはいけない』という『受任・受託義務』があります。
『独占業務』という性格以外の理由が反映されています。

<受任・受託義務>

業種 ネーミング 法的根拠 実質的理由
医師 応召義務 医師法19条 生命身体を守る趣旨(緊急・重大性)
司法書士 依頼の受諾義務 司法書士法21条 誰が行っても同じ結果となる(後述)

※司法書士は『簡裁訴訟代理・交渉業務』は除かれる

7 資格業・独占業務→公定価格|医師・弁護士・司法書士・税理士など

一般的には,同一商品・サービスを販売する複数事業者が『販売価格を協定する』ことは違法です。
価格競争を阻害するものとして,独占禁止法で規制されています。
詳しくはこちら|価格協定の誘惑→独占禁止法による規制|価格協定(カルテル)禁止
この原則の大きな例外として,公的に価格が定められる場合があります。
資格業の大部分では,かつて『公定価格』がありました。
日本弁護士連合会や日本司法書士会連合会の会則として『報酬基準』が存在したのです。
しかしその後,独占禁止法違反という見解が強くなり,大部分は廃止されるに至りました。

なお,特定の業種・マーケットでは『紹介依存』が強く発現します。
関連コンテンツ|紹介依存現象|サービス均質性+需要寡占+負担者と決定権者の分離

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【不当廉価販売×価格協定|自由競争を逸脱する極端な値下げだけが禁止される】
【『信書』の基準|参入規制=許可制|ユニバーサルサービス・黒猫問題】

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